小説 | ナノ
頭に被った王冠は、確かな重みをもって俺の立場を主張する。
なんて素晴らしい一瞬だ。
俺は今、遂にナンバーワンだ。何よりも偉い。何よりも強い。全ての上に立ったのだ。全てを服従させるのだ。
俺は……俺はやっと、孤独の恐怖から解放されるのだ。
これで俺は何もかもから守られる。好きに動いても誰も文句は言わねぇ。
ああ、いい気分だ。俺の指図一つで世界がどうなるのか決まるのだ。
素晴らしい。美しい。これこそが現実だ。これまでの悪夢なんて忘れてしまえ。前だけを見て生きていこう。
まず俺の好みにこの軍を生まれ変わらせるんだ。気に入らない奴は殺してしまえ。デストロン……いや、スタースクリーム軍は最強になる。この天才的な頭脳を駆使すれば、サイバトロンの奴等もすぐにぶっ潰せる。あの老いぼれと俺は違うのだから。
全宇宙を支配して、そうしたら、そうだな、どうしようか。好きな研究でもするか。俺がトップなんだから、好きなだけエネルギーは使えるんだ。大発見でもしてみよう。
勿論、スカイファイアーも一緒にだ。
あいつは俺を裏切った。それは許せないことだ。だが俺がリーダーになったら、俺に恐れをなして、従うようになるだろう。俺だって鬼じゃない。そしたらちゃんと許してやるさ。そうならなかったら洗脳すればいいだけのことだ。
とにかく何もかもが俺の思う通りになる。
胸を満たすこれは、幸せ、というやつだろうか。暖かい。久しぶりに俺は、冷たくないものを愛せるのだ。
素敵だ。こうなることを、俺はずっと待ってた。
遥か遥か。思い出せない悪夢の始まりより。
textトップへ