エメラルド少年恋をする
※お題サイト『カカリア』様より各お題をお借りしていますが、お題サイト様失踪の為当該サイト様へのリンクはありません。
※デュエルは書いた当時のルールで行っております。



俺が好きな女の子、屋敷わらしはとても可愛い。
少し癖の入った髪が柔らかそうで、いつもふわふわしている小柄な子だ。
彼女は十代の友人で、俺と十代が一緒にいた時に声をかけてきてくれた。


「ヨハンだったよね。十代とのデュエル見たけど、凄かったよ」


そう言ったわらしの笑顔は他のどんな女の子より輝いていて、俺のハートをわしづかみにした。
一目惚れというやつだった。


「十代!俺は絶対わらしを彼女にする!俺の恋人になる女の子はわらししかいないんだ!」
「えっわらしをか?」
「あぁ!」
「へー…まぁ頑張れよ。俺、そーゆーのはよくわかんないけどさ」


十代の曖昧な返事に俺は大きく頷いた。
待ってろよ、わらし!

その日から俺がわらしを追いかける日々が始まった。


エメラルド少年恋をする




「わらし!俺は君が好きなんだ!付き合ってくれ!!」
「え、えぇぇっ?」


俺は食堂で友人とランチをとっていたわらしに、ありったけの気持ちを叫んだ。
わらしはとても驚いた顔をして、頬を赤らめた。
そんな彼女に俺はますます惚れていく…と思ったら、俺の顔の横を何か鋭いものが横切った。
後ろにいたやつらが「うわっ」「何だ!?」と叫んでいて、振り向くと後ろの壁にはナイフが深々と刺さっていた。

さっきまでわらしが持ってたナイフだ。
ということは、投げたのはもちろん…


「ヨハンの…バカッ!!!」


目尻に涙を浮かべたわらしは、そう叫んで走って行ってしまった。

泣きそうな顔も可愛かったなぁ…と思ったけど、それどころじゃない。
俺、何か悪いことしたか…?


「外国人の愛情表現が大胆だとは聞いてたけど、今のは失敗だったわね」


わらしの隣に座っていた女は、ため息混じりにそう零した。









わらしへの告白から3日が経った。
その間、俺は彼女に会っていない。
というより避けられているようだった。


「十代、わらしを呼び出してくれよ。PDAでメールとか送ってるんだけど、一向に返事がこないんだ」
「あー…そう言われてもなぁ」
「ダメなのか?」
「ヨハン、わらしに凄い告白したんだろ?わらしのやつ、相当落ち込んでるみたいだぞ」
「落ち込む?どうしてだ?」
「お前…わらしだって普通の女なんだからな」


十代は何故か呆れた目をして俺をみた。
それから、横にいた翔や明日香(この間わらしと食事していた女だ)までもが、口を揃えて俺の事を非難し出す。
みんななんでそんなに怒ってるんだ?
俺はただわらしに愛を伝えただけなのに。


「わかった、ここはデュエルアカデミアだから告白はデュエルでしろってことだな!それなら誰も文句は言わないんだろ!?」


自信満々で叫んだ俺の顔に、左右から拳がとんできた。
十代に明日香、痛いぜ…


サファイアの思惑と少女の錯覚




そんな訳で俺は今わらしとデュエルをしている。
結局十代や明日香は手を貸してくれなかったから、女子寮の前で待ち構えて自力でわらしを捕まえた。
わらしは俺の姿を見た途端逃げそうになったけど、その前に俺はわらしにデュエルを申し込んだんだ。

俺がデュエルでわらしに勝ったら、付き合ってくれと約束をこぎつけて。


「よし、宝玉獣サファイア・ペガサスを攻撃表示で召喚!さらにサファイア・ペガサスのモンスター効果…デッキから新たに宝玉獣トパーズ・タイガーを魔法&罠ゾーンに置く!そして宝玉の契約で今置いたトパーズ・タイガーを特殊召喚だ!バトル!まずはサファイア・ペガサスで伏せカードを攻撃!」


俺はわらしのフィールドに伏せられた裏守備表示のモンスターに攻撃を仕掛けた。
サファイア・ペガサスの攻撃を受けて、カードが反転する。
と、現れたのは異次元の戦士だった。


「異次元の戦士のモンスター効果!このカードがモンスターと戦闘を行った時、そのモンスターとこのカードをゲームから除外する!」
「ゲームから除外?ってことは…」
「そう、サファイ・アペガサスの効果は適用されない。よってサファイア・ペガサスは異次元の戦士とともにゲームから除外よ!」


