独善主義者の美徳

※お題はレイラの初恋様よりお借りしています。
※了見とわらしが夫婦。からの同意NTR(遊作×わらし)
※デリケートな案件を含みます。
※了見と遊作は友人のような知り合いのような微妙な関係(書いた人が2期をほとんど見てないので二人の関係がどんな感じに変化しているのかよくわかっていません)





まぁゆっくりしてくれ、と出された紅茶を前に遊作は微妙な警戒心を解き切れなかった。場所は鴻上邸。相手は了見だ。一体何の用があって自分を呼びつけたのか、警戒しないという方が無理な話だった。
いつものようにCafé Nagiで草薙の手伝いをしていたところに現れた了見。彼はその場で遊作を自宅に招いた。「個人的な話」と前置きをされ、付いてくると言った草薙を留まらせてしまったが、今思えばこれは失敗だったかもしれない。デュエルディスクに寄生しているAiには最初から同席が許されなかった。彼は今草薙とともに遊作の帰りを待っている。


「こうして二人で改まって話をするのは初めてだな。お前の周りにはいつも何かしらがいる」

優雅にお茶を口に運びながら了見が言った。誰か、と限定しなかったのは、人工生命体のAiの存在があるからか。

「私の方も、常に仲間が傍にいるが……今日は遠慮してもらった。正真正銘の二人きりだ」
「…そうまでして、何の話をするつもりだ?」
「そう警戒する必要はない。本当に個人的な話だ」
「……」
「そうだな…、おまえはわらしに会ったことがあったな? 私の妻に」

そう言って始まった了見の話は、彼の幼馴染であり最近結婚をしたというわらしのことに傾倒していった。二人の馴れ初めやデートの話、ちょっとした喧嘩やサプライズなど、結婚に至るまでの道のりを淡々と語る。その中で了見はいかに妻のことを愛しており、彼女の為ならば何でもすると言った口ぶりだったので、遊作は内心苛々していた。了見の意図が全く読めないのである。
出された紅茶も粗方飲みつくした後、遊作はついに切り出した。

「お前の惚気話に付き合うつもりはない。帰る」

しかし席を立ったところで、ぐらりと視界が揺れた。一体何が、と戸惑っていると、テーブルの向こうで変わらぬ微笑を浮かべている了見が視界に映った。

「そう慌てる必要もないだろう」

かたん、と了見も席を立つ。やけに鈍くなった思考で、遊作は了見の罠に嵌められたことに気付いた。警戒していたはずなのに。

「具合が悪そうだな。少し休んでいけ」
「お前…、紅茶に何を…っ」
「なに、少しばかり気持ちの枷を外す成分を混ぜただけだ」
「気持ちの枷を外す…?」
「あぁ、立っているのも辛そうだな。掴まれ」

了見は遊作の肩を抱えるとリビングから廊下に出た。遊作が呼気を乱しながらどこに連れて行くつもりか問い質しても、了見は答えない。足取りも覚束なくなった遊作の体を支えながら、彼は尚も愛する妻の話を振る。

「先程の話から分かるように、私は妻を心から愛している。妻も同じだ。私のことを深く愛してくれている」
「………」
「互いに深く愛し合った男女が行き着く先は一つだ。二人の愛の結晶が欲しい……すなわち、子どもだ。わらしは私の子どもを欲し、また私もそれに応じようとした。だが…」

そこで了見は一度言葉を切った。ちらり、と遊作の様子を窺う。遊作はやや上気した表情で了見を睨み付けていた。

「……それが、俺をこんな状態にしたのと一体何の関係がある…っ」
「…残念ながら、私には妻に子を授ける能力がない」
「!」
「妻はこの事実を知らない。子どもを欲しがっている彼女に伝えるのはあまりに酷だと思ってね。何も知らない妻は今でも毎日子どもができることを夢見て様々な努力を重ねている。そんな妻の為に、私ができることは限られているだろう?」
「………まさか、」

そこで遊作は了見が言わんとしていることに気付いてしまった。紅茶に混ぜられた薬物。体の自由が利かず、頭も朦朧として冷静な判断ができない。それ以上に、体の芯が先程からやけに熱い。意識していないのに中心が昂っている。

「俺に……お前の代わりをさせるつもりか…ッ」

辛うじて悪態をつくものの、抵抗らしい抵抗ができないのがもどかしい。了見は何やらおかしそうに笑っていた。

「私は妻を愛している。そしてお前なら、私も子どもの父として受け入れられる」

そうして連れて来られたのは夫婦の寝室で、中央に鎮座したベッドにはわらしが薄いベビードール一枚の姿で眠っていた。これから起こることも知らずに安らかな寝顔である。
その光景を目にした遊作の頭は一気に沸騰した。

