※某忍者の卵リメイク作品。元々はネオニュー→三郎、遊矢→兵助 相手は最終的にネオニュー。 ※リメイクしてみようと思ったけど旦那(兵助)のキャラが強すぎて遊戯王で置き換えられるキャラがいない→何とか遊矢ならいけるかな、と考えたところでネオニュー大好きな私がネオニューを浮気キャラにさせるのが大変心苦しかった。 ※続編は個人的にあんまり納得していない上にこの話の最後をぶっ飛ばす内容なのでリメイクしない。綺麗な感じで終わらせたい…。 ※全体的に偽物臭い。そしてカードとか関係ないただの現パロ。 ※いつもより大分インモラルな感じです。え、いつもと変わらないって?
1.
彼氏のシンゴが随分と前から浮気を繰り返していることは知っていた。知っていたけど、私も似たような立場だったので、それをシンゴに伝えることもなければ咎めず、何も知らない振りをして過ごしてきた。浮気に対する怒りとか悲しみは自分のことを棚上げすることになるのでしない。私は中々寛容深いのだ。
けれど、さすがにこればっかりはしょうがない。
仕事から帰って来て玄関を開けたら知らない女の靴があった。すぐ隣には無造作に脱ぎ捨てられたシンゴの靴があって、一緒に住んでいるのだからこれはまぁ当たり前のことなんだけど、奥の寝室から女の甲高い喘ぎ声が聞こえてきた時には、さすがの私もこれ以上前に進むことはできなかった。 浮気、は知ってたけど何でよりによってうちで…。せめてそれ位のマナーは守ろうよと、今まで溜め込んでいた深い息を吐き出し、わざわざ修羅場に突っ込んで行く気もない私はもう一度外に出た。 どこにいこうかな。スマホのアドレス帳を引っ張り出し、既に目星を付けていた相手を電話で呼び出した。
「ごめん、待ったか?」 「ううん、こっちこそ突然ごめん」 「もう飯食った?」 「まだ」 「じゃぁ適当にどっか食べてから行こう」
榊は、唐突に呼び出したにも関わらず、文句の一つも零さず迎えに来てくれた。私は助手席に腰を下ろし榊とどこに行こうか話す。遠くに行くのも面倒なので、結局近場のファミレスで夕飯を済ませ差し障りのない話をした。シンゴとの話を切り出したのは、榊の部屋に着いてからだ。
「それで、今回は何があったんだ?」 「…シンゴが浮気してた。それも、私たちの家で」 「それは初めてだな…」 「浮気するのでもさぁ、せめてばれないようにして欲しいっていうか…マナーは守るべきじゃない? と私は思うんだけど」 「そうだな」 「何だろう、あれは暗にもう別れようって意志表示なのかしら」 「さぁ」 「もうあのベッドで寝たくない…」 「わらしはそんなこと気にしないと思ってた」 「仕事とプライベートは別!」
榊が缶ビールのプルタブを開けながら笑っていた。私が普通の女の子みたいな発言をしているのがよっぽどおかしかったのだろうか。
私と榊はシンゴ同様高校時代の同級生であり、私が働いているソープのお客さんで(もちろん私の指名客)そして良き相談相手、時には浮気相手ともなるような、そんな関係だった。私がシンゴと付き合う前からソープで働いていることをシンゴ本人には言っていないが、榊には何となく話していた。榊遊矢という人間は特に口が固く、あれこれと人に言い触らすような人ではないからだ。それに加えて、私とシンゴ共通の友人である榊は、私にとってもとても居心地の良い存在だったのである。 榊は私が働いている店を教えると、数日後には店を訪れて私を指名してくれた。風俗店に来るのは初めてだったらしく、物珍しそうに室内を見回した後、「どこまでするんだ?」と聞いたから私はおかしくて笑ってしまった。ソープは本番が有りの風俗店なんだけど、榊はそれすら知らなかったようである。普段、無駄な知識を色々と溜め込んでいる榊も、この分野ばっかりは疎かった。 私が「どこまでも何も、最後までしていいんだよ」と答えると、彼はそっかと頷いて遠慮なく事を済ませ、一時の快楽を味わった。大学二年の、夏のことだった。
