同盟作戦





「あんな性格にならなくてよかった………。親に感謝しなくちゃ、」


血の水溜まりを避けながら、私は千鶴のいる屋上に向かう。



時刻はちょうど12時。
一日目の半分が終わったことになる。


そしてとある事件が起こった。





『みんな!!戦いなんてやめようよ!今まで楽しく学園生活を送ってきたのに、こんなことで崩れちゃうなんて嫌だよ!!だから、みんなで団結すれば政府なんて怖くなっ!!?』
ブブッ
ジジッ


『皆さーん、馬鹿みたいな行動はしちゃダメですよぉ?
それを心に刻みつけるためにも体育館に行ってさっきの馬鹿な子達がどうなったのか見てくださいねぇ?』
ブツッ



「えと……まさかの?」


まるで嵐のように来ては去っていった放送ジャック。
反政府組織がいるのだから何人か平和主義とかで言う人がいるだろうなとは思っていたけれど…。

まさかここまで大胆な行動をとるとは思ってもいなかった。


平和主義と反政府組織の違いは戦うか戦わないかの違い。
だけど平和主義って言い張っていても、本音はきっと違うのだろう。


言った本人は高みの見物で、他の集まった人達に戦わせて自分は安全位置にいるだとか、油断したところを殺すだとか。


その女子を体育館にわざわざ見に行く人達はいるのだろうか?
死体を見て楽しむ人が行くのだろうけど、別に私は死体愛好者ではないし、血を見て興奮するわけでもない。

死体を見て強くなったり、いきなり体力が倍増したりするならば話は別だけど。



プルルルルッ

「!?」


いきなりの着信音に驚いてしまった。
胸ポケットから携帯を取り出し、誰からの電話だと見てみればよく知った人からの電話。

通話ボタンを押して、耳に携帯電話を当てた。



「もしもし?どうかしたの?」

以前、日直の手伝いをしてくれた時に携帯番号とメルアドを教えてと言われて教えたけれど、メールを一ヶ月に一、二回する程度で殆ど連絡を取らない相手からの電話。
でも学校とかでは結構話したりはする。


きっと他の女の子達が知ったら私殺されるんだろうな…と、何度思ったことだろうか。


『名字ちゃん?用っていうほどのものじゃないんだけど一応念のため。
音楽科の伊集院京香には気を付けて。』

「伊集院……?ってもしかしなくても金髪のツインテールで……」

『うん、その子。』
「さっき殺しちゃって………」







沖田君が喋らなくなった。
何も聞こえなくて、何を思っているのか全然分からない。
静けさに恐怖を覚えた。

『それ本当?』

ようやく返ってきた言葉がこれだ。
私……冗談でもこんなこと言いたくないかな。

「本当だよ、ついさっき。」


でも、何でその女子のことを気に掛けているのだろうか?
気をつけてって…………もしかして殺さないように気をつけてって意味かな?

ど、どうしよう!
もしそうなら私、取り返しがつかないことをしちゃった!!!


『あり「ごめんなさい!私、知らなくてっ!どどどうしよう…本当にごめんなさい!沖田君!!」…へ?』


失恋だとかで悲しんでる場合じゃない!
私、好きな人の好きな人を殺したんだもの!それって最低じゃない!!

手伝ってくれたり話しかけてくれたり、お世話になった人に対して私……!!
しかも沖田君はあなたみたいな性格ブスに興味はないわよ、とか調子に乗ってなんてことを…!


『名字ちゃん、勘違いしないでよ。
僕は別にあの女のこと好きとかじゃないから、むしろ嫌いだからね。』

「だ、だって気をつけろって…」

『それは、あの女がねちねちしててしつこいし、すごく汚い手を使ってきたりするから気をつけろってことだよ』



確かにそうだと言いたかったけれど、どうにかそれを引っ込める。
でもよかった。


そうか沖田君はわざわざ私のことを心配してくれたんだ。
本当にいい人なんだな……よかった、知り合えて。


「ありがとう、沖田君。わざわざ電話までしてくれて……。」


嬉し泣きってこういう時のことを言うのだろう。
なんだか目の前が滲んできた。

『あ、そうだ。今思いついたんだけど、相談に乗ってくれない?』

「へ?」


相談?
沖田君が私に?


