遠方合図




《残り時間1分。》




「…………千鶴の武器は小刀で、私のはツインの銃………か」

「名前ちゃんが得意な武器だね!」



まぁ千鶴は剣道してたし、私は銃の達人……って言ってもゲーセンでよくガンシューティングゲームをしているだけで本物を扱ったことは一度もない。



「……生きなくちゃ…………だよね、」
「そうだよ。ここで死んだら!!………えと」

顔を赤らめてるあたり土方先輩のことを考えてるな……。
私も………人のこと言えないか。





《10秒前》


戦争へのカウントダウン
《9、》

友情も消えて


《8、》



私は人を殺す

《7、6、5、》

沖田君に

《4、3、2…》







あなたにただ会いたい。







《学校戦争スタート》



「行くよ!千鶴!!」

「うん!」





銃を両手に構えて私と千鶴は足を踏み出した。











_______________





「千鶴!大丈夫!??」

「だ、大丈夫!」



どうやら私たちは運悪く平和主義者の基地…と言えるだろうか…。
戦うことを拒み、平和を掲げ政府に反逆しようとする人たちの集団。


たった30分足らずでこんな集団が出来上がるとは思ってもみなかった。



「何でお前らは政府の思い通りになるんだよ!?」



1人の男が私に話しかける。
それは、こっちが聞きたい。
私よりも貴方達の方が政府の【思い通り】になっているのだから。



「それ以外に生きる道がないからだ!」



反逆者とみなされれば殺される。
政府が計画したのは人口低下、つまり反逆者がいればいるほど人口は一気に下がる。
それが政府の狙いだ。

反逆者となれば誰でも殺す理由になる。
反逆者こそ政府の思い通りになる手駒に過ぎない。
そして、この人たちはそのことに気付いていない。
反逆者となって政府に気づかれなければ生き残れる、とでも思っているのかもな。
けれど、そこら中に小型カメラは取り付けてあるし、もしかするといつの間にか発信機も自分たちの体に付けられているのかもしれない。

考えれば考える分可能性は次々と浮かんできた。







逃げ場なんてない。


それが結論




「ゴメン、」


私は、男を撃った。


「てめぇ!よくも…」




バシュッ

後ろから仲間の男に襲い掛かられそうになったが、前を向いていた銃口を後ろに向けて感で男を狙い撃った。
見事腹に命中したらしい男はその場に倒れた。
唸り声をあげ、口から血を吐きだした男はまだ生きている。
男はマシンガンで私を撃とうとフルフルと震える手で銃口を私に向けようとした。

すかさず男の頭に銃を当て付けて、もう一発撃てば男はパタリと倒れた。

そして私は倒れた男からマシンガンを奪う。
さっきの男が最後の一人だったのか、ここ一帯の反逆者を倒し終わり一息吐けば千鶴が形相を変える。


「!?名前ちゃん!!一棟の屋上に!」






「え?…………!?」



千鶴に言われ一棟の屋上を見上げれば、そこにいたのは







「……沖田…………くん?」


茶色の髪が風に揺れて、一本の刀を持っていた彼。
返り血を浴びたらしく刀にも制服にも血がついていた。


沖田君の他にも、藤堂君、斎藤君、原田先輩、永倉先輩、土方先輩が目に入る。




「っ!?」
沖田君は、まるで私の呟きが聞こえたかのよう二棟の二階にいる私と千鶴に目を向けた。



それに気付いたのか、続いて他の五人もこちらを見る。
土方先輩は千鶴を見て驚き、藤堂君は私を見て驚いた。永倉先輩と原田先輩は驚く気配はなく、斎藤君は辺りを気にしている。



美形軍団と称された人達が集まればやはり迫力あるけれど、私は沖田君から目が離せなかった。
もしかしたら千鶴を見ているのかもしれない、そう思ったけれど目を離せない。





「……っ!土方先輩…!」

横で千鶴の声がする。


土方先輩に離れた場所ではあるけれど生きていたことが知れて嬉しいのだろう…。
私も沖田君が生きていることに喜びが溢れる。
剣道で全国大会にまで行って優勝したとは聞いていたし、きっと大丈夫…と自分に言い聞かせてはいたものの、やはり不安があった。







私が沖田君を見ながら考えていれば、沖田君は微笑み口パクで何かを呟いた。

たぶん、「またね」って言ったんだと思う。



そして彼らは私たちに背を向け去っていった。





__________________________________




「みんな、準備はいい?」


「大丈夫だぜー」
「おぅ、新八ー調子のって怪我すんじゃねぇぞ?」
「うっせぇんだよ!左之!!」
「………………副長、来たようです。」
「だからその呼び方はやめろって………」