「今日は泊まってく?」
既に何缶目かわからないビールを煽りながら、榊は私を見た。
「終電もなくて酔っ払いの榊には運転無理じゃん」 「タクシー呼べば帰れると思うけど」 「いや、いいよ泊めて。シンゴにはさっき今日は帰らないって送っちゃったから」 「沢渡は何て?」 「わかった、って一言。多分、あの女も帰らないだろうね」
だから今更私がタクシーを呼んで帰ったところで、居場所なんてないのだ。不用意にあの場所に突っ込んだら修羅場と化す。
「わらしは、いつ沢渡に言うの?」 「ソープで働いてること?」 「ん」 「さぁ…あぁ見えてシンゴは、自分がするのは良くてもされるととことん落ち込むタイプだから、ずっと言えないかも」 「じゃぁ、今俺のうちにいるってことを知っただけで、発狂するかもな」 「あながち間違いじゃないかも」
ふっと噴き出し、榊と二人で笑う。それが冗談ではなく本当に起こりそうな気がしたからだ。 榊が空になったビール缶を起き、私の肩を抱き寄せた。そのまま唇が重なり押し倒される。クーラーで冷やされたフローリングの板は、アルコールで火照った体を冷やすにはちょうどいい。できればベッドの方が背中が痛くなくて良かったが、目の前の相手は許してくれそうにはない。離れた唇を辿って視線を上げれば、私の体を触っている榊と目が合った。
「わらしさ」 「ん…、?」 「沢渡の浮気なくさせたいなら、一度とことん尽くしてやれば?」 「それ…どーゆー意味?」 「お前、店にいる時はいやってくらい尽くしてくれるのに、それ以外はてんでされっぱなしだろ」 「つまりマグロと言いたいの?」 「そう。俺だけじゃなく、どうせ沢渡にも何もしてやってないと思うから…してみれば?」 「してみればって、そう簡単に…あっ、やぁ…」
言いたいことだけ言った榊は、満足したように次の行程へと移った。私は榊にされるがまま、足を開いて体を許し、榊を受け入れる。お金を貰って彼に尽くしている時とは正反対。私は何もしない。シンゴにも同じ。何かをしてやったことはない。
「わらし、生でシテいい?」
興奮気味の榊がそう聞いてきたから、私は虚ろな目でそれに応えた。
「でも、外に出してね」 「わかってる」
それでも中に出していいと思えるのは、やっぱりシンゴだけだから。私は与えられる快楽に酔いしれながら、意識を手放した。
2.
榊が私の指名客になってくれてからというもの、私と榊との関係はずっと続いた。
榊は月に1,2回のペースで店を訪れては私を指名した。私の時間が取れるまで何時間かかろうと、他の女の子を指名することはなく、私だけを選び続けてくれた。そんな榊は元々私の友人であるから、仕事以外でも普通に会うし、酔った勢いとか場の雰囲気に流されて、店外でも関係を持ってしまった。だけど私たちの関係はいつまで経っても変わらず、店外で関係を持った後でも榊はちゃんと店に来てくれた。
そういった意味で私は榊を凄く信頼してて、彼には何を話しても抵抗はないし、相談をすれば的確なアドバイスをくれる彼に親友以上の何かを抱いていた。それが榊に対する恋心かと言えば少し違ったけれど、何度も体を重ねている分、私だって榊のことを知っているつもりだった。 ある日私がシンゴに告白されて、どうしようかと榊に相談したら、彼は予想通りの言葉をくれたのである。「わらしの好きにすればいいよ。でも、後悔するような結論だけはだすなよ」と。榊は少なからず私に好意を寄せていてくれたけど、それはどちらかというと兄が妹を見るような温かい眼差しだった。兄が妹に手を出すなんて本当はおかしいけど。
だから私は一人悩みに悩んで、最終的にはシンゴの気持ちを受け入れることにした。シンゴはいい奴だし高校の時から何かとつるむことが多く、仲も悪くはなかった。 けれどソープで働いていることは中々言い出せなくて、困っていた私に榊は「無理に言わなくてもいいんじゃないか」と言ってくれた。その言葉に私は背中を押され、ある意味開き直りともいえるような何も知りませんという態度を貫き、現在ではシンゴとの同棲にまで至る。
