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人気の少ない中庭の隅っこにある岩に座り、ボーっと物思いに耽っていた。


すると私の体を中心に影が現れた。
驚いて顔を上げてみると男三人がニヤニヤとした厭らしい笑みを浮かべながら私を見下ろしていた。



「お前、隊長達の下の世話してるらしいな。
俺たちにもやってくれよ、」



下の世話…ってそういう意味だよね?
私そんなことした覚えはないし…そりゃ優しくしてくれてはいたけどあれは嘘だった。


「わ、私そんなことしてません!」

「んなこと関係ねぇよ、女が男しかいねぇここにいるんだ。なぁ…本当は襲われるの待っていたんじゃねぇか?じゃなきゃこんなとこにいつまでもいねぇだろ。」


男二人に腕を捕まれ、私のすぐ後ろにぴったりともう一人がくっついた。
これでは周りから私は見えない。どうしよう………このままじゃこの人達に犯されてしまう…!


母屋の裏側まで連れてこられ地面に私は体を叩きつけられた。

「きゃっ!い、たい…」

「この前買った女は安かったが醜女(しこめ)でよ、金を無駄にしちまったしやることなすこと最悪な女だったんだ。
だから早くやりたくて溜まんねぇ。」



お前どんだけやる気だよ、こいつが失神するまでー!、おっかねー!と男三人は笑い声をあげる。
誰か助けてよ……なまえさん…!お願い、気付いて…!


一人の男が私の胸倉を掴み、左右に広げる。
必死に抵抗しても手と足は二人の男に捕まれていて身動きもとれない。


嫌だよ、こんな形で初めてを失うのは嫌だよ…!



「そこで何をしている。」


男達の背後から聞こえた声。
囲まれていて姿は見えないけどこの声は…


「あんたは……局長の義弟の、近藤なまえさん……」



一人の男が顔を青くして言った。
その名を聞いた途端不安な気持ちがすーっと消えていく。
来てくれた、私を助けに来てくれた……!


「もう一度問う、何をしている?」


「っ!!ビビってんじゃねぇよ!局長の弟って言っても義理の弟、しかもこいつは雑用だぜ?
ぶら下げてる刀は小刀一つ、しかも女みたいな顔ときた。これだけ女顔なら局長や副長ともよろしくやってるんだろ?一緒に犯してやるよ」


私から離れた男三人はなまえさんにゆっくり歩み寄り一人がなまえさんの腕を掴もうとした。



けれどもなまえさんはその腕を逆に掴み背中に回す。



「お前ら新人だな、先輩たちから裏御法度を聞かされていないのか?」


「う、裏御法度?んなの聞いたこともねぇよ!俺たちにはそんなの関係ないんだよ!」


腕を捕まれている男がふりほどこうと暴れるがなまえさんは顔色一つ変えない。
それを見ていた二人のうちの一人がなまえさんに殴りかかる。
怖くなって思わず目を瞑ってしまった。



「ぐぁ!」

聞こえた声はなまえさんのものではなかった。
恐る恐る目を開けてみると、殴ろうとしていた男はなまえさんによって地面に倒れていた。


「一つ、沖田総司が苛ついている時は近づくな。」


ぱっと男の腕を離す、腕を押さえながら地面に転がった男はよろよろと立ち上がり凄い勢いで拳を振り上げる。


それを片手で受け止めて、足を引っかければ体勢を崩した男は再び地面へ。


「一つ、永倉新八の前で体自慢をするな。
一つ、井上源三郎の前で飯を粗末にするな。
一つ、斎藤の前で副長の悪口を言うな。」


地面に伏せた男の腹を強めに蹴り、気絶させてしまった。
最後に残った男はぷるぷると震えながら、刀を抜いた。


「へへ、刀があれば俺の勝ちだ!!そんな短ぇ刀じゃこの俺と対等に戦うなんて…」


その言葉になまえさんは小さく笑った。何が可笑しいんだと反発する男にまるで見せつけるかのように小刀を抜いた。



「ど、どうせ負けた時の言い訳に使うためだろ!そんな細い腕と脇差しで大刀を扱う俺に適うわけねぇだろ!!!」


「モノのでかさで勝敗が決まると思ったら大違いだぞ、青二才。
なんていったって最後の裏御法度を飾るのは俺だからな。」


じろりとなまえさんは男を睨んだ。一般人である私でもわかるほど彼は殺気を出していた。
ピリピリとした空気が流れ、痺れを切らした男が刀を振り上げながら走り出す。


「負けるとわかっていながらかかってくるなよなー…」



短い刀を右手に持ったなまえさんは男が目の前まで来たときに体を縮め男の懐に入り込む。


刀を男の腹に突き刺して一瞬のうちで彼は自分より大きな男三人を倒してしまった。



「…え、あ、死んで……?」


「死んでない。自慢じゃねぇがまだ人を殺したことはねぇよ。
そういや怪我はないか?見たところなさそうだし多分大丈夫だろ、じゃあこいつらの処分は俺に任せて早く行け。」


「………えっと……ビックリして腰が抜けちゃって…」


「………」



は、恥ずかしい……。なまえさんも呆れてるよ絶対。



「ったく…しょうがねぇ女だな。」



なまえさんは頭をボリボリと掻いて、私に近寄る。
なんだなんだと身構えていれば私のお腹に腕を回し、軽々と持ち上げたのだ。


「え!??いや、私重いですから!」


「あ?大丈夫大丈夫。よっこいしょっと…。」



驚いた……だって私を右手に抱えたまま、男三人を左手で持ち上げるだなんて…!


しかも全然重そうには見えない。なまえさんって本当にすごい人だ……。



膨れていく想い



陰にいた存在など気づかないほどあなたに見とれてた



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