洗面台で口を濯いでいるわらしの後ろから、遊作の手が背中に触れる。
「大丈夫か…」 「ん。…平気だよ、遊作くんのだし」 「だが…」 「いいの。私がしたいと思ったんだから…」
今更になって恥ずかしさが込み上げたのか、鏡の中の遊作から目をそらし、ポツリと溢す。頬が赤いのはアルコールのせいだけではない。 どういう訳か、それが遊作には興奮を呼び覚ます材料となった。 わらしの膝裏に腕を通し、もう片方の腕で背中を支える。いわゆるお姫様抱っこの状態で再び寝室へと連れていく。
「ゆ、遊作くん、何で…」 「…あんまり可愛いわらしを見ていたら、我慢ができなくなった」 「そ、そんなこと…」
ストレートな言葉に咄嗟に何と返して良いかわからない。 あっという間に寝室に連れ込まれると、今度こそ遊作はわらしの体をベッドに押し付けた。上から覆い被さり、制止の声がかかる前に唇を塞いでしまう。口付けながら背中のファスナーを下ろしてしまえば、後は遊作の独壇場である。 とろんと溶けた目をしたわらしのドレスを脱がし、下着姿にする。わらしの下着はドレスの形に合わせた真っ白なビスチェだった。綺麗に纏まってはいるが、胸は今にもこぼれ落ちんばかりである。ストッキングは履いていない。
まるで花嫁を脱がせているような感覚に陥りながら、遊作はごくりと息を飲み込んだ。とりあえず邪魔な自身のタキシードを乱暴に脱ぎ捨て、改めてわらしの下着に手をかける。 フロントホックを順番に外していけば、それまで納められていた乳房が跳ね、遊作の前で揺れる。その様子をジッと見られることに未だ抵抗があるのか、わらしは恥ずかしそうに目をそらしている。だが遊作は遠慮なくその胸に触れた。先程からずっと、触れたくてたまらなかったのだ。
「んっ、あ………っ……やぁ……、っ」 「っ、可愛いな…」 「あ…っ……ん、ぁん……あっ…」
艶やかな声をあげて快感を享受するわらしの谷間に顔を埋めて、遊作は豊満な果実の弾力を楽しんだ。両手で左右の乳房を揉みながら、グリグリと顔を押し付ける。
「あ……っ…んん……はぁ…っ…」
ピンク色をした頂を口に含んで吸い付けば、自然と息が上がった。ちゅ、ちゅ、と音を立てて何度も吸い付く。戯れに吸い付いたまま唇に挟んで引っ張れば、重量のある胸は面白いように形を変え、離した際に大きく揺れた。
「っ、ひゃん……、」
思わず手で口許を押さえてしまう。遊作にしてみればほとんど意味をなさないのだが。 指先で摘まめる程に熟れきった先端は、十分に感じている証だった。
「…わらし、気持ちいいのか…?」
少しだけ余裕のある遊作が尋ねる。しかしわらしは首を横に振るだけ。
「答えて…」 「んん…っ…、どーして、そんなこと…聞くの…、っ?」 「わらしの口から聞きたい…」
問いながらも、手の動きは止めない。さらに舌での刺激も加えながら、わらしを追いたてる。
「わらし…?」 「っ、やぁ……っ…そんなの、言えない……」 「…頼む。言ってくれ」 「あっ、ゆーさくくん……、ズルい……っ、!」
ふるふると睫毛を震わせながら、わらしはいやいやと首を振った。けれど遊作も諦めてはいない。 両手で揉みしだきながら、耳元に口を寄せて囁く。
「お願いだ…」 「や…だぁ……、」 「好きだ、わらし…」 「っ……」
遊作からのストレートな愛の告白に、とうとうわらしは根負けした。顔を両手で覆いながら、蚊の鳴くような声で答えた。
「っ、……気持ちいい…よ…」 「…どこがいい?」 「ぜんぶ……遊作くんが触ってくれたら…ぜんぶ気持ちいいから…っ」 「…そうか」