「わらしには、お前が私だと認識するよう暗示をかけてある。存分に子種を注いでやってくれ」
「馬鹿なことを…!」
「ちなみにこの部屋に監視カメラ等はないから安心して良い。最低限のプライバシーは考慮する」
「そういう問題じゃ…っないだろう!…」

了見は抗議する遊作をわらしの眠るベッドに軽く投げ入れると、それ以上の会話は無く部屋を出て行った。寝室と廊下を隔てるドアはデジタル化が施され、Aiのいない遊作には中からロックを破る術はない。

「っ、開けろ! 全てがお前の思い通りになると思ったら、大間違いだぞ…!」

遊作は重い体を引きずってドアを物理的に破壊しようと試みるが、力を削がれた肉体では大した攻撃にもならず。そうこうしているうちに、すぐ傍の騒がしさにベッドの上で身じろぐ音がした。
ハッと慌てて振り向けば、白いベビードールに身を包んだわらしが、眠そうな瞼を擦りながら体を起こしていた。

「ん…。了見…? どうしたの? そんなに大声あげて」
「違うッ、俺は了見じゃない…」
「何言ってるの?」

そこで遊作の姿を見たわらしは、一瞬びっくりした後、すぐにふにゃりとした笑顔を向けた。

「わ、それデンシティ・ハイスクールの制服だよね? 何で着てるの? もしかして、前に私が了見の制服姿を見たいって言ったの、覚えててくれたの?」
「っ、違…」

体の自由が利かない遊作とは違い、わらしはベッドから飛び上がると一目散に飛びついた。「!」驚く遊作を余所に、嬉しそうに体を密着させる。遊作のことを了見だと信じて疑っていない様子である。

「了見すっごくかっこいい…」

うっとりとした口調で甘えた仕草をする。触れた体はどこもかしこも柔らかい。わらしの体から女性特有の何とも言えない甘い香りがしてきて、遊作は思わずその体を突き飛ばした。

「離れろ…!」
「きゃっ!」

薬のせいで力加減ができず、わらしは床に倒れ込んでしまった。さすがにやり過ぎだ。
愛する夫に突き飛ばされたわらしは混乱しているようで、目を白黒させながら「了見…?」と呟いている。遊作は慌ててわらしの前にしゃがみ込んだ。

「っ、悪い、こんなことをするつもりじゃなかった…」
「…今日の了見、何か変だよね。わたし、何かした?」
「違う、そうじゃない」
「でも、こんなこと今までに一度もなかった…」

戸惑っているわらしの腕を掴んで床に座らせてやる。彼女は恐る恐る遊作の顔色を窺っているが、そこにはまた拒絶されるのではないかという恐怖が滲んでいた。
遊作は改めて謝罪する。

「…本当に悪かった」
「……、怒ってないの?」
「あぁ」
「…、それじゃ、キスして?」
「え?」
「ごめんねのキス…いつもみたいに。してくれたら、私も許すから」

思ってもみないわらしの提案に、今度は遊作の方が狼狽する番だった。キス。夫婦の間では当たり前のことかもしれないが、今わらしの前にいるのは夫である了見ではないのだ。わらしの目には愛する夫に見えているかもしれないが、そこにいるのは正真正銘の遊作である。
わらしから愛の行為を要求されてもそれに応えることはできない。

「……悪いが、それはできない」

わらしを傷付けないようにやんわりと伝えるが、彼女は増々落ち込むだけだった。「どうして…、」再び拒絶されたショックで俯いてしまう。
「やっぱり、了見怒ってる…?」落ち込んだ声で問われる。「怒っている訳じゃない…、」「じゃぁ何で…」泣きそうな声である。その儚げな様子と相反する色香に惑わされて、遊作も限界だった。

「わかった」

罪悪感に苛まれながらも、ついにその唇に自身を重ねた。

「んっ…」

柔らかい感触と微かなリップ音。恋人などいたことのない遊作には未知の感覚である。初体験の相手がまさか了見の妻になろうとは、考えたこともなかった。そもそも候補などいない。
一度のキスで事を終えようとしていた遊作だったが、その考えとは裏腹に急激に体が引き寄せられる。目を開ければ、わらしの腕が首に絡まっていた。