シンゴは未だ、私がソープで働いていることを知らない。知ったらどんな顔をするだろう。榊の言葉じゃないけど、間違いなく発狂はしそうである。 一緒に暮らすようになってわかったけど、シンゴは淋しがり屋で何でも私のことに関知したがる。側にいて甘やかしてやらないとダメなのだ。それなのにソープで働いているのがばれていないというのだから、どれだけシンゴは鈍感で私は悪い女なのだろうと常々思う。本当に気付いていないのか疑心暗鬼になったこともしばしば。その度に榊の「大丈夫だから」で安心し、仕事に精を出していた。
…もしかしたらそのせいで私はシンゴに寂しい思いをさせてたのかもしれない。浮気するのだって、私の代わりで寂しさを紛らわせようとしたり、あるいは、ないとは思うけど昨日の浮気はそれを気付かせようと、わざとうちに連れ込んだのかもしれない。 私はシンゴじゃないからシンゴの真意はわからないけど、シンゴは昔からよく人の気を引く為にひねくれた行為に出ることがあった。だから今回のことももしかしたら。
「…シンゴ、こっちに来て」 「何々?」 「いいから早く」
私はシーツを取り替えたベッドの前にシンゴを呼び付け、怪訝そうな顔をしている彼の目の前で服を脱ぎ始めた。
3.
突然服を脱ぎ出した私に、シンゴは驚いて声を上げた。
「え、わらし? どーしたんだよ」 「………」 「おいわらし?…って、」
下着姿にまでなったところで、私はうろたえるシンゴの首に腕を絡めてキスをした。最初は驚いていたシンゴだけど、舌を擦り合わせて何度も求めるとそれに応じるように私の体を抱きしめた。 互いにキスに夢中になりながらシンゴのシャツに手を伸ばしてボタンを一つずつ外していく。その時にはシンゴはすっかりその気になって、私の背中や尻に手を這わせてなぞった。
「っ…わらしが誘ってくるなんて、初めてじゃん」 「まぁね」 「一体どんな心境だ?」 「それは教えない」
まさか浮気を止めさせる為に私の体の良さを教えこもうだなんて、結果的に後で言ったとしても今ここではネタばらしはしない。 あっという間に下着姿になったシンゴの股間を触るとそこはもう熱を持っていた。キスをしながら手でぐりぐりと弄る。シンゴの口から低い声が絞り出された。
「っ、わらし今日ほんとに積極的…」
私の行動には特に嫌がった様子もなく、むしろ嬉しそうに笑いながらシンゴは言った。良かった。まぁ思い返せば今までが受け身過ぎたのだ。シンゴにはフェラだってしてあげた記憶もなければ、まともに彼の陰部に触ったのはそういえば今が初めてなのではないかと思う。 何となく榊の言っていた意味を理解して、そりゃぁ浮気もしたくなるわなと私は悟った。悟ったついでに、シンゴをベッドまで引っ張って押し倒す。今日は私が上。初めて見下ろしたシンゴの顔は、高揚していつもとは大分違っていた。
「シンゴ、私のこと好き?」 「突然どうしたんだよ…」 「ねぇ、答えてよ。好き?」 「…好きだよ」 「良かった。私もシンゴのこと好き」
これまた私にしては珍しく自分の気持ちを素直に表し、シンゴの体にキスを落とした。上から順に首筋、胸、腹、へそと。 シンゴは気持ち良さそうな声を上げて私の胸へと手を伸ばした。カップをずらし、柔らかなそこへと指を埋める。私の体が段々と下に行くと届かなくなって、代わりに優しく頭を撫でた。 シンゴの下着を引き下ろした私は、そこに現れた彼の一物を前にごくりと唾を飲む。これからが腕の見せどころ。 シンゴは今まで私にフェラをしてもらったことはなかったから、半分期待半分不安そうな顔で私を見ていた。そんな顔しないでいいのに。これでもそれなり場数を踏んできているんだから、少なくとも昨日の女よりは上手いはず。すぐに気持ち良くさせてあげるよ。
