ひとりぼっちがふたつ、手を繋いで歩いた | ナノ

たりぼっちの街角で
笠黄。久々に会った2人。



ゆきおさん

声に出さずにそう呟いてみる。
呟いて、そして、ため息。憎たらしいほど高い空に、全部が吸い込まれて消えた。
吐き出す白い息。言葉に出来なかった言葉も、一緒に空高くへと溶けていく。
去年の今頃、初めて、恋をした。
それまで、恋など知らなかった。知らなくても、生きていけると思っていた。
けれど、黄瀬は、まんまと、あっさりと、彼が仕掛けたワナに嵌って、今でも抜け出せないでいる。
過去の自分が見たら、馬鹿馬鹿しいと笑うのだろうか。
それでもいいか、と。寒さで固まってしまっていた表情筋を動かした。
ゆるりと、小さく笑う。


「黄瀬。」


柔らかな低い声が黄瀬を呼んだ。
顔を上げれば見慣れた、でもどこか、懐かしい笑顔。


「幸男さん」


緩んだ頬を限界までさらに緩ませて。
微笑む。もう、抱きつきはしなかった。


「わり、遅くなった」
「んー」


間延びした返事を返して、笑った顔はそのままに、形のいい唇を開いた。


「へーき、っス」


甘えるような声で、仕草で、言葉を返す。
くしゃり。笠松の右手が頭を撫でた。そして、同じように彼も笑って。


「ん」


小さな声とともに、左手を差し出す。
黄瀬は一瞬きょとり、と目を開いてから、破顔。幸せに溢れた笑顔で、右手を重ねた。
他人に無関心な大勢の人が、二人を視界に入れることなく足早に通り過ぎていく。
繋がりのない大勢とはなんて無意味で、そして悲しいものなのだろうと、黄瀬はふと考える。
同時に、思う。
繋がれることは、なんと幸せなことなのだろう、と。
隣の彼がそんな黄瀬の思いを知ることは、この先ずっとないだろう。
そして、なくていい。
黄瀬一人が知っていれば事足りるのだ。雑踏の中でも、一人な人間はひとりぼっち。
多少肩がぶつかったくらいでは、その世界が交わることがないけれど。
今、黄瀬と笠松は隣にいる。他人ではない、もっと、深い思いで繋がっている。
それだけで十分なのだ。
だって、もしも今そこに一人でいることがひとりぼっちと言うならば、
間違いなく二人は、この人で溢れた街角に、ふたりきりで佇んでいるのだから。



あとがき

黒バス:笠黄
突発的シリーズ
独白めいた重めのが書きたかった・・・はず
もはや何度目かわからない予想よりファーラウェイな着地点に涙目
きっとこの笠黄は高校卒業してると思います
大人な二人が書きたかったの、たぶん
なに言いたいのか分からないのは、私に文才がないからです
(2011.11.23)



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