二人三脚
※学パロ運動会



俺が右足を出せば、リンが左足を出すはずだった。
その為に放課後の練習も何度も重ねてきたし、いざ本番を迎えた今だって、気合いを入れて掛け声を出したはずだった。

そこまでは練習通りで、だというのにも関わらず、


「何で一歩目からあんな盛大に転ぶんだよっ!」
「絶対にあれはレンのせいっ」
「俺のせいかよ!」
「だって、レンが変なタイミングで足を出すからでしょ!」
「練習通りに右足から出しただろッ」
「わたしだって、ちゃんと左足から出したしっ」

……多分この場合。どっちもどっちだ。
そう頭では理解していても、この結果には釈然としなかった。素直に悔しい超悔しい。

「もう、砂だらけだよー」

そう言って歩きながら、リンがジャージに付いた砂埃を払っている。二人三脚の開始早々、2人いっせいに転んだ俺達は、ものの見事ビリの座に着くことになり(ちなみにそれからもう一度転んでいるので、これはこれで納得の結果ではあった)。
練習の時はお互い、ずいぶん息も合っていたはずなのに、本番になってからこんな終わりになると思いもよらず。通り過ぎたクラスの奴らからは「仲良すぎだろお前ら!」とか言ってからかわれたけど「うっせーよ!」と言って返した。

クラスの席に帰るまでの間、リンは小さく不満を口にしていた。

「もー、練習の時は、ちゃんとゆっくり合わせようねって約束したのに」
「ゆっくりだっただろ」
「早かったよ、すっごく!」

全然練習通りじゃなかった!と、拳を握って抗議するリン。俺も負けじと、

「じゃあさ、そこは従兄弟なんだしタイミングくらい察しろよっ」
「無茶だしそんなの!」

言ってからリンは、ため息をひとつ。

「まあ、今さら言っても仕方ないんだけど」
「……だな」

結果は結果。だけど、確かに俺も慌てすぎたかもしれない。特に、一回転んだ後の走るペースが。

「悪いな、あんまり上手く出来なくて」
「……ううん、わたしの方こそごめん。レン、一生懸命頑張ってくれたのに」
「いや、別に俺はさ……」

何か言おうとして少し視線を下げると、リンのヒザが目に映った。と。

「つうかリン、怪我してないか?」
「えっ?あ、本当だ。ヒザの所、怪我してた」
「救護室、行って見てもらうぞ」
「え、え。平気だよこれくらい」
「いいから来いって」

言って、リンの手を引っ張った。最初は戸惑っていたようなリンも、俺の手に素直に引かれて歩く。

「悪ぃ、まさか怪我してると思わなかった」
「全然。レンが謝ることじゃないよ。わたしも今気が付いたし」

そう言うリンの手をぎゅっと握る。怪我してるリンを気にしてゆっくりと歩いた。

二人三脚でビリになったのは悔しい。
だけどさ、何が一番悔しいかって、好きな子が怪我してるのに気付かない方が、一番悔しいだろ。



2009/11/25
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