脳内恋心
「基地はここね、」
私と千鶴は運が良かったのか、その後敵と会うこともなく目的の場所へと着いた。
それは2棟の屋上。
ここに来るまでの階段にはきちんと爆弾もしかけたし、携帯電話を屋上への階段と4階の階段の間にセロテープでしっかり固定したし……。
奪った携帯電話は全部番号調べたし。
言うことなしだね、うん
「残念だったね……ついさっきまであそこに土方先輩と沖田君がいたのに」
3棟の屋上を見ながら千鶴は言う。
そして私もそちらに目を向け、溜め息を零した。
あそこに沖田君が……いたんだよね………
「…?名前ちゃん、可笑しいよ!!」
「何が?」
千鶴は何か見つけたのだろうか?
屋上を穴が空くほど私も見れば、千鶴が言ったことが分かった。
「死体がない……?」
沖田君達が殺した人達の死体が消えていた。
「わざわざ沖田君達片付けたとか…?」
「いや…それはないんじゃ………。」
苦笑い気味で私の問いに答える千鶴。
まぁ…さっきのは冗談なんだけどさー……。
そんな真面目な顔で返さないでよ…。
私の一人で滑ったみたいじゃない…。
バババハババババッ
「「!??」」
突如後ろから強風ととてつもない轟音がした。
素早く後ろを向き武器を構えればヘリコプターがいた。
「な…何よ、これ!!?」
「何で学校にヘリコプターが!?」
ヘリコプターには巨大な箱がぶら下げてあり、赤文字で禁と大きく書かれてある。
ヘリコプターの中には私達にリュックを渡した重装備の男達がいてこちらをじっと見ている。
その男達に私は勇気を出して問いかけてみた。
「この箱には一体何が入ってるの!!?」
1人の男が私の問いに答えてくれた。
左手の親指を立てて下に向け首もとに持って行く。
そして右から左に素早く動かしてみせた。
一昔前によく使われていた挑発的な行動は私の認識が間違えていなければ死を意味する。
いわゆる死語的な意味をもつ行動。
英語で言えばFUCK YOU、確かそんな言葉だったはずだ。
「あの箱の中身は死体…?」
謎は解けた。
きっとあの携帯の持ち主らの死体も回収されたのだろう。
ソレらがその後何に使われるのかなど考えたくもない。
生きなければという思いが更に強まった。
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「はぁ………」
「どうしたの?平助。溜息なんかついちゃって」
「ははーん!お前さてはさっきの子に惚れてんだなやっぱり」
ついさっき屋上から見た女の子。
俺と総司のクラスの名字のことが俺は好きで、返り血を浴びたその姿を見て凄く悲しくなった。
確かに、よくゲーセンでゲームをしているのを見たことがあるけれど…やっぱりそれはゲームでしかないから現実味なんて全然なくて、人を殴ったりとかで手を汚してほしくないって俺は思った。
けれど、あの時見た彼女は人を殺していて血を見て。
俺が守らなくちゃと思う。
だから、だから早く会いたい……。
そう思っているのに…俺の気持ちを知ってか知らずか。
左之さんと総司が名字の話をする。
「さっきの子?あぁ、千鶴ちゃん?」
総司の発言により俺は背後から穴が開くほどの視線を受けた。
やべぇよ…後ろ振り向いたら絶対にダメだ。鬼がいる。絶対鬼がいる!
「バーカ!ちげーよ!名字だよ、名字!!」
「名字ちゃん?」
「おぅ!!」
その名前が出た途端、鬼の目線は消えた。
が、今度は総司の目つきが変わった。
「へぇー、そうなの?平助」
「い、いや…その……」
ゆっくりと総司が俺に近づいてくる。
「なるほど総司もあの女のことが好きなのか。」
俺の背後で一君が声をあげる。
え?
「総司に平助…お前らあんな平凡な女が好みなのか?」
いつもこんな話題には五月蝿いぐらいに騒ぐ新ぱっつぁんがやっと口を開いた。
いや、開かなくていいけどさ。
「…」
「やっぱさー、2年の音楽科に可愛い子が一杯………」
「新八さんには一生分からないでしょうね。女見る目ないし・・・」
「同感だぜ、」
俺を睨んでいた総司も今や新ぱっつぁんに視線を注ぎ、俺を含め他の4人も新ぱっつぁんを見ている。
暑い日ざしが降り注ぐ真昼間に
一瞬にして空気が冷え込み、新ぱっつぁんの株が下落した。
そして・・・思いもしなかったライバルが現れた。
だけど叶わないって薄々気づいてた
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