遊作の顔から笑顔が零れた。わらしは顔を隠しているので見ることはできなかったが、声の様子から何となく遊作の感情を読み取った。 だがそれ以上答えることはなく、遊作から与えられる悦びを受け入れるだけである。 遊作はその後もしばらくはわらしの柔らかさを堪能し、舌で好きなだけ可愛がった。片手で胸を弄りながら下着の上から割れ目をなぞると、くちゅりとした水音が響く。わらしが眉を寄せて、遊作を見上げた。
「今日は凄いな…びちょびちょだ」 「…ゆーさくくんが、いっぱい触るから…」 「嬉しいな…」
ちゅ、とキスを落とし、唇を舐めながら尚も指を滑らせる。クロッチ部分の上から敏感な秘粒を指で行ったり来たり撫でれば、それだけで腰が大きく揺れた。
「ん…、ぁ……んん、っゃ……ぁん…っ」
焦らす為にわざとゆっくりと擦る。微妙な刺激がもどかしいのか、膝を立てた足が揺れている。時折擦る力を大きくしてやれば、華奢な体は電流が走ったように跳ねた。 蜜壺まで指を伸ばして卑猥な聞かせると、中からいっそう溢れ出してくる。もはや下着の意味などなくなっていた。
「ゆーさく、くん…」 「何だ?」 「、ねぇ、それ……ぃや……、」 「…どうして欲しい?」 「んッ…もっと……ちゃんと触って…」
遊作の首に腕を絡め、口付けをせがみながらさらなる快楽を求める。遊作はわらしの願いを聞き入れて、そっと下着の中に指を差し入れた。 遊作の体温が直接触れる。待ち望んだ刺激を手に入れて、わらしの口からはあられもない声がこぼれた。
「あぁぁっ……あっ、ぅん……あ、…あ、…ぁ、…」
グリグリと円を描くように秘粒を弄る。その下から溢れ出ている蜜を掬って擦り付けてやれば、滑りが良くなったせいか、いっそう激しい矯声が響いた。中に指を差し入れても抵抗はない。 遊作はサイドの紐に指を引っ掛け、性急に下着を引き下ろした。
「…わらし、今日は最後までするからな…」 「えッ…? っ、ひゃぁん…、!」
頭を素早く足の間に割り込ませると、女の匂いが薫るそこを目掛けて遊作は舌を着地させた。べろりと、下から上へと唾液を含ませた舌で愛撫する。感じて肥大化している粒を口に含み、ちゅうちゅうと吸い付く。同時に指でわらしの中を刺激した。
「あっ、や…ぁ……ん…それ、だめ…っ…!」
遊作の頭に触れて嫌々と首を振る。その目尻には涙が溜まっている。 しかし遊作に止める気はない。
「っ、ぁあ、やぁん……あっ、…ぁ…っ…………あん、…ぁ……あ………あ…っ…」
指で中のイイところを探しながら舌で散々苛め通せば、簡単に限界を感じたわらしが遊作の頭を押し退けようとする。
「や、ぁん、ゆ…さくく、だめ、やめて、おねが…ぃ…っ あっ」 「ちゅ……ちゅる…、っ…………」 「ひぁ…っ、あっ……あん……や…っ……、だめ…っ、あっ、……だめっ……んんっ……!…」
力の入らない手で、それでも懸命に離れようとするわらし。しかし遊作の腕がそれを許さない。実は遊作には今日こそわらしをイカせたいという思いがあった。
わらしはまだ中で絶頂を迎えることができない。達しさせるには、遊作が指や唇で愛撫している時しかチャンスがない。けれど当のわらしは達するのが怖いのか、いつも限界を迎える直前で行為を中断させるのでまだ一度も昇り詰めたことがない。 遊作には愛する恋人がイク姿を見たいという願望と共に、イカせなければならないという妙な使命感すらあった。男のプライドにも関わることである。 わらしの反応を見ながら、絶頂へと確実に導いていく。
「あっ、あん… あ、ふ……んっ…んや、ぁ………あぁっ…、」
わらしの指が遊作の髪をくしゃくしゃにする。感じやすい外を舌でねぶられ、中はGスポットを重点的に突かれれば、強すぎる快感が背筋を駆け上り、遊作の指をきゅうきゅうと締め付ける。やがて本当に限界を迎えた時、わらしはシーツを強く握りしめながら背中を反らせた。
「だめ、あっ、いや、や、やだ、もう、もう、っ… ーーーっあぁぁぁぁ……っ!」
ビクビクと大きく体を震わせながら、わらしは新たな境地へと身を委ねた。