「珍しいね、私なんかに相談なんて……どうしたの?」











『僕と手を組まない?』










「は?」






天国のお母さん。
私はとうとう耳を患ったようです。
私の聞き間違いだったんでしょうか?
お母さん、教えてください。



________________________________





「土方さん、これからどうするわけ?単独行動あり?」

「なしだ。ったく何言ってやがるんだ……「俺だって愛しの千鶴が気になってしょうがねぇのに…」…………いい度胸してるじゃねぇか総司…」



「やだなぁ……僕はただ土方さんの本心を言ったまでですよ」


わなわなと鬼のような形相をしている土方さんはやっぱりからかいがいがあるもので。

純粋にあの子が好きっていうところが正直少し苛つくけれど、それを言ったら自分の気持ちを否定することになるから言わない。


「お、俺!!行きたいところがあるんだけど…」

「名字ちゃんのとこに行くなら僕も行くからね、」




ああ、平助の存在を忘れてた。





そういえば平助って名字ちゃんの電話番号知ってる?
平助は奥手だしね、知ってたら雨どころか槍が降るよ。



胸ポケットから藍色の携帯を取り出して電話帳を開く。
電話するには話題がなくちゃだよね。




うん、あの女のことでも言っとこうかな?
納豆みたいにねちねちしてるからきっと僕や平助と同じクラスの名字ちゃんのことは見たことがあるはずだ。


話題さえ決まればあとは発信ボタンを押すだけ。
善は急げなんてよく言ったものだよ。



プルルルルッ


待ち時間がもどかしい………僕は気が長いほうじゃないから早く出なくちゃ切るよ?



『もしもし?どうかしたの?』


高くもなく低くもない、至って普通の声音はとても落ち着く。



『名字ちゃん?用っていうほどのものじゃないんだけど一応念のため。
音楽科の伊集院京香には気を付けて。』

確かそんな名前だった気がする。

『伊集院……?ってもしかしなくても金髪のツインテールで……』

「うん、その子。」


さすがは名字ちゃん、知ってたみたいでよかった。
話が早くて済む……


『さっき殺しちゃって………』






え?



「それ本当?」


『本当だよ、ついさっき。』


なんか複雑だけど、好きな子が嫌いな女を殺したとなれば喜ばなくちゃだよね、

「あり『ごめんなさい!私、知らなくてっ!どどどうしよう…本当にごめんなさい!沖田君!!』…へ?」



何を勘違いしてるのかなこの子は。
電話から聞こてくる焦った声はとてもおかしくて思わず笑ってしまう。
だけどたぶんこの子は勘違いしてる、僕があの女のことを好きだと思っている。

「名字ちゃん、勘違いしないでよね。僕別にあの女のこと好きとかじゃないから。
むしろ嫌いだからね、」

『だ、だって気をつけろって…』

「それは、あの女がねちねちしててしつこいし、すごく汚い手を使ってきたりするから気をつけろってことだよ」



あ、これじゃあ僕が名字ちゃんを好きって分かるんじゃない?
でもこの子少し抜けてるから心配しなくても大丈夫か。


『ありがとう、沖田君。わざわざ電話までしてくれて……。』



ほらね、
僕が優しいからとか思っているんだろうけど、僕は他の子を気遣ったりしないのに。



「あ、そうだ。今思いついたんだけど、相談に乗ってくれない?」


僕が誰と電話をしているか気づいた平助が睨んでるけど、左之さんや新八さんがニヤニヤしながら見てくるけど。
思いついたそれはとても愉快で、僕が望んだ方向に進んでくれことだろう。



『へ?』


惚ける君がこれでもかと言うほど愛しくなる気持ちが押さえきれない。
名字ちゃんが今どんな表情で電話をしているのかが瞼を閉じればすぐに思い浮かんだ。


『珍しいね、私なんかに相談なんて……どうしたの?』







平助に先を越される前に僕は手をうたなくちゃ。



「僕と手を組まない?」








『「「は?」」』


平助達と名字ちゃんの声が狙ったかのように綺麗に重なった。




電波で同盟を組んでみよう



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