リビングで借りてきたDVDを観ていたら、十代がやってきてそれどころじゃなくなった。 いま私の視線はテレビの画面に釘漬けだ。 しかし意識は確実に私の体を触っている十代の手に向けられている。 背後から抱きしめるようにして私の体をとらえた十代は、長い指でムニムニと私の胸を揉みだした。 「十代、邪魔なんだけど」 とりあえずここで映画を中断されるのは嫌だった私は、目はしっかりと画面に夢中になりながら十代の手を叩いた。 「いって」 下着の留め具を探していた十代は、小さく声を漏らして一度胸から手を離す。 けれどそこで引き下がる十代ではなく、ぷちぷちとボタンを外して今度は服の中に手を突っ込んできた。 さすがにこれはまずい。 私は慌てて止めに入った。 「ちょっと、十代っ」 テレビから目を離し、斜め後ろにある十代の顔を睨み付ける。 十代は私の肩口にあごを乗せ、なんだよと眉間にしわを寄せていた。 なんだよはこっちの台詞だ。 さっさとこの手を離せ。 「私いまテレビ観てるんだけど」 「知ってる」 「だったら邪魔しないでよ。十代も一緒に観よう、おもしろいんだよこれ」 「でも俺これ観たことあるしなー、それよりセックスしよーぜ」 「やだって、」 「そう言うなって。映画なんかいつでも観れんだからさ」 拒否の言葉も受け入れず、十代は強引に唇を重ねてきた。 抵抗しようとあげた手はあっさりと掴まれ、愛撫が続けられる。 くちゅくちゅと舌を絡め合い、硬直した体は次第に十代に委ねられていく。 唇を離した時十代との間に銀色の糸が伝い、既に蒸気した頬が熱を持っていた。 「…ばか、十代のばかばか」 「あんまほめんなって」 「映画たのしみにしてたのに…」 「だから俺と楽しもーぜ」 「そういう意味で言ったんじゃない」 本当は、十代とこうして体を重ねることは嫌いじゃない。 むしろ好き。 だけどそれと同じくらい、今日はゆっくり映画鑑賞するつもりだったのに。 押し倒された首筋に十代の顔が埋まり、背けるようにして付けっぱなしのテレビを観た。 画面の中では主演の俳優と女優が今の私たちと同じようなシーンを演じていたので何だか滑稽に思えた。 「…そういえばわらし、」 いつの間にか顔を上げた十代が私の顔を見下ろしている。 そして彼はいつもの明るい笑顔で口を開いた。 「この映画の犯人、あの女だぜ」 やっぱり十代はばかだ。 (20090701) |