愛する彼女の泣き顔は見たくないが、それが快感から導かれるものならいくらでも試してみたい。そんな遊作の男心を察するにはあまりにも経験の少ないわらしは、ただただ羞恥心に駆られて顔を向けることができなかった。 上気した頬はピンク色に染まり、呼吸する度に胸が大きく揺れる。尖った先端は元に戻らず、ピンと張り詰めたままである。
「…やだ、って言ったのに…」
小さく不満をこぼせば、わらしとは対照的に満足した遊作が濡れた目尻にキスを落とす。
「さっきのお礼だ。いつも俺ばっかりが気持ちよくなって、わらしはイッたことがないだろ」 「………だって、なんか、凄く恥ずかしいんだもん…」
納得はいかないが、怒っている訳ではないようだ。 遊作は達したばかりのわらしの体を優しく労りながら、肌の上に手を滑らせていく。全身がいつもより敏感になっているせいか、少し触れただけでわらしの呼気は簡単に乱れてしまう。 再び中に指を滑り込ませると、悦に入った表情で声を漏らす。
「わらし、いいか…?」
遊作が問いかけると、わらしは小さく頷いた。 遊作は体を起こすと、先程から再び臨戦態勢に入っていた自身の準備をすべく、用意していた避妊具に手を伸ばした。と、ここでわらしがその腕を掴む。真っ直ぐに遊作の顔を見つめて囁いた。
「きて、遊作くん…」
驚いて遊作は目を丸くする。
「だが、このままでは…」 「大丈夫だから」 「……、!」
わらしの言葉の意味を察した遊作は、一瞬の瞬きの後、少しだけ躊躇った。
「いつからだ?」
尋ねれば、わらしは答えた。
「少し前から。万が一の時のことを考えると、こっちの方が確実だから」 「体に負担は…」 「もちろん、ノーリスクって訳ではないけれど、ちゃんと検査して限りなくゼロにしてる。だからその…、付けなくても、大丈夫だよ…」
最後の方は目を細めながら、たどたどしく言葉を紡ぐ。わらし自身、自分がどれだけ大胆な発言をしているのかは理解している。それでも直接繋がりたいと思うのはわらしだって同じで、考えた末に行動に移したのだ。その裏に‘姉’の入れ知恵がなかったとは言わないが。
わらしが遊作の顔を見つめていると、遊作もまたその先に進むべく動き出した。 足の間に割り込み、両足を抱え込む。自身を入口ギリギリまで近付けて、再度問いかけた。
「本当にいいんだな…?」 「うん…、きて?」
わらしの返事を合図に、遊作はゆっくりと腰を押し進めた。前戯によって十分慣らされたそこは、抵抗もなく雄の侵入を受け入れる。ゴム越しには感じられない粘膜と中の蠢きが、直接遊作自身を包み込んだ。
「あ……あ、あぁぁん……っ」 「っふ、っ……くっ……」
奥まで押し入れると、遊作は眉を寄せて堪えた。想像以上の快感が押し寄せる。すぐにでも滅茶苦茶に突いてしまいたところを抑え、ちゅっと太股にキスを落とす。わらしもまた、絶頂を迎えた後の挿入がいつも以上に気持ち良いのだということを知った。
「んっ…ぁ……、はぁん…あっ、あ…っ……」 「凄い、な…、…良すぎる…」
軽い律動を開始すれば、結合部がぱちゅんぱちゅんと音を立てて愛液を飛び散らせる。遊作はたまらず、わらしの腰を抱えて奥を穿つ。わらしの背中が浮いてアーチのようにしなった。
「あっ、あっ………ん…、あ…っ…あっ……ぁあっ…ん…っ……!」 「っは、今回は、あまりもたないかもしれない…っ」
深いところでわらしを攻め立てながら、遊作は子宮口に当たる感覚に身を震わせた。突かれたわらしは、その度に中を締め付け、さらなる潤滑油を生み出す。避妊具越しでは決して味わえない感覚に、酔いしれそうだった。
「わらしの中、最高に気持ちいい……」
揺れる乳房を見下ろしながら、片手でその弾力を楽しむ。
「ふぁっ、あ…っ……ぁん、わたしも、…きもち、い…よっ……」
