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「馬鹿だねおまえ。そんな顔するくらいなら、いっそ泣けばいいのに」


薄汚れたソファーのうえで、おれの隣で、そいつはそう言った。珍しく煙草に火を付けて、でも口にせずに灰になっていくのをじっと見ていた。泣きそうなのはおれよりもあんたじゃないか、そう思いながら目を擦った。煙がしみただけだ。馬鹿馬鹿しい、泣くわけがない。

あんたの隣で、おれよりもずっと優しくて、それでも泣けないあんたの隣で、おれひとり、なくわけにはいかなかった。


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