サファイア・ペガサスは悲鳴を上げて俺のフィールドから消えた。


「サファイア・ペガサス…俺の家族が!!」


家族に等しいサファイア・ペガサスを除外されて、俺は激しいショックを受けた。









サファイア・ペガサスを失った俺は、それでも最後までデュエルを諦めなかった。
残されたトパーズ・タイガーとともに戦う。


「サファイア・ペガサス…お前の仇はとってやるからな」


そして何が何でもわらしを俺の彼女にするんだ。
可愛い顔して、とんでもないタクティクスの持ち主。

俺はわらしのフィールドに伏せられているもう一枚のカードを指差し、叫んだ。
今度こそ!


「トパーズ・タイガーでもう一度裏守備モンスターを攻撃だ!トパーズ・タイガーのモンスター効果で、このカードが相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が400ポイントアップする。いけ、トパーズ・タイガー!」


わらしのフィールドのモンスターが反転する。
現れたのは、異次元の女戦士。
異次元の女戦士の持つモンスター効果は、異次元の戦士同様モンスター除去…


「またゲームから除外する気か!?」


俺は声を張り上げて叫んだ。


「もちろん…異次元の女戦士のモンスター効果発動!このカードが相手モンスターと戦闘を行った時、相手モンスターとこのカードをゲームから除外する事ができる。ダメージ計算後にトパーズ・タイガーもろともゲームから除外するわ!」
「トパーズ・タイガー…!!」


再び除外された家族を前に、俺は地面に膝をついた。
わらし…なんて手強い女の子なんだ。


トパーズは悲観的な夢を見る








その後の俺は防戦一方だった。
わらしが新たに召喚したのはD.D.アサイラントや邪帝ガイウスで、戦闘をすれば俺のモンスターが除外されるものばかり。
さらに封印の黄金櫃とネクロフェイス、紅蓮魔獣 ダ・イーザなどのコンボを決められて俺のデッキは力尽きた。

あまり好きではないモンスター破壊に耐え得る俺のデッキだけど、ハイスピードでカードを除外されていき、為す術もなかった。
当然、デュエルに負けた俺はわらしに付き合ってもらえず、女子寮の前からも追い出された。
そして今、ルビーとともに森の中で木にもたれながらぼーっと空を眺めている。


『ルビルビ〜?』


ルビーが心配そうに俺を見るけど、俺はルビーにも申し訳なさで一杯だった。
ネクロフェイスの効果でデッキからカードが除外された時、ルビーのカードも入っていたんだ。


「ごめんな、ルビー」


俺はため息を吐いた。


ルビーを埋めた樹の下で




次の日、俺は改めてわらしにデュエルを挑んだ。
デッキは昨日と同じ、俺の家族…宝玉獣デッキ。
昨日と同じ事になるのは目に見えていたけど、俺の家族はこいつら以外には有り得ない。


「わらし、俺ともう一度デュエルしてくれ!そして俺が勝ったら今度こそ付き合ってくれ!!」
「ま、またやるの?私嫌だよ…ヨハン、私が負けるまで挑んで来そうだし」
「そりゃ勝つまで続けるさ!君に俺の愛が届くまで!」
「そういう恥ずかしいことをサラッという人、嫌いだよ」


グサリとわらしの言葉が俺のハートに突き刺さった。
デュエルだけじゃなくて精神攻撃も一撃か…さすが俺の好きになった女の子だ、わらし。
だけど嫌いと言われたって、俺だって諦めるつもりはないぜ!


「「デュエル!!」」


俺とわらしはデュエルディスクを構えた。









俺とわらしが出会って二週間が経った。
相変わらず俺は毎日わらしにデュエルを挑んでいるが、勝てた試しがない。
あんなチートデッキに勝つなんて、そう簡単にできやしない。
十代だってわらしのネクロフェイスコンボには苦笑いを浮かべて避けてたくらいだし。


「やっぱりデッキの内容変えないと勝てないかなー…」


だけど対わらし用デッキってことで新たに組み直すのは卑怯な気がするし。
対策デッキで勝ったとしても、わらしは心を開いてはくれないだろう。
何よりルビーたちを外すのは嫌だし…
どうにかならないか?

そんなことを考えながら森の中を歩いていた時だった。

少し先の浜辺に人影が見える。
あのシルエットは…わらしだ!


