炎上暴君






「は、原田先輩?大丈夫ですか?」


顔を真っ赤にして硬直している原田先輩に恐る恐る手を伸ばした。



けれど、いきなり肩を思いっ切り引っ張られ、伸ばした手は悲しく宙を舞った。
ポンと何かに当たり、体はそれ以上下がることはなく助かったと安心していた…。
だけど、背中から伝わる温もり、離れない手。
まさかまさかと冷や汗をかきながら後ろを振り返る。



笑顔の沖田君がいた。




「おおお沖田君!!?あの、え!?何で!?」

頭に血が上り、何が起こっているのかもよく分からなくて、漸く出した言葉はどもっていて意識していることがバレバレである。

「駄目だよ名字ちゃん。僕はともかく左之さんや新八さんは狼なんだから、」




「………………原田先輩と永倉先輩って狼男だったの?」






私の発した言葉は予想もしなかった発言らしく、沖田君は目を見開いている。


「沖田君!私の名前ちゃんを返してください!!!」


土方先輩といちゃついていたはずの千鶴はずんずん私たちに近寄ってくる。

いつもは温和で優しい千鶴とは一変し、今なら背後に般若がいるようだ。


「私…の??千鶴ちゃんには土方さんって言う素敵な旦那様がいるからいいんじゃない?」

「土方さんと名前ちゃんは別です!
私の親友に手を出さないでください!!」




わ、親友だって!
なんか面と向かって言われるの恥ずかしいな…。

「あ、あの…とりあえず離してください。
恥ずかしいです………」


さすがにそろそろ今の状態に耐えられなくなってきて、ギブアップの合図に右手を挙げる。
沖田君は溜め息を一つ吐いて体を離してくれた。





離してもらって一息つこうとした瞬間、





屋上の端に何かが落とされ、地震のように揺れる。

「な、何!?」


飛んできたであろう1棟に目を向ければ、屋上に男が4人ほど。
こちらを見てせせら笑っている。


「名字ちゃん、怪我は!?」

「大丈夫、あの人達いきなり!!」




見たこともない男達に襲われるのは正直苛ついてしまう。
沖田君達がくると聞いてリュックに仕舞っていたツインの銃を取り出す。


「沖田君達も千鶴も刀や槍。飛び道具なんてない…………となれば私だよね、」





「な、名字!!駄目だ!これ以上手を汚しちゃ…」


藤堂君から非難の声がする。
私がやらなくて誰がやるの?
飛んで1棟に行って殺す?

「………そう思うなら解決法を見つけてよね…!!!」






しゃがんでいた体を起こして、いつでも撃てるようにしていた銃を1棟に向けた。


二人の男がもう一発ぶち込もうとロケットランチャーを慣れない手付きで詰めている。
後二人はこちらに銃口を向け笑って今にも撃とうとしている。




ロケットランチャーを待っているほど暇なわけではないので、とりあえず銃を構えた二人の脳天を狙い、同時に撃った。
見事に弾は当たり一人は後ろへ倒れ、もう一人は前に倒れ込み下に落ちていく。



「相変わらず凄い腕前だよねー、脳天命中じゃない」
「うん、後二人。」




沖田君に褒められて、いつもなら喜ぶのに今は敵に集中しすぎて喜べない。



仲間二人がやられたお陰で残り二人は驚きと焦りで、先ほどよりも急いでいる。
どうやら準備ができたようで後は撃つだけの状態。



でも私がそのまま撃たせるわけがなくて、右手の銃をロケットランチャーの穴に向ける。
穴の大きさは本当に小さくて、当たるか当たらないか不安になる。
けれど撃たなければみんなが怪我をする、そう考えれば考えるほどプレッシャーが私にのしっとかかる。





バンっ


銃声に少し遅れて、1棟の屋上が爆発した。

煙がもくもくと空に上がり屋上に小さな火が所々残った。




「終わった………」



プルルルッ


ほっと息をついた瞬間ポケットに入った携帯が音をあげる。
安心していた間際に携帯が鳴ったので私は少し焦りながら携帯を開いた。

名前が出る個所を見ればそこには非通知とだけ書かれている。
こんな時に?と不安になる気持ちを押しのけて勇気を出して出ることにした。







そして聞いた声は、




上がる炎と煙が世界の現状


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