羞恥心などとうに吹っ切れてしまった。わらしは遊作に犯される悦びに浸り、雌の声をあげ続ける。
「あっ、あ…っ……あん…、あ、あっ、あっ…あぁっ…、!」
髪を乱し、生理的な涙を止められず。他の誰にも許したことのない場所で互いの熱を分け与えれば、快楽以上に確かな愛情が感じられた。気持ちが昂れば昂るほどに、わらしの締め付けは強くなっていく。
「ゆーさくくん、すきぃ…っ」
矯声の合間、途切れ途切れに愛の言葉を紡ぎ、手を伸ばす。覆い被さった遊作が唇を貪り、わらしはその首に抱き付いた。激しく口内を蹂躙されても、腰の動きは止まらない。全身で愛をぶつけられる。
「あっ……………んぅ、……っ………ふ………ん…、…!」
快感にうち震えるわらしの中で、遊作の硬度と膨張率が上がる。律動もさらに激しさを増した。
「っ、中に…出すぞ…ッ」
限界を感じた遊作が絞り出すように告げると、遊作を抱き締めるわらしの力も強くなった。
「あっ、あんっ……ん…、お願い、きて…っ……!なかに、…っ、あっあぁ…っ」
ガツガツと、今まで以上に激しくわらしの中を突き上げ、何度も亀頭を押し付ける。イキたいという欲望とまだイキたくないという感情が入り乱れ、本能に従うがまま快感を追い求める。枷などとうに外れている。 ただ、目の前の雌の子宮に、己の精を注ぎ込みたい。
体温が上がり、息が上がるのもお構いなしに腰を打ち付け、限界を迎えたのならば。 遊作はついに、わらしの一番深いところで欲を吐き出した。
「っく……、は…ッ…」
じわり、とわらしの中に広がる温もり。遊作は吐精しながらなおも腰を打ち付け、放った精を奥へと押し込む。雄としての本能が理性を凌駕した。
「あ…っ遊作くんの……んっ、私の中に…出てる…」
愛する雄の種付けを受け入れながら、わらしは小さく震えた。折り重なっている遊作の全身にはうっすらと汗が滲んでおり、時折わらしの上に滴る。乱れた呼気が耳元を掠め、わらしは目を閉じて力を抜いた。 遊作の体がわらしの上に軽くのしかかる。
「…良かっ…た」
ぽつり、と遊作が感想を漏らす。
「うん…」
短く同意すれば、遊作は優しく口付ける。しばらくそうしてくっついていたが、やがて腰の下から腕を引き抜くと、ベッドに手をついてわらしの中から出ていく。その小さな刺激にんっと声を漏らして、わらしは喪失感を味わう。二人はひとつではなくなった。
遊作が出て行ったことで、それまで塞き止められていた穴から、つ、と体液が零れ落ちた。白濁したそれは、まぎれもなく遊作が出したもので。
「あ……出ちゃう、」
わらしは咄嗟に指で入口を押さえるが、中にたっぷりと出された精は小さな尻を伝い、シーツにシミを作った。いやらしい光景に喉が鳴る。かぁっと顔を赤くするわらしを見て、遊作は本能を止められなかった。
「わらし、もう一度…」 「え? っきゃ、」
一瞬で体の位置を入れ替え、遊作はわらしを自分の上に乗せた。態勢に戸惑っているわらしの隙をついて、改めて屹立している自身を中に押し込む。突然の挿入に驚いたわらしが声を上げるが、お構いなしに突き上げた。 若さゆえの回復力。いくらだって愛し続けられる。
「遊作くん、まって、あん、ちょっと待っ…ぁ、やぁ……んっ…」
力の入らない腰を掴み、逃がさないとばかりに揺さぶれば、わらしの体は背をそらせて跳ねる。豊満な果実が勢い良く揺れる様はまさに絶景。遊作の熱は益々高まった。
「あっ、んん……っ…ふ、ぁっ……あっ…あっあっ…はげしぃ…っ…よぉ…、っぁ!」 「っはぁ、もっと…もっと、俺の知らないわらしを見せてくれ…」
