左右相違





「お、沖田君?熱でもあるの?」


きっとそうだ。
沖田君がクラスに一人は必ずいる私のような平凡女を誘うわけがない。
千鶴を誘うならまだしも……



千鶴?
そうか千鶴目当てなのかも。
千鶴は可愛いし、勉強できるは優しい……あ、でも千鶴には土方先輩がいるのになー…。
もしかして土方先輩に頼まれたとか…あぁ納得。


『悪いけど至って僕は正常だよ?君の銃の腕前は一流だけど、人数は多いほうが早く先圧できるでしょ?』


確かに……。




「私はいいけど、千鶴に聞かなくちゃ分からないや……。」


『千鶴ちゃん?即答で答えてくれそうだけど、』


よくご存知で………

「じゃあ少し待ってて千鶴のところに行かなくちゃだから…」

『うん、わかった。』




了解の言葉を得て、私は階段を駆け上がった。





「千鶴!!」

「っ!?ど、どうしたの?何かあった?」


勢いよく扉を開き叫んだせいで、千鶴はとても驚いている。
走ったおかげで心臓はバクバクいってるし、息が上がってうまく喋れないため落ち着こうと深呼吸を繰り返す。


「お、沖田君が・・・」

「沖田君が?」


「携帯に電話してきて・・・」

「え?名前ちゃんに?」


「……仲間にならないか?って…」
「うんなろう。」









………………。



「速答だね、」

「当たり前だよ。だ、だって沖田君は土方先輩と一緒だし……」



千鶴の世界は土方先輩を中心に回っているらしい……。

でも私も沖田君と一緒にいれるとなれば凄く嬉しい。
答えは決まったし、右手に持ったままの携帯を耳に当てる。


「沖田君、千鶴もいいって…」



『うん、知ってる。全部聞こえてたもん』

「あはは…」



聞かれてたと分かれば一気に羞恥が込み上げてくる。
なんとも恥ずかしい……。


『じゃあ今から迎えに来てあげる。』



「え!??今から!?」



私の質問に答えようとせず沖田君は、そこから離れないでよねと一言言って電話を切った。






「ち、千鶴。今から来るって……」


「えぇ!??名前ちゃん血だらけなのに……」

「そこ!?」



でも確かに血だらけの女の子ってどうかと思うよね……
でも今更どうしようもないし見た目は諦めよう。

しかし私が不安なのはそこじゃない。
今から来るということは階段付近にある死体を目にするかもしれないのに………。



「失恋決定だ……」

私の呟きは土方先輩に会えるとウキウキ気分の千鶴には聞こえない。



ピクッ

何でこんなに早いんだ。
振り向いて扉を見れば勢いよく開かれた。



「さっき振りだね、名字ちゃん。」

「名字!!大丈夫??怪我とかしてねぇのか!??」



沖田君の後ろから藤堂君がひょっこり出てきたかと思えば私を見るなり顔を青くして近付いてくる。



「だ、大丈夫だよ。これ全部返り血だし…………心配してくれてありがとう。」

本当に藤堂君は純粋な優しい子で見てて癒される。




土方先輩はいつの間にか千鶴のとこにいて、人目も気にせず抱きしめていた。
千鶴は耳まで真っ赤にして恥ずかしながらも嬉しそうに笑っている。



私も笑う千鶴に釣られて、少し笑う。



「よぉ、名前ちゃん」



「へ?」

振り向けばかの有名な原田先輩と永倉先輩がいる。
でも何で私の名前知ってるのか分からないんだけど……。


「そういやまだ自己紹介してなかったなぁ。
俺は原田左之助、こっちは永倉新八だ。」

「は、はい!私は名字名前です。宜しくお願いします。」



まさか自己紹介なんてされるとは思わなくて慌て挨拶を返す。

「やっぱ覚えてねぇか……」


「え??どこかでお会いしましたっけ?」



こんな美形の方を忘れるはずがないんだけど…。
あ、でも私男の人にはあまり興味がなかったし………


「三年前、俺が喧嘩してる時に助けてくれたろ?
あいつら汚ねぇ手ばかり使うから手こずってて……まぁそれ以外にも会ってるけどな。」


三年前?
私が中学生の時…。













「あぁー!!あれ原田先輩だったんですか?
すいません、あの時は割り込んだりして……」



記憶が一気にフラッシュバックして一瞬混乱したけれど、確かに思い出した。
顔はよく覚えてないけど、髪が今より短くて幼さがあって…………


「謝ることじゃねぇよ。昔は餓鬼だったからよ、礼も言えず三年も経っちまった。
今更だがありがとうな」



原田先輩は優しく微笑んで私の頭を撫でた。
ついそれが心地良くて目を瞑ってしまえば、手の動きが止まった。


どうしたのだろうと、目を開ければ顔を真っ赤にした先輩がいた。



真っ赤な男と鈍い女


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