たまに寄った旧友の横顔を、土井はぼんやり眺めていた。彼は戦利品だと言って愉しげに集めてきた物品を広げていてこちらの視線を気にする様子はない。甲の高い鼻筋から、緩く曲げられた唇、昔から変わらない悪童のような光を持った瞳、それから頬へと視線を辿らせる途中で、土井は思わず声を漏らした。
「石川、お前…」
「なんだ?」
「シワ」
 目尻んとこ。土井の指が石川の頬を上りそこに触れる。は、と石川が息を吐く前に、その小さく刻まれた皺を土井はぴんと伸ばした。そうしてはっきりと確かめるやいなや彼は溜め息を吐く。
「もうトシなのかなあ、わたしら」
「お前は相変わらず腹立たしいくらいピッチピチだけどな」
「…そうかな」
 土井は年には不相応な童顔がさらにそれらしく見えるような顔つきで応えた。そう唇を尖らしては余計ガキに見えるのだとは、石川は言ってやらない。ただ、笑いは込み上げたが。くつくつと喉を鳴らし、それからふと土井の指の離れたあとを自分でもなぞり、はたと気のつくことがあった。この目尻に新たに刻まれた皺は如何にして生まれたか。
「近頃お前んとこに来すぎたのかもなあ」
「それ、シワと関係あるか?」
「ああ。お前と居ると、ずいぶん笑かされる」
 だからこんなシワなんか出来ちまったんだと天下の大泥棒は背を丸めた。ふうんと土井は相槌ながらその大きな背に寄り添った。じゃあ、あれだな。
「いまにシワシワの男前にしてやるよ」
「ぞっとしねえなあ」
 彼の目尻の皺がまた深くなるのを、土井は鼻も触れ合う距離で見た。

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