「っ、何を…」

唇が離れた瞬間に上げた抗議はすぐにまた飲み込まれる。了見から与えられたキスを受け入れたわらしは、さらにその先を求めて縋った。
密着する体。薬のせいで簡単に反応した男根をわらしの手がズボンの上から擦る。「!」慌てて唇を離すが、わらしの手は止まらなかった。

「やめ…、」
「了見、すごい。もうこんなにして…」

柔らかい掌が遊作の中心を上下する。緩い刺激なのに簡単に息が乱れてしまう。頭では離れなければならないと分かっているが、簡単には突き放せない。肉体の快楽が普段は冷静な思考力を奪った。

「待ってて、すぐ楽にしてあげるから…」

わらしはズボンのファスナーを下ろすと、下着の隙間から勃起した陰茎を取り出し躊躇いもなく口の中に含んだ。「っ、あ……」生まれて初めての刺激に遊作の口からはため息が漏れる。温かく湿ったわらしの口は、想像以上に気持ちが良かった。

そのまま優しく何度も愛撫されていると限界が近づく。それを感じ取ったわらしが口を離し、ベッドの上に遊作を誘った。乱れるサテン生地のベビードール。仰向けに寝転がり、上に遊作を誘導する。

「お願い、それは中に出して。私に了見の子をちょいだい?」
「っ…」

もはや本能による衝動を止められず、遊作はわらしの上に跨った。性急に下着を剥いで前戯も無しに屹立した雄を中に押し込む。

「んぁぁ…っ!」
「く、は……」

待ち望んでいたものを与えられ、わらしは悲鳴にも似た歓喜の声を上げる。だがそれも束の間、遊作によってすぐに律動が開始される。

「ひぁっ、あ……っ…あん、…あっ……あっ…あっ…あ…っ」

パンッパンッと連続して中を穿たれる。わらしの中はぬるぬるして気持ちいい。童貞の遊作には、わらしを気遣う余裕も満足させるという意思も持ち合わせていなかった。ただ己の本能に従うがまま、目の前の雌を孕ませるべく腰を振るうだけ。心の底で了見の思い通りになっていることを怨みながら、それでも腰を止めることはできなかった。

「あぁっ、ぁん、あっ……りょーけ…好きぃ…っ…あっ、…あっ…!」
「はぁっ、くっ……ん、…っ…、は…っ」

わらしの口からは夫への愛の言葉がひっきりなしに溢れ出る。彼女に求められているのは了見であって遊作ではない。けれど遊作には既にそんなことは関係なかった。快楽を求めてさらに奥を目指す。
自分勝手な腰使いで散々わらしの中を犯していれば、先に口で高められていたこともあって限界はすぐに訪れた。きゅっと締まる膣壁。予告も無しに種を注ぎ込んだ。

「っ、う……」

出し切っても尚硬度を保ち続けているのは若さゆえか、薬のせいか。どのみち遊作には自分を押しとどめる術がなかった。そしてわらしにもまた。

「あ…っ…あぁぁん……、りょ…けんの……出てる…っ…、うれし……これであかちゃん、できる…っ」

嬉しそうな声を上げ、遊作の体に抱き着く。腰に足を巻き付け、逃がさないとばかりに中を締めて催促をした。それに応えるようにして遊作も再びわらしの中を犯す。二人を止めるものは何もない。

結局、わらしがやめてと言うまで遊作はわらしの子宮に何度も己の精を放った。二人が繋がっていた場所からは白い液体が止めどなく溢れている。
どろどろになりながら見下ろしたわらしは、身も心も満たされて恍惚とした表情を浮かべていた。







後日、Café Nagiとは別の場所で、遊作は了見からわらしが無事に妊娠したことを告げられた。

「お前のおかげで私は父になることができる。感謝している」

子どもの為に妻を差し出した了見は満足そうに見えた。遊作は難しい顔をして正面から了見を糾弾する。

「…随分と身勝手な行為だな。彼女の意思は関係ないのか」
「そんなことはない。彼女は私の子を欲しがっていた。おまえの子種でできた子なら、私の子も同然だ。愛情をもって育てるさ」
「………」

もはやこの件に関して話が通じる相手ではないらしい。遊作は納得がいかないまま、これ以上何かを言うこともなく了見に背を向けた。
そんな遊作に向かって、了見が声を掛ける。

「あと2、3年したらまた子供が欲しくなるかもしれない。その時はまたお願いしよう」

遊作は返事もせずにその場を立ち去った。


END


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