「ん…」 「っ、」 「はむ…んっ…んんぅ、ちゅばっ」
ちろちろ、なんてそんな可愛い舐め方なんてしない。ただ性急に快感を与え本能を刺激するような動作で頂点に導く。私にしてみれば慣れた作業でも、シンゴにするのは初めてだった。 案の定シンゴは男のくせに何度も快感に堪える声を漏らし、私が喉の奥までくわえこんだところで射精した。口いっぱいにしょっぱいとも苦いとも言えぬただ気持ち悪い味が広がって、いつもなら吐き出してしまうそれを、今日ばかりは全部飲み込んだ。 少しだけ息を乱したシンゴと目が合うと、快感に入り交じって何とも不安そうな色を見せていた。恐らく、今まで何もしなかった私がどうして急にこんなことをし始めたのか、しかもどうしてこんなに上手いのかわからなくて戸惑っているのだろう。 でもね、それを教えるつもりもなければ知る必要もないんだよ。シンゴはただ、私の与える快感に酔いしれて、私の体から離れられなくなければいい。
その後はシンゴが回復するまでしばらく全身にキスをしたり後の穴に指を突っ込んだりして待って、完全に勃ち上がったところで私はシンゴを自分の中に埋めた。シンゴはずっと苦しそうな顔をしている。突然こんな刺激は強かっただろうか。色々と。
「シンゴ、気持ちいい?」 「あぁ…、」 「じゃぁもっと良くしてあげる。きっとシンゴ、すぐイッちゃうよ」 「わらし、ゴム付けてない…」 「いいよ、中で出して」 「でもお前、今日は危険日なはずじゃ…」 「あぁ、そのことなんだけど、ごめんね? 私ピル飲んでるから、基本的にいつ出されても平気なの」 「な…」 「今まで黙っててごめん。だから今日はいっぱい出していいよ」 「そんな…、っ!」
シンゴの言葉をこれ以上紡がさせず、私は腰を揺らして動いた。騎乗位は少し疲れるけど慣れていれるからきっと最後まではできるはず。 シンゴの上で腰を上下しつつ、私はシンゴの好きな声を上げて、中をわざと締めた。シンゴが苦痛にも似た声を漏らす。そのまま何度も律動を繰り返していれば、シンゴが下から突き上げる分も加わって、シンゴは呆気なく果てた。中にじんわりと熱が広がる。 繋がったまま上体をシンゴの体に重ねると、啄むようなキスを繰り返した後に私はシンゴの耳に囁く。
「ねぇ、昨日の子と私、どっちが良かった?」
途端、シンゴの顔からは血の気が引いていった。
4.
「で、結局どうなったんだ?」 「シンゴが今までの浮気を謝って、二度としないって約束してくれた」 「お前の技術の高さに関しては?」 「そこはまぁ、適当にごまかしておいたよ。今まで何もしなかったのは、シンゴにそう思われたくなかったからって言って」 「ふぅん?」 「あと、毎回そんなプレイを要求されるのも嫌だったからね。男って、してくれるとわかるとすぐ要求するんだもの」 「そんなものか」 「まぁ榊はいいやつだから、そこらへんからは外れるけど」 「ん」 「…とにかく、浮気の話はこれで決着ついた。もう悩んだりすることはないわ」
私は榊が出してくれたコーヒーを飲み干し、ふっと息を吐いた。
…今まで散々悩んだのが阿呆らしい程、呆気ない結末だった。淋しがり屋で甘えたがりのシンゴは結局、私という存在がいないとダメで、体を使って縛り付ける以前に、私と別れたらきっと何もできない男なのだと思った。 社会的にはそれこそ、まともな地位に付けるだろうことが容易に想像できるのに、内面は随分な甘ったれなんだから。私に依存していると言っても過言じゃない。かく言う私だって、知らないところでシンゴに依存してそうだけど。
榊は空になったグラスに新しいコーヒーを注ぎながら、穏やかな笑みを浮かべていた。
「何にせよ、良かったな。後はわらしが店を上がって、俺との関係を解消するだけだ」 「………」 「借金の返済はとっくに済んでるんだろ?」 「それはまぁ…」 「あそこは居心地が良くて中々抜け出したくないだろうけど、沢渡との将来を考えたらいつまでも居座るのは良くない」 「それは…わかってるよ」 「『性病にかかって声が出なくなった!助けて!』なんて言われて、俺が面倒見る必要もなくなるしな」 「その節は色々とご迷惑をおかけしました…」 「ん。だから早く戻って来なよ。わらしの業種なら、就活まだ間に合うだろ?」 「うん…」
