27
きれいな声、大きな瞳、ぷっくりとし桃色の唇、頬紅を塗ったわけでもいないのに赤みがさした頬、細い首筋、細い腰、程よい筋肉がついた腕と足、すべてが美しく、すべてが儚く…。
俺は彼が堪らなく愛しい。
なぜこんなにも胸が高鳴るのだろうか。
なぜこんなにも切なくなるのだろうか。
この多々なる疑問に答えを出すというならば、それは恋だった。男に恋などするものかと最初は戸惑い気が狂ったのかと思っていたけれどそれはすぐに消え失せる。
彼に会えた日と会えなかった日とでの気分の違いや、彼に会えなかったとき思わずその場にいない彼の名前を呟いては顔を赤らめたり…。
そう、それはまるで恋する乙女のような行動だった。
「あ!山崎君ちょうどよかった。総司見てないか?今日夕餉の当番なんだけど見つからなくてさ。」
ドクンと心臓が大きく鳴る、彼の声を聞いたり姿を見るだけで体温が一気に上昇し赤らむ頬を隠すので精一杯だ。
「(沖田さん?そういえば猫と遊んでいたところを見たな…)いえ、見かけていません。」
「うーん…そうか…」
…?俺は今何と言った?
俺は確かに猫と戯れている沖田さんを見たはずだ、いやはずではない。確かに見たのだ。
なのになぜ俺はなまえさんに嘘なんかをついたのだろう?
「くそー…俺一人で夕餉作るのかよ総司後で覚えてろよ。」
「あ、あのなまえさん…」
「うん?どうした山崎君。」
「よかったら…」
手伝います。
俺は沖田さんを見かけたにも関わらず嘘をついて、少しでもなまえさんの傍にいれるよう仕向けた。
そんな俺の心の内を彼は知るわけがなく笑顔で助かるよと答えてくれた。
あぁ…そんな目で俺を見ないでくれ…今にもあなたをこの胸に抱いてそのまま連れ去ってしまいそうだ。
声を、手を、足を、体を、私に下さい。
「そうそう俺さ、最初山崎君のこと苦手だったんだ。」
「そう…なんですか…。」
「とっつきにくそうで苦手だったんだけど話す度に俺山崎君のこと好きになってくよ。」
殺し文句もいいとこだ。
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