※十代×明日香要素アリ ※執筆当時未公開だったのを発掘したものです。未公開だった理由はどうも続きを書く予定だったようなのですが、現時点では続きは未定です。 尚、素敵なタイトルは恐らくどこかのお題サイト様よりお借りしているものだと思いますが(私にこんな素晴らしいタイトルセンスはありません…)メモが発見出来なかった為どこからお借りしているのか不明です。どなたかご存知の方がいらっしゃいましたら当方までご連絡下されば幸いです。 私が彼の姿を見つけたのは、本当にただの偶然だった―― 学校帰り、私は友人と買い物をしたりしてプラプラと街を歩き回った。 週末とあって、気分は上々。 今週は特に追われている課題もなければ、バイトも休みだったので、正直浮かれていた。 久しぶりに欲しいものを買えたりして、楽しい時間を過ごした。 夕飯はそのまま適当なファミレスに入って外食で済ませ、後は家に帰って寝るだけだー、なんて別れ際に言ったのを覚えている。 友人も笑っていて、調子に乗って三連休すんなよ!なんて言われた。 お互い沢山の紙袋を持ちながら、家路につく。 ふとしたところで、私は冷蔵庫の牛乳が切れていることに気付き、近所のコンビニに寄った。 それがいけなかった。 「ありがとうございましたー」 バイトの掛け声を背に、いつもの牛乳を手に入れた私は、店を出たところでふと足を止めてしまった。 店のすぐ脇に、どこか見覚えのある人がいたから。 二色の茶色い髪に、男にしては細い体、そして人目を引く男前な表情―― 正直、誰、なんて考えるまでもなかった。 彼の名は遊城十代。 私と同じデュエルアカデミアの卒業生で、私の憧れだった人… 卒業してすぐに旅に出たと聞いていたけど。 その彼が、何故こんな場所に。 私は本来ならいるはずもない遊城十代の姿に驚き、数秒もの間じっと彼を見つめていた。 そして、さすがにそれだけ見つめられたら本人に気付かれないはずもなく、遊城十代はある時ふっとこっちを振り向いた。 お互いの視線が交わる。 彼は至極普通の態度で私に話し掛けた。 「あんた、俺に用があるのか?」 「えっ…あ、ごめんなさい、」 「何だ、用無し?にしては俺のこと見てたよな」 「えぇと、まぁ…」 問われて、私は戸惑う。 明るく人気者だった遊城十代とは対照的に、私は地味で目立たなかった。 同じ学園の出身だと説明したところで、きっと彼は名前も知らないだろうから。 そう言われるのが嫌で、告げるのは躊躇われた。 しかし、彼は何を思ったか、黙ってしまった私の方へ近付くと、さらに磨きがかかった表情で誘う。 「なんだ、ひょっとして俺に一目惚れでもしたか?」 「え…?」 「あんた一人暮らしなら、悪いけど今日泊めてくれないか?俺行くとこないんだ」 「は、えぇ?」 「頼むよ、今夜はサービスしてやるからさ」 「さ、サービスって…」 一体何を言い出すんだろう、彼は。 そんな簡単に見ず知らずの女の人(でもないんだけど)に宿泊を頼み込むだなんて… そもそも彼には天上院さんという、オベリスクブルーの女王と呼ばれた、素敵な女性がいたはずだ。 アカデミア時代、彼と天上院さんが一緒にいたところは毎日のように見ていた。 それがあったから、私は自分の淡い恋心を心の奥にしまいこんでいたのだ。 天上院さんは世の中の女性がうらやむ程の、完璧な女性だ。 綺麗で、品があって、気高くて。 それでいてデュエルも強い。 そんな天上院さんが相手では、私には勝ち目どころか、チャンスなんてなかった。 彼女がいなかったところで、影で彼のことを好きな女子はそれこそたくさんいたのだ。 私も所詮、その内の一人に過ぎなかった。 彼と天上院さんは、卒業後も繋がっているという話を誰かから聞いたことがある。 私は疑いもしなかった。 だから今、その天上院さんとの関係を踏みにじって、見ず知らずの女の部屋に押し掛けようとしている遊城十代の態度に、私は戸惑いを隠せない。 学園にいた頃の彼は、明るくて、無邪気で、思いやりのある人だった。 …こんな風に、誰構わず口説いたりはしない。 一体何故、彼はこんなにも荒んでしまったのか。 影から見ていただけの私にはわからない。 遊城十代における矛盾。 そんな言葉が、頭の中にちらついた。 「家はどっちだ?あんた荷物すげーな、ほら持ってやるから貸せよ」 「え、あっ…」 「さ、いこーぜ」 そう言って、彼は私の荷物を半分持ち、腕を引っ張って前を歩き始めた。 私の返答なんて最初から気にしている様子もない。 押しかける気満々だ。 ぐいぐいと引っ張られて、私はどうしたものかと迷った。 強引。 だけど、久しぶりに彼の姿を見れたことは嬉しい。 こうして普通に話して、私の腕に触れている彼の熱にも喜びを感じているのは、事実だ。 けれどだからといって、このままあっさりと彼の『一宿一飯』の恩人になるのは嫌だった。 道を真っ直ぐ進もうとした彼の腕を慌てて引っ張って、私は呼び止める。 「ねぇ、待って!」 彼は一度振り向くと、平然とした顔でどうした?なんて言ってくる。 どうした…じゃない。 聞きたいのは、私の方だ。 どうして今さら、私を知らないあなたが、私の前に現れたりなんかして。 鼻の奥がつんとした。 悲しい。 悔しい。 私だけが彼のことを知っているのがどうしようもなく苦しかった。 彼が私のことを知らないのは当然だけど、許せなかった。 それでも彼は、私の気持ちになんて気付かない。 遊城十代は、自分が傷つくことよりも相手を傷つけることの方が好きな人だから。 私が苦しむのを見たら、きっと喜ぶだろう。 それくらいは知っている。 だったら、好きなだけ傷ついてあげようじゃないの。 今でもあなたを好きな私を、思う存分傷つけるといいわ。 「…私の家、こっちだから」 繋いだ手をきゅっと握り返し、引っ張った私に彼は素直に着いてきた。 そして思い出したように問う。 「そうだ、お前なんて言うんだ?俺は遊城十代」 「私は…明日香」 「あす…え?」 「どうしたの?」 「いや……なんでもない」 彼は一瞬うろたえた。 繋いだ手を少しだけ強く握って、嘘を隠すように笑う。 「明日香って、いい名前だな」 「…十代もね」 笑い返した私に、彼は虚しく表情を張り付けるだけだった。 眩暈と膣外射精 好きなだけ傷つけられてあげる。 だけど、ただでは傷付けられないから。 私はあなたにもそれ相応、傷ついて欲しい。 20090723 決して十代×明日香ではないと言い張る あ、夢主の名前はちゃんとわらしです。十代に名乗った明日香は嘘です。念の為。 |