「おーい、わらし!」


俺はわらしに会えた嬉しさに心を踊らせながら、浜辺の木にもたれて座っているわらしに近づいた。
しかしわらしは振り向かない。


「わらし…?」


傍まで来て顔を覗き込んだ俺は、そこでやっとわらしが眠っていることに気付いた。
木に背中を預けて、すやすやと寝息を立ててる。
俺が来たことにも気付かずに。


「こんなところで寝ているなんて、無防備もいいところじゃないか…俺以外の男が来たら一体どうするつもりだったんだ」


俺はわらしの隣に座り、風にフワフワと舞う彼女の髪を耳にかけてやった。
それから、キョロキョロと辺りを見回して誰もいないことを確認し、ゆっくりと顔を近づける…

卑怯だと思ったけど、寝ている彼女を前に何もしないって方が無理だ。
あと数センチで互いの唇が触れるという時に、ルビーが邪魔をした。


『ルビルビ!』
「!ルビー、何するんだよ…ちょっとくらいいいだろ?」
『ルビ!ルビ!!』
「そんなに怒るなって…わかった、俺が悪かったから!!」


耳元でルビーに叫ばれて、俺はわらしの前からどいた。
ちぇっ、せっかくわらしにキスできるチャンスだったのに…お預けか。


「ん……だ、れ?」


俺がわらしの横に座り直したのと同時に、わらしが目を覚ました。
瞼を擦って寝ぼけ眼のまま、隣にいる俺のことを探す。
そして目が合うと、彼女はゆっくりと目を見開いていった。


「何でヨハンが此処に…?」
「森を歩いていたら、浜辺に君がいるのが見えたんだ。声をかけたんだけど、起きなくて」
「そう…」
「それにしてもびっくりしたよ、こんなところでわらしと出会うなんてさ」
「…、ヨハン、私が寝てる間に変な事してないよね?」
「変な事?する訳ないじゃないか」


中々鋭いわらしに、俺はさっきのことがバレないよういつもより笑ってごまかした。

あっぶねぇ…もう少しでバレるところだった。
これはルビーに感謝しなくちゃな。
やっぱり止められて良かった。

それにしても、わらしにそんな風に疑われるなんて…
俺って信用ないのかなぁ?


「わらしは、何で一人で浜辺にいたんだ?」


俺が質問すると、わらしは視線を少しウロウロさせてから前を向いた。
つられて俺も海を見る。


「私、海が好きなの。いつもキラキラ輝いていて、綺麗でしょ?光に反射して…凄く癒されるの。そう、まるで


ダイヤモンドプリズム




俺はわらしの方が綺麗だ、と言いたかったけど何となくここは言うべきではないと思って黙った。
二人して、夕暮れの海を眺める。
そしてそれは確かに、彼女の言う通り光り輝いていて綺麗だった。

珍しく彼女が俺を拒絶する素振りを見せなくて、俺とわらしはしばらくそこに居続けた。
日が完全に沈んでから、俺はわらしを女子寮まで送ることにした。
わらしは最初少し躊躇したけど、俺の熱心な申し出を受け入れてくれて、暗くなった森の中を二人並んで歩いた。
途中で何回か転びそうになった彼女を支える度に、やっぱり一人で帰さなくて正解だと思った。

けれど女子寮の前に来た時、彼女はどことなく沈んだ顔をしていた。
一体どうしたんだ?


「私、ヨハンに謝らなきゃいけないことがある」
「謝る?」
「私のネクロフェイスのデッキはね、私の本当のデッキじゃないの。私が普段使っているデッキは全く別のやつなの」
「ってことは、今のデッキは…?」
「私が十代や明日香に頼んで組んでもらった、対ヨハンデッキ。宝玉獣のコンボを崩すための…」


そこまで言ってわらしは俯いてしまった。

対俺デッキ…
あのネクロフェイスがまさかそんなものだったとは、思ってもいなかった。


「ヨハンのことだから、その内デュエルで挑んでくるんじゃないかと思って…急いで作ったの」


わらしは弱々しい声で語った。
きっとずっと言えずに抱えこんでいたんだろうな…俺がすぐに諦めるとも思って、組んだデッキを使うこともほとんどないと予測して。
だけど俺が予想外に毎日デュエルを持ち掛けるから、わらしの方が堪えられなくなったんだ。
勝てないデッキを作って俺を欺いているってことに。

俺はわらしの気持ちが手にとるようにわかった。
そしてそんなわらしに、俺はそっと彼女の頭を撫でた。
本当は抱きしめたいくらいだけど…それはまだ許してくれそうにないから。

