22



チュンチュンと雀が鳴く声で俺は目を覚ました。
あの後いつ寝たのかは思い出せないけど体を起こして見た光景に嬉しくなった。


俺を捜すために外に出ていた奴らが帰ってきてみんなで騒いで、そのまま俺の部屋にみんな雑魚寝。
山南さんや千鶴、井上さんとかは部屋に戻ったらしい。


思わず笑みをこぼしてから顔を洗いに行こうと思い服を着替えて手拭いを手に取り、皆を起こさないよう静かに部屋を出た。





井戸から水を汲みバシャバシャと顔を洗う。
冷たくて気持ちいい…涙で腫れてしまった目を癒すには調度良かった。



このあとはいつも通りに朝餉作ってあいつらが飯食ってる間に洗濯して……雑用の仕事は山積みで困るな…。


台所に向かって何を作るかなどを考える。
今日の当番は平助と総司だったはずだ。

あいつら不器用だから簡単にできるやつにしようかな……。


「漬け物は胡瓜と茄子のぬか漬けで、味噌汁は豆腐と長葱…」

「あと里芋の煮っ転がしが食べたいよね。」



後ろから腕が回ってきて抱きしめられる。犯人は当番である総司だった。

「里芋はない。というより無駄遣いは歳三さんに怒られるから嫌だ。」


「つれないなぁなまえは。今日僕非番だから一緒に出かけない?」


「お前が屯所を掃除して隊服を洗うなら考えてやるよ。」



俺がよく使う断り文句。うちの隊士らはこれにめっぽう弱いのでそのときの表情というのはなんとも面白い。



総司と飯を作っていれば平助が遅れて登場し、総司から拳骨をくらっていた。
いいぞ、もっとやれなど断じて俺は思っていない。



出来上がった飯を運び終わり、続々とみんなが集まる。
しかしおかしい……いつもなら左之さんや一くんと来ていたはずの心がきていないのだ。



「なぁ、心は体調でも崩しているのか?」



俺が質問するとみんなが放つ空気が変わった。
こいつら………心がやってきた時に戻ってやがる……。



「…心に飯届けてくる。」

「待てなまえ!あいつが休みたいって言ったんだ、そっとしておこうぜ。」



左之さんの言葉により、俺の中でブチリと堪忍袋の尾が切れる音がした。



「俺に嘘つくとはいい度胸じゃねぇか左之さん。あんたとも長い付き合いなんだ、俺が何を嫌いなのか全部把握しているはずだよな?」


そうだ知っているはずだ、俺は嘘と見た目で判断されることが大嫌いな人間だ。
俺もみんなに風間達に会ったことを秘密にしているがあれは正しい嘘だ。
その嘘によって誰かが傷つくことはねぇと判断した、だから嘘をついた。


だがこの嘘は違う。



「女にはめっぽう優しいあんたがそんなことを言うとはな、左之さん…。」




心の膳を手に持ち、部屋から出て行く。
俺はみんなが俺から離れていって心を囲んで、楽しそうにする姿を妬ましく感じた人間だ。
そんな俺がそんなことを言う権利がないのはわかっている。

でも変だろ?いきなり放置された心はよくもわからぬこの世界でどう生きろと言うのだ。
俺はまだ耐えられた、俺が心からあいつらを奪ったのだろうか…。




この気持ちを現す言葉が見つからない



所詮、俺は弱い人間なのだ。



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