「はい、くじどうぞ」
爽やかなお兄さん(多分3年生かな?)が私の前にずいっと箱を出した。
恐る恐る箱に手を入れ、ガサガサと何枚もある紙の中から一枚を引いた。
「………13番、です」
「13…13…あぁ、有名人にはお似合いのやつだね!」
は?
有名人にお似合いって…。
「今女の子にモテている子だろ?」
「頷きたくないですよそれ」
ははっと爽やかな笑顔で彼は笑う。
こんだけ爽やかだと怒ろうにも怒れないわ、
「はい、じゃあこれ」
少し大きめな紙袋が手渡され、私はゆっくりと中を見た。
うん?黒?
「え、黒っ!」
「ほらほら早くあの個室に入って着替えなよ、絶対似合うからさ」
今爽やかな笑顔の後ろに黒いのが見えたのは気のせいだろうか。
爽やか腹黒って最悪ですよお兄さん。
黒いオーラから逃げるように個室へ入った。
紙袋から出した服には白いカッターシャツに黒のズボン、黒のネクタイに黒のエプロンが入っていた。
………あ、あー…
カフェ店員が着てるやつだよねこれって。
あの爽やかなお兄さんが着たらカッコイいだろうなー…私が着たら男装になるわ。
なんで私にお似合いなんだ?
女の子にモテている子って聞かれた。
モテる(女の子に)→私も女→つまり→You男になっちゃいなよ!
うっへーい!
やっちまったなおい………いやいやバカじゃないの!?
私何キャラだよ、混乱しすぎでしょ!
さっさと終わらせてやる!!!
更衣室から堂々と出てくればすでにみんな着替えていていろんなコスプレをした人達が一気に私の方を見た。
ヤバい……!
めちゃくちゃ目立った。
「着替え終わったんですね、次はヘアメイクをしますからこちらにどうぞ、」
爽やかなお兄さんの次はめちゃくちゃ美人なお姉さんが現れた。
美男美女の確率が高すぎるぞ…!
「お、お願いします。」
美人なお姉さんに誘導され椅子に座る。
邪魔だったため一つに縛っていた髪を解くのかと思いきやそのままにして縛りきれなかった髪をピンで次々に止めていった。
「やーん!!私すごい!」
美人なお姉さんはすごいすごいと自分を褒めたたえている。
いや、まぁ本当にすごいのだからいいんだけれど…。
「男に、見えますね」
「でしょでしょ!!これで女の子の心鷲掴みよ!」
あなたは私に何をさせる気だ…!
「第4走者の方は移動してくださーい!」
第4…私の記憶が正しければ私が走るのは第4のはず。
とりあえず行くか。
お姉さんにお礼を言って、スタート地点へ行った。
スタート地点への距離がすごく長く感じたのは気のせいだろうか?
スタート地点に着くと、いるわいるわコスプレが。
アニメのキャラクターやメイドにナースと王道のやつも。
なんか私って浮いてるんじゃないか?
「はい、決めゼリフのくじを引いてくださーい」
今度は台詞かよ!!!
今走っている第2走者を見ればメガホンを手に持っている。
そしてそれを観客席に向かって構え………
「僕は死にませぇぇえん!!!!」
叫んだ。
ていうか逆に死にたくなるだろこれは。
うわ、顔真っ赤!
可哀想だなあの人………ってしみじみ感じてる場合じゃない!
私もあれをやるんだよ、あと数分後に!!!
目の前のくじ箱持っている人が楽しそうに待っているのが何よりも証拠!
恐る恐る箱に手を入れ願いながら一枚の紙を引いた。
それを開いて見る。
「えっと…?うはー!!それ俺がいれたやつだ!」
犯人はあんたか!!
ちょ、何この恥ずかしい言葉!
言えってか!?
700人くらいいる全校生徒の前で!!!
しかも(いい声で(笑))って書いてあるのがなお苛つく!
今すぐあなたを殴りたいよマジで!!
先輩とか知ったことじゃねぇよ!!マジ殴らせろ!
「第4走者は前に出てくださーい!」
ああああ、とうとう次じゃないか!!
白の線に並ぶとみんな目が燃えている。
何故?普通嫌がるんじゃ…。
メガホンも手渡され、今走っている第3走者が終わればスタートの銃が鳴る。
『おぉっと!アムロ早いです!!今のところ台詞に速さ、ビジュアルの総合はアムロが一位です!
優勝商品はアムロの手に渡るのかぁあ!??』
へーそんなので得点がでるのか……商品?
「ちょっとすみません、商品って何ですか?」
私の横にいたピエロの格好をした男子に声をかけた。
「なんだ知らないのか?優勝商品は成績上位だよ」
「………は?」
「テストで赤点をとっても免除されるんだ。必ず上位10には入れる」
「何もしなくても?」
もちろんとピエロは答えた。
ふつふつと私の中でやる気が出てきたのは言うまでもない。
やってやる!
赤点とっても10位以内に入れるとか最高だ…!
みんながどうしてこれほどやる気が出ているのかよくわかった。
やってみせる!!目指せ優勝!
栄光を我が手に…!!!