驚いた顔をしたわらしが俺の顔を見上げる。


「使っているデッキが違うからって、わらしが謝ることじゃない」
「でも…」
「それに、元々君にデュエルを挑んだのは俺だろ?負けっぱなしで、いつまでも君の心に気持ちを伝えられない俺が悪いんだから」


いくら対策をとられてるデッキでも、本気で好きならそれくらいの壁を越えられなきゃ、俺の気持ちだって伝わらない。
うさぎみたいに泣きそうな赤い目をしたわらしを宥めるように、俺は自分の気持ちを伝えた。
するとわらしはか細い声で反応を返してくる。


「本当に怒ってないの?」
「あぁ」
「本当に本当?」
「本当に本当だよ」
「…まだ私のこと好きだったりする?」
「そりゃ、当然!」
「じゃぁ、これからもネクロフェイスのデッキ使い続けてもいい?」
「もちろんさ!」
「やったぁ!」


……あれ?











「良かった!じゃぁこれで心置きなくネクロフェイスデッキでヨハンの相手をできるのね!」
「いや、ちょっと待ってくれよわらし…」
「ヨハンも、私のネクロフェイスデッキと戦う時はいつものデッキで挑むこと!対策の対策デッキを組むなんて、卑怯なマネはしないでよ?」
「う…だ、だけど…」
「あ、いけない。今日は観たいドラマがあるんだった…早く戻らないと。じゃぁね、ヨハン。送ってくれてありがとう!」


わらしは俺の言葉も聞かずに女子寮の中へ走って行った。
さっきまで泣きそうな顔をしてたのに…やっぱり彼女は侮れない。
俺の想いはいつまでも伝わらないのか…!?


「…ヨハン」


寮に入る直前、わらしは思い出したように振り向いて、俺を見た。
それから視線をちょっと外して、困ったように笑いながら口を開く。


「私もヨハンの事、嫌いじゃないから……ヨハンが勝つこと、期待してるからね」


それだけ言って、今度こそ寮に入ってしまった。

え…って、今の……
えぇぇぇぇぇ!?!?


「わらしっ!?」


俺が彼女の名前を呼ぶが、時既に遅し。
閉ざされた女子寮の扉が開くことはなく、俺は一人その場に立ち尽くす。

何だよそれ、最後の最後に一撃必殺を食らわすなんて…さすがわらし!


「ははっ、やられたなルビー」
『ルビ〜?』
「やっぱりわらしは最高の女だ…そうと決まったらさっそく十代にデュエルの相手をしてもらわないとな!」
『ルビルビ〜?』
「ネクロフェイスのデッキを組んだのは十代なんだから、勝てるようになるまで一晩でも二晩でも付き合ってもらうのは当然だろ?」
『ルビ!』
「よし、待ってろ十代ー!俺のわらしへの愛は無限大だー!!」
『ルビルビー!!』


琥珀の棺桶




「宝玉獣アンバー・マンモスで攻撃!」
「残念、異次元の戦士でした」
「アンバー・マンモスが…!!」
「また私の勝ちだね。通算43回目の勝利」
「くっ…もう一回だ!」
「仕方ないなぁ、今日は次で最後ね」
「今度こそ勝ってみせる…!」


俺はデッキをシャッフルしてセットした。
相変わらずネクロフェイスのデッキには勝てない…何度か惜しいところまではいったことはあるが、最後には必ず逆転勝ちをされてしまう。
中々勝つことは出来ない…

それでも恋を賭けたデュエル以外では、普通のデッキで対戦してくれるようになったあたり、わらしと俺の距離は縮まったんだろう。
最近では普通にデュエルしてくれたり、ランチを一緒にとったりするようになった。
あとは俺がわらしのネクロフェイスデッキを宝玉獣デッキで倒すだけ…
それも絶対実現してやる!
恋する俺の力を見せてやるんだ!


「俺の先攻、ドロー!」


俺とわらしの恋のデュエルは、今日もまたデュエルアカデミアで繰り広げられていた。

わらし…俺は世界中の誰よりも君が好きだ!



エ メ ラ ル ド 少 年 を す る




20090201
やはりアニメを観てないのでルビーがホントに『ルビルビ』言ってるのかわからないしヨハンのデッキもわからない捏造だらけですみません。
そして素敵なtitleに宝玉獣を当て嵌めたらとんでもないことになった…誰かルビーを掘り起こしてあげて下さい。
ほんとすみません☆rz



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