小さい頃に近藤さんの稽古場で会って以来、六人で過ごしてきた。
今更他の奴らと戯れたりしても楽しくないしね。
みんなも同じみたいだし。


「……てめぇら美形軍団の所為で俺達は!!俺達は…!」


ざっと見て約十一人の男たちは怒りに耐えているように見えた。



「ふーん、成る程ね。君らが惚れた女の子達はみんな僕らの誰かに惚れてたってこと?」

僕の発言によって男たちは一層怒りを露わにする。

隣で土方さんの溜め息と馬鹿とか聞こえたがこの際無視だ。



「…っ!!死ねぇぇぇえ!!!!」

それを合図に戦闘が始まる。





刀を振るい次々と敵を倒していく。
何とも言えない懐かしさが体を疼かせる。
昔もこうやって戦っていたからかな?



「…………死ね、」
ぼそりと刀を刺した状態で男に言えば、悔しそうに倒れ込んだ。



太陽の光により血は光り輝き、それを綺麗だと思う自分がいた。



「総司、お前返り血浴びすぎだぞ!!」
「……そう?新八さんよりはマシじゃない?」
「総司っ!!てめぇ!!!」


みんな終わったらしく、人を殺した後だというのに僕と新八さんのやり取りを見て大いに笑う。




「…ん?」
新八さんをからかっていれば何やら後ろから視線を感じる………。
屋上にいるため目立つというのは分かっているが、見なければならない…………そんな気がした。



振り向けば二棟がある。
屋上、三階と見ても視線の主は見つからず次に二階を見た。


「!?」


そこには銃を持ったクラスメートである名字ちゃんが僕を見ていた。
黒い髪が風に靡き、真っ直ぐな瞳は揺らぐことはない。
僕と名字ちゃんだけ、時間が止まった…………気がした。



「総司?どうしたんだ?」
僕に釣られるように五人が二棟の二階を見る。
土方さんは千鶴ちゃんを見て驚く。

平助も名字ちゃんを見て驚き、左之さんに新八さんは興味津々に僕らを見て、斎藤君は他の棟を観察しだす。


「千鶴……と確かあれは…」

「あぁ、名字名前だよ。総司と俺のクラスメート。」


左之さんの疑問を平助が解決していた。
平助はたぶんまだ全部を思い出せてはいないと思う。
僕たちのことはきちんと覚えているのに名字ちゃんのことだけ記憶がかけていた。


「……千鶴…………」
土方さんは愛おしそうに千鶴ちゃんを見る。



「………土方さん、惚気は気持ち悪いから会いたいならさっさと会いにいけばいいじゃないですか。
早く迎えに行かなくちゃ、殺されますよ?」


「……総司………いい度胸してるじゃねぇか。
千鶴はんな柔な女じゃ……」
「へー」


名字名前、クラスでも大人しく、目立たず平凡系の女の子。
だけど笑った顔や、からかった時の表情は可愛くてお菓子作りが上手。



「……やっぱり、昔と変わらないね………」


聞こえるか聞こえないかの声で言う。
まだ僕のことをじっと見てて、口元が無意識に綻ぶ。



「………なるほどな、また総司のコレか?」

左之さんが右手の小指を立てて僕に見せた。


「な!!左之さん何言ってんのさ!」

普通そこは僕が焦るはずなのに平助が勝手に焦り出す。
また、ね。
本当にまたそうなればいいけれどあの子、僕の子と覚えてないし。


「んだよ、どんな別嬪さんかと思ったけど普通じゃねぇか?」
「んなことねぇよ!!新八つぁん女見る目な…………っ…」


「ほーまさか平助がね〜……」
左之さんと新八さんがニヤニヤ笑いながら平助を見る。
顔が真っ赤になって言葉が出なくなる平助、けど間違ったことは言ってない。


とりあえず新八さんは殺したいな。
あれ?でも新八さんも覚えてない…いや、会ってない、の間違いかな。


でも、まさか平助がまた名字ちゃんを好きとはねー……………渡すつもりはないけど。


僕はみんなに気付かれないように隙を見て口パクでまたね、と伝える。
伝わったかは分からないけど、今度はこんな遠くからじゃなくて近くで会いたいかな。









ね、名字ちゃん?



遠くからじゃ伝えきれない


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