Agape 1




まだ僕が小学校低学年のとき、母さんに言われた。

「あなたはお母さんのお腹の中でへその緒に絡まっていて死にそうだった。
お母さんは病院で思わず泣いていたわ、お父さんには怖くて連絡できなかった。
私の次に楽しみにしてくれていたから、でもねそこに天使が表れてあなたのことを助けてくれたのよ。」


小さいころは信じていた。
天使がくれたっていうネックレスも貰って、それが僕の宝物で天使との繋がりだと信じていた。


だけど天使なんて本当はいないって、大人になるにつれてわかっていく。

「よくあんな嘘をついたよね。」


リビングでテレビを見ていた母さんに言った。
ただその一言だけを言ったのに母さんはすぐにわかったらしい。

あぁ、と頷いてテレビの音量を下げた。


「あれは本当よ、あなたを助けてくれたのは天使。
小さくて可愛らしい天使が泣いている私のもとへきてお腹を触りながらあのね、お母さんが悲しんでるから早く出ておいで。怖くないよ、安心して大丈夫だよって言ってくれてね。
そしてお守りにって今あなたがつけてるネックレスをくれて…。
次の日、お父さんと一緒に病院に行ってもう一回見てみたら絡まっていたへその緒はとれていて正常に戻っていたの。」

「え、小さい天使って、もしかして子供?」

「そうよー3歳くらいの可愛い子だったわー。」


ずっと本物の天使だと思っていた本当は3歳くらいの女の子で、お遊戯会でもあったんじゃないかって母さんは言っていた。

なんだかすごく興味が湧いた。
だって本当に僕を助けてくれたのならありがとうとお礼が言いたい。
名前も顔も知らないその人に、いつの間にか僕は恋をしていたのかもしれない。


そう思って月日は流れ、僕は高校生になった。
同じクラスになった鉢屋三郎っていう僕とそっくりの子と仲良しになった。

竹谷八左ヱ門や久々知平兵助、尾浜勘右衛門とも仲良くなり僕の高校生活は安定している。


「なぁ前から気になってたんだけど、雷蔵っていつもそのネックレスしてるよな。」

「え?あぁこれ?ちょっと特別な思い入れがあるんだ。
でも言ったらみんな絶対に笑うから秘密にしとく。」







(あのネックレス…確か……いや、考えすぎだよな。)



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