「それでは、第四走者!よーい、ドン!」
パンッとスタートを告げるピストルが鳴った。
一斉に走り出し、最初の障害物であるオカマに到着する。
オカマと言っても自分らがオカマになるわけでなく、オカマになった係員とジャンケンをし勝てば天国負ければ地獄のゲームだ。
「最初はグー!じゃんけん!!」
私なんかより頭一つ半も高いオカマは低く大きな声でじゃんけんのかけ声を言う。
気持ち悪くて吐きそうになりながら私はチョキを出した。
相手はパー……つまり私はこのオカマに勝ったのだ…!
くやしぃ!とオカマは叫びながら私にメガホンを渡し道を開けてくれた。
隣のピエロは負けたらしく熱い接吻を受けている。
あぁドンマイ、あなたのことは忘れないと心の中で思いながら次に向かう。
次はメガホンを使ってのセリフで私が一番やりたくなかったものだ。
あんなセリフはいい男が言うからこそトキメクわけで私が言っても何のメリットもないだろうに……。
明日からいろんな人に指をさされて笑われるに違いない。
だが成功して1位になれば成績上位は確実!!
テスト期間中には勉強しなくても大丈夫ってことになる。
言ってやるさ、女らしくビシッと決めてやる…!
今のところ私は二番らしい…一番であるメイドの格好をした男子はメガホンを構えてはいるが恥ずかしいのか顔を赤くして言えないでいる。
チャンスとばかりに足を速め、男の隣に立ちメガホンのスイッチを入れ構えた。
「お、俺の愛に溺れろぉぉぉ!!!」(きっといい声)
ノイズがところどころ入ってしまって失敗だったかと諦めかけたその時、観客席から叫び声が聞こえる。
キャーキャーという黄色い歓声を浴びているのは横にいるメイドだろうか?
いや、時々私の名前が聞こえてくるしこの歓声は私へだ。
もしかすると黄色い歓声ではなくブーイングかもしれないが言ったにかわりはない!
メイドを越して走るのみ!!
メガホンを持ったまま観客席から離れ次の障害物へ向かう。
次は借りモノ、地面にバラまかれた板の中から一つ選びそれを借りてくる。
所詮借りモノ競走は借りモノ競走!!
どうせ水筒とかタオルとか日常品の名前が書かれているに決まってる!
私は板を取り、楽なものが来ますよーにと願いを込めながら板に書かれた文字を読む。
何々?
へん……たいをつれてこ、よう……(笑)……。
思わず足を止めて、一度目を閉じた……。
………………。
変なの書かれてたよマジで。
ちょ、これハズレじゃね!?
待て待て落ち着け私。
さっきのは何かの間違いだ。
どれだけ可笑しい学校でも変態を連れてこいとか……。
パチリと開いた目には先ほどと一文字も変わらない文章があった。
これ考えたやつ死ねばいいのに……。
つかこれなんて言えばいいのよ、変態いますか?って聞いて、はい、私は変態ですって言う人間がいるはずない。
男子が悪ノリで来てくれたらありがたいけど……。
まぁ一回、やってみるか。
もうどーにでもなっちまえこの野郎。
「すいませーん、変態さんいらっしゃったら一緒に走ってくれませんか?」
メガホンのおかげでいつもの数倍も大きくなった私の声がグラウンドに響き渡る。
羞恥なんてどっかに行っちゃった。
もうめんどくさいと早く終わりたいとしか思わなくなってきた。
変態さんマジ出てきて早く、もうストーカーだろうがドMだろうが構わないから………。
ストーカー?
ドM?
そうか、あいつがいた。
これは神様の悪戯というやつだろうか?
何だかとっっってもムカつくが致し方ない。
「沖田先輩、今すぐ来てくださーい」
その言葉を数回繰り返し言っていると、砂煙をおこしながら何かが私に近づく。
野生の勘というやつか、何かを感じ取った私はメガホンを高々と上に上げ、振り下ろした。
すぐそこに来ていた何かに見事あたりガツンと音がした。
「先ほどぶりです沖田先輩、お手伝い願います。」
「僕の扱い酷くない?」
そりゃ気のせいってやつです。