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彼女が置いていった言葉の切れ端を、どう料理したものか考えあぐねて、ぼくは結局冷凍庫にしまった。あの日から一度もあの無機質な扉には触れていない。きれいに包まれて凍りつく、彼女の小さな呟きとため息を、ぼくはいつか溶かすことができるのだろうか。飲み込むことができるのだろうか。そもそも、取り出してしまったら、跡形もなく消えてしまいはしないだろうか。そんなことを考えながら狭いキッチンに立ち尽くしている。四角い箱からはただジィジィと、耳障りな音が聞こえるだけだ。


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