剥き出しの本能にさらされて、わらしは啼き続けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その夜、わらしが遊作から解放されたのは、日付が変わってしばらくが経った頃である。二人とも汗や色々な液でドロドロになりながらも、もはや疲れ過ぎて動く気にもなれず、そのまま寝入ってしまった。 広いベッドの中で寄り添い合って眠る。結局いつもと変わらない。 数時間後、カーテンから差し込む光で目を覚ました二人は、互いの姿に笑いながらバスルームへと向かう。バスタイムを共にするのも、今日が初めてである。
「ん…。んんん…」
丸いバスタブに身を沈めたわらしが、喉に手を充てて短い声を出す。
「声、ちょっと掠れちゃった…」 「…昨夜、出し過ぎたんだな」
理由は明白だ。
「んん…。ね、ちょっと変じゃない? 大丈夫かな?」 「何も問題はない」 「それなら良いんだけど…」
ちゃぷ、と水面を揺らしながら、わらしは後ろに寄りかかる。その体を背後から抱きしめて、遊作はわらしのウエスト部分に腕を回した。わらしの耳元で遊作の声が聞こえる。
「今日は海に行くんだったよな?」
尋ねれば、わらしが頷いた。
「うん。ホテルのビーチにね。プライベートビーチだから、のんびりできるよ。目の前だから、水着のまま移動できるし」 「なら、もう少し部屋でゆっくりしていてもいいよな?」 「いいけど、何かあるの?」 「…こうしたい」
言葉と共に、それまでわらしの体を支えていた腕が這い上がり、大きな果実を両手で掬い上げた。途端にわらしの表情が変わり、んっと声が漏れる。
「遊作くん…。昨日いっぱいしたのに…」 「あれくらいじゃ足りない」 「でも……そんな、朝から…」 「嫌か?」
そう聞かれてしまっては、わらしも答えにくい。黙っていると、拒絶されている訳ではないと理解した遊作の手がさらにわらしの体を蹂躙していく。 浮力によって軽くなった乳房を弄びながら、片手を足の間へと潜り込ませる。数時間前まで繋がっていたそこは、すぐにでも受け入れが可能な状態だった。秘粒と中を同時に愛撫すれば、わらしの体が震え出した。
「ん…っ……や、ここじゃ…お湯入ってきちゃう……」 「少しくらい平気だ」 「でも…」
簡単には了承できずにいるわらしのうなじに吸い付いて、理性を壊しにかかる。ちゅ、と吸い付けば赤い痕が残った。普段なら絶対にこんなことはしないが、今は非日常である。少しくらい許されるだろう。調子に乗っていくつものキスマークを付けていった。
「ゆーさくくん、いま…」
わらしは辛うじて残っている理性で訴えようとするが、今度は耳たぶをねぶられて何も考えられなくなった。ぞくぞくと背筋を駆け上るものがある。遊作は耳の穴まで舌で可愛がり、無防備にさらされた首筋を舐めながら、屹立した自身をわらしの尻に押し付けた。息を呑む音がした。 わらしさえうんと言えば、繋がれる。
「わらし…、挿れたい…」 「っ、」
しきりに弱い部分を攻め続け、甘い声で囁けば。数瞬の迷いの後、わらしはついに陥落した。
「…いい、よ。遊作くんの好きにして…」
潤んだ瞳で遊作の顔を流し見る。遊作はわらしの腰を上げさせると、くるりと体を回転させた。向かい合わせになったところで、ゆっくりと挿入する。同時に少量の湯が入り込んだ。
「んん……っ…は、…あぁ…あん……っ」 「……っは…」
わらしの温かさに包まれて、遊作は熱い息を吐き出す。
「つらくないか…?」 「大丈夫…っ……でも、少しだけ、へんなかんじ…、っぁ…」
刺激を感じるたびに中が締まるので、搾り取られる前に動きだす。わらしの腰を掴んで上下に揺さぶり、奥を穿つ。途端、わらしの声が艶やさを増した。水面が激しく揺れる。
「あっ…あっ……あん、…や…ぁ…、あ…っ…あぁぁ……、!」
ベッドの上と水の中では勝手が違い、思い通りにはいかない。それでも遊作はわらしの感じるところを探し当て、執拗に攻め立てた。
