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「帰ってきたはいいが……入りにくいな……。」

今まで夜に帰ってきたことなんてねぇからどういう顔をして入ればいいのか全くわからない。
でも俺がいなくなったことに気付いてないなら怒られる心配はないな。

そーっと入って、そーっと部屋に行こう。
大丈夫大丈夫、俺こういう時こそ何か力を発揮するはずだ…。



門からは入らず、俺は塀を飛び越えて中に入った。
忍のように足音をたてず屯所に入ったはいいが妙に静かで違和感を感じずにはいられなかった。


みんないないのか?もしくはもう寝たのかだ。



これを好機と思った俺は、そのまま部屋に向かった。


俺の部屋はみんなとは別の場所にある。
あんな男臭くて不潔な場所で寝れないし俺はみんなより起きるのが早いからということで少し離れた場所なのだ。
だから誰にも気づかれずに戻れると思っていたのに、俺の部屋には明かりが灯っていた。



「もしかしてやっぱり俺がいなかったことに気づいてるのか?」


今思い返せば、俺は兄の目の前から立ち去った。
だから気づかない方が可笑しいのかもしれない。


ここは腹を括ろう、怒られるのは目に見えているがこのまま外にいるのも嫌だ。

戸に手をかけてがらりと迷わず開けた。
中にいたのは鼻水やら涙やらで顔をぐちゃぐちゃにした兄と歳三さん、山南さん、一くん、千鶴だった。


「なまえ……」


兄が嗄れた声で俺の名を呼んだ。


「わ、悪い兄上…町で酒飲んでて気づいたらこんな時間で……。」


言い訳とか嘘が苦手だけどどうにか思いつくままに言葉を紡いでいたら勢いよく兄から抱きしめられた。
驚いてどうすればいいかわからなくて…とりあえず兄の背に手を回す。


ずびずびと鼻水を啜る音が聞こえて涙が首に落ちてきたりして少しくすぐったい気持ちになる。


「……っ…よかった…!今までこんなことがなかったからっ…心配して…!」

「兄上……」


心配という言葉はこうも嬉しいものだっただろうか。
部屋にいたみんなが俺達に近寄りよかったよかったと頭を撫でたり肩を優しく叩いたりしてくれた。


久しぶりにみんなの近くにこれた気がした…。
みんな俺のことを心配していたんだとわかって、まだここにいてもいいんだと思うと、安心してボロボロと涙が零れる。


わんわんと子供みたいに声を上げて泣いた。
腕の骨を折ったときも、総司と喧嘩して足に青あざをいっぱい作ったときも、兄に目一杯怒鳴られたときも俺は泣かなかった。


だからみんな俺が泣いていることにひどく驚いている。

「ど、どうした!?まさかどっかの野郎にやられたりしたんじゃ…!」


なんだよどっかの野郎って…男とやるのはごめん被るぜ、土方さん。


「…みんなに見捨てられた気がして……少し心細くて…。」


天霧さんに言われた。
たまには素直に甘えてみないとみんな勘違いするって。
強い子だって思われるから甘えることも必要だって。


いい年して心細いとか馬鹿みたいだけど、新選組の中で一番力も強いけど心は弱いから…。




もう少し甘えさせて



前みたいに俺を置いてどこかに行かないでくれ。



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