榊の言葉に頷き、私は冷たいグラスを両手に持つ。 一年の時、後先考えず買い物に走った私は、学生では返すのに困難な額の借金を背負い、風俗の世界に足を踏み入れた。何もかもが初めての世界で、男性経験は数える程しかなかった私は、相手が病気を持っているかどうかの判断もまだまだ甘く、結果フェラで喉に性病を患ったことがある。本番中はちゃんとゴムを着用してたから、幸いにも陰部に移ることはなかったんだけど。
とにかくその時にも私は榊に多大なる迷惑をかけてたし、病院に行くのも付き添ってもらい、完治するまで面倒をみてもらった。シンゴと付き合い出したのはそれより後だ。 そういうこともあったから、私は余計に仕事以外ではずっと受け身でいた。下手にフェラなんかして、潜伏していた病気をシンゴに移してしまわないか不安だったのだ。 榊とは、店では尽くしている分それ以外では好きにさせればいいか、と思っていたところがある。榊は何だかんだ言って、押し倒されるより押し倒す方が好きなのだ。だからと言って、彼氏であるシンゴ相手にもずっと押し倒されっぱなしだったのは、今思うと愚か以外の何物でもなかったけれど。
「気付けばもう二年かぁ…」
借金は去年の内に支払い終わった。それなのに上がれないというのは、やはりそこが経済的にも精神的にも居心地がいいせいだろう。惰性、とも人は言う。
「わらしには言ってなかったけどさ」 「ん?」 「俺、彼女ができたんだ」 「…嘘!? いつ!?」 「一ヶ月くらい前」 「一ヶ月って…榊それ完璧浮気じゃん! あの夜とか、私榊の部屋で…」
さぁ、と顔が青くなるのがわかった。シンゴが私たちの家で浮気をしていた事実で私がどれだけ頭に来ていたか、榊が知らない訳がない。散々愚痴ったし。それと全く同じことを、私は顔も知らない榊の彼女に対してしてしまっていたのだ。
「うん、だからさ、わらし」 「…うん」 「俺はこれからはわらしのことを助けてやれなくなるし、店にも行けない。そんな中でわらしがこの先も今の仕事を続けていけば、きっとまた何かあるだろ。でも、俺はもう助けてやれないから」 「……うん、」 「もう上がりな。わらしにはちゃんと愛してくれる奴がいるだろ。沢渡の気持ち、これ以上裏切るな」 「わか、った…」 「ん。それでいい」
榊は私の好きな優しい表情でふわりと笑い、頭を撫でた。そこからキスやそれ以上に発展することはもうない。お互い好きな人はちゃんといるし、その人を大切にしたいと思うから、私と榊の関係はもうおしまい。 楽しかったよ。心地良かったよ。これが一体どんなものなのかは言葉に表しにくいけど、幸せだったのは確か。 私と榊の関係を表す言葉こそ、依存だったのだろう。それが今やっと理解できた。
賃貸マンションの鍵を開け、中に入る。シンゴはテレビを見ていたけど、私が帰ってきたのに気付くと、笑顔で迎え入れてくれた。
「おかえり」 「ただいま。…シンゴ、」 「ん?」 「好きだよ」
シンゴの顔を見ていたら自然と出て来た言葉。シンゴは一瞬キョトンとした後、すぐに笑って私を抱き寄せた。
「俺も好き」
耳に響いた声が心地良くて、榊の最後の表情が少しだけ頭を過ぎったけど、それを打ち払うようにシンゴの服を掴んだ。シンゴは私を愛し愛させてくれる人。この人以外に私が愛せる人はいない。 少しだけ顔を上げて、キスをした。胸の中に甘い疼きが広がり、もっとずっと近くに在りたいと思った。私が、シンゴの近くに。
そう思えば、幸せとは案外近くにあるものである。
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