「わらし、かわいい…な、」
縋るように首に手を回してきたわらしの耳元で囁き、何度も腰を打ち付ける。豊かな乳房が遊作に押し付けられ、動くたびに擦れて硬くなる。その弾力を楽しみながら、なおも先を求める。終わりなど、こなければ良いのに。
「あっ、あん……あ…っ…あ…っ…あぁぁ…っ…、!」
明るいバスルームに、甘い声が響き続けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ハートランドに着いてから、随分としている気がする…。 そう感じたわらしは、多分間違ってはいない。 恋人と泊まりで旅行に来れば、そうなることは当然理解していた。わらしだってそのつもりだったし、その為の準備もしてきた。しかし彼女はどうやら若い恋人の精力を甘くみていたようだ。 普段あまり多くを要求しない遊作が、頻繁に甘い言葉を囁き、隙あらばスキンシップを求めてくる。抱く時でさえわらしの体を気遣って必ず同意を取るはずなのに、返事も聞かずに進めてしまう。あれだけ激しく欲望をぶつけられたことは今までにはなかった。それとも、ずっとそうしたかったのか。
(求めてくれるのは嬉しいけど…)
恥ずかしさと同時に、ついていけるのか不安になる。ただでさえ、男と女では体力的に差がある。できる限り応じたいと思う一方で、これ以上激しくなったらどうなってしまうのか。わらしは悶々と考えていた。 そんな折、室外の遊作から声がかかる。
「わらし、そろそろいいか?」 「あ、今いくね」
着替えの為に使っていたバスルームを出れば、同じように部屋で着替えをしていた遊作と顔を合わせる。遊作は青色の一般的な男性用水着を着用しており、細身だが引き締まった肉体が美しい。一方、わらしはフリルの付いたホルター・ビキニである。散々迷って、選んだのは黒。白系の下着を持ち込んでいたので、たまには趣向を変えようと考えたのだ。
「どう…かな?」
下着を見せるのとはまた別の緊張感に包まれながら、わらしが尋ねる。遊作は柔らかい表情で答えた。
「可愛い」 「…ほんと?」 「あぁ。いつもと雰囲気が違うな。似合ってる」 「ふふ、ありがとう。遊作くんも似合ってるよ」
上機嫌になったわらしは、ポニーテールを揺らしながら浮き輪を抱えた。遊作がその背を包むように寄り添い、部屋を出る。 相も変わらずエレベータの中でもくっついていると、わらしの首元を覗き込んだ遊作が呟いた。
「…この水着じゃ見えないな」
つ、とホルターネックの部分に指を這わせる。気付いたわらしが抗議の声をあげた。
「あ、それ言おうと思ってたの。さっき、見える所に痕つけたでしょ」 「ダメか?」 「ダメだよ。人に見られたら、恥ずかしいし…」 「ここに知ってるやつなんていないだろ」 「でも、そんなにすぐには消えないのに…」
デンシティに戻った後、万が一知り合いに見られたら、わらしはそれだけで消えたくなると思った。知り合いにそういう行為をしていると思われるのが恥ずかしい。デンシティは、わらしが昔住んでいたオープンな都市ではないのだ。
「…今だけだ。少しくらい、羽目を外したっていいだろ」
言いながら、遊作はわらしの額に唇を落とし、機嫌を取ろうとする。 そんな遊作を見ながら、あぁ、やっぱりいつもより愛情表現が多いな、とわらしは密かに思った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
真夏のリゾート地といえばもちろん海である。 泳いでよし、日光浴するもよし、砂場で遊ぶのもよし。ツアーを予約すれば、船でちょっと沖まで連れていってもらって、シュノーケリングやスキューバダイビングも楽しめる。日中は活気溢れるレジャースポットとして、夜はロマンチックな雰囲気に包まれた恋人たちのデートコースになる。難点は、とにかく人が多いこと。 しかし遊作とわらしがいるのはホテル所有のプライベートビーチである。人混みはそれほどなく、最高の景観の下設備も充実している。 二人はパラソルの下で日焼け止めを塗り合い、早速海へと繰り出した。軽い準備運動の後、浮き輪を抱えて飛び込む。
「遊作くん、はやくはやく。こっち!」
さっきまで体力がどうのこうのと悩んでいたのもそっちのけ。わらしは遊作に水をかけながら、沖へと進んだ。
「待て、わらし。置いていくな」
遊作も笑いながら追いかけて海に入っていく。すぐに追い付き、浮き輪ごとわらしを抱き締めれば、水面が激しく揺れて飛沫が飛び散る。あっという間に全身が水に浸かってしまった。
「つかまえた」 「…ふふ、つかまっちゃった」
二人はそのままコバルトブルーの海を漂い、煌めく水面に映るサンゴや魚に触れ、穏やかな波のうねりを楽しんだ。 もう少し波が高ければサーフィンも楽しめただろうが、残念ながらそういう場所ではない。そもそもサーフィンの経験がないわらしには最初から選択肢には入っていなかった。普段、デュエルボードに乗り慣れている遊作なら別であるが。
「ね、一緒に写真撮ろう?」
青空を背景に、持ち込んだカメラで二人仲良く写真を撮れば、良い思い出になった。画面の中で遊作もわらしも笑っている。
「よく撮れてるな」 「私、これ待ち受けにする。遊作くんとの初めてのツーショットだよ」 「そういえばそうだったな」
にこにこと笑うわらしの頬にキスを落として、遊作も上機嫌だった。
たっぷりと水の中を楽しんだ二人は、ビーチに併設されているカフェで食事をとり、午後はシュノーケリングの道具一式を借りて再び海に戻った。普段は見ることのできない色鮮やかな熱帯魚たちを眺めながら餌をやる。人間に慣れているのか、熱帯魚自らが寄ってくる。その小さな体にそっと指先で触らせてもらった。
「か、かわいい…」 「触っても逃げないんだな。それどころか寄ってくるぞ」 「まってまって、すぐご飯あげるから」
表情を綻ばせながら新しい餌を用意する。遊作はそんなわらしの姿をカメラに収めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夕方になるまでビーチで遊びつくした二人が水着のまま部屋に戻ってくると、中は清掃が入ったおかげで綺麗になっていた。散々乱れた主寝室のベッドも元通り、新しいシーツに換えられている。 ちょっとだけ恥ずかしい気持ちになったわらしだったが、あえて考えることはせず忘れることにした。どうせ明日には出て行く場所だ。
「楽しかったね。遊作くん先にシャワー浴びる?」 「いや。わらしが先でいい」 「そう? じゃぁ使わせてもらおうかな…」
言いながらバスルームに向かおうとしたわらしの腕を遊作が掴む。
「遊作くん?」 「…シャワー浴びる前に、一度だけ」 「え? ……えぇ、?」
遊作の提案に、わらしは変な声を上げた。まさかこのタイミングで言われるとは思ってもみなかった。
「え、でも、朝だってお風呂でしたし…」 「あれから随分時間が経ってるだろ」 「せめてシャワー浴びてからにしようよ。水着のままだよ?」 「むしろそのままがいい」 「え、」
遊作の発言に驚いて固まっているわらしの腕を引っ張って寝室へと連れていく。わらしは気付いていなかったが、水着姿はそれはそれで遊作の心をしっかりと掴んでいた。白い肌に食い込む漆黒。常時素肌に触れていた上、妖艶な肉体美を隠すのは薄い布一枚だけである。水中で何度反応したかわからない。
「ゆ、遊作くん…」
簡単にベッドに押し倒されたわらしは、恥ずかしい格好に頬を赤らめた。上目遣いで遊作の顔を見る。
「シーツ、また汚しちゃうよ…」 「構わない。寝室は他にもある」 「そうだけど…」
よもや最初に部屋に入った時の会話が仇になるとは思わなかった。 遊作はわらしの水着を脱がさずに、両手を上げさせて黒いビキニの上から指を這わせる。長時間水に浸かっていたせいで肌の表面は冷えているが、触るとすぐに熱を持ち始める。双丘の谷間に舌を這わせると微かに海水の味がした。
「少ししょっぱいな…」
入念に舌を滑らせながら水着の上から吸い付けば、薄い生地の上からもはっきりとわかるくらい先が尖ってきた。舌先でグリグリと苛める。
「はぁぅ…っ……ん、…あ……あぁ…っ…」
わらしの腰が揺れ始める。
「んん…っ…や……あっ…あぁっ…っふ…、」 「わらし…可愛いな。勃ってる…」 「あ…っ…ん、んっ……あっ…ゆわないで、…そんなの…っ」
感じながら文句を言う唇を塞いで水着をはだけさせる。現れた果実は水着に抑えつけられて、図らずも寄せられ丸みを帯びる。自身の水着を引き下ろした遊作がわらしの頭の方へと移動した。屹立した自身を顔に近づけ囁く。
「わらし、舐めて…」 「へ…、…んぅぅ…っ……」
返事も待たずに押し入れる。予期しない要求に驚いたわらしだったが、抗うことなく受け入れ懸命に舌を動かした。ず、ちゅ…といやらしい音が響く。
「んん……む…っ……ちゅ…っぱ…、」 「く……っふ……」 「っはふ…っ……ん、っぁん…ちゅぷ…っ」
温かい口内でしごかれて硬度が増す。刺激を求めそのまま数度軽く喉の奥に向かって突けば、唇を離す直前でわらしは咳き込んでしまった。
「けほっ……っは…、…」 「悪い。つらかったか?」 「ん…。大丈夫」
目尻に浮かんだ涙を指で拭い、遊作は馬乗りになる。自身をその豊かなバストの間に挟み、両手で固定しながら腰を動かした。わらしの唾液によって十分に湿ったそれは、柔らかい弾力に包まれながら勢いよく滑る。所謂パイずりというやつである。
「っや、……遊作くん、それ…っ」
わらしの顔が益々赤くなった。制止の言葉も聞かず、遊作は腰を振り続けた。
「あっ……ふ…、」 「はっ…、気持ちいい、な…」
熱い竿で乱暴に擦られながら、同時に袋がぶつかる度に冷たさを感じる。胸のつけねを優しくさすられ、挿れられている訳でもないのに切ない声が出た。遊作の苦しそうな息遣いが聞こえる。
「んっ……んっ……んぅ…」
もみくちゃにされながら先端を谷間の奥深くにこすりつけられ、さらには時折頬に押し付けられる。わらしはどこを見て良いのかわからず、潤った視線を泳がせていた。遊作が乱れた呼気のまま囁いた。
「このまま、いいか…?」 「っうん……、」
遊作の腰使いが激しくなると、胸を掴む力も強くなった。わらしは痛いほどに寄せられた胸の中で感じる熱に興奮しながらその時を待つ。イクぞ、と宣告の後、きゅっと目を閉じた。
「―――っぁ…、!」 「ふぁ…っ」
勢いよく迸った精はわらしの震える睫毛の上に、紅葉した頬の上に、熟れた唇の上に大量に降り注いだ。生臭いにおいが鼻をかすめる。粘性のある液は柔肌をつたい、雫となって零れ落ちる。遊作のそれがぴくりと震えた。
「んん……や……あっつい…」
遊作の欲望を直に感じ取ったわらしは、眉を寄せながら呟く。
「っ、悪い……止められなかった…」
己の精を出し切った遊作は、わらしの上から退いてティッシュに手を伸ばそうとする。その時わらしがうっすらと瞼を押し上げ、ピントの合わない瞳で前を見た。顔にかかった液体を指で掬い取り、赤い唇へと運んだ。
「んっ……ゆうさくくんのあじ、」
恍惚とした表情で呟いたわらしに遊作のタガが外れた。限界である。 自身が汚した処理もおろそかに、わらしの中に押し込んでは再び激しく腰を振ったのだった。
※ゲーム『顔のない月』本編シナリオより、表現の一部を参考にさせていただいています。 >>SUMMER VACATION!−3 |