21
わらしを上に乗せて、律動と共に揺れる双丘を愛でて楽しんでいる時のことだった。サイドテーブルに置いていた俺のスマホが突然鳴り出した。
「あ、ん……、でんわ…?」 「…後で掛けなおす。気にしなくて良い」 「でも、草薙さんから急ぎの連絡かもしれないよ?」 「そうかもしれないが…」
まさかこんな状態で電話に出る訳にもいかない。 ゆるやかな快感を楽しんでいたところに水を差されたのは残念だが、こうなればさっさと終わらせてしまう他はない。わらしの言う通り、何か緊急に伝えたいことがあるのかもしれないし。 そう思ってわらしの腰を強く引き寄せようとした時、わらしは未だ鳴り続けるスマホに手を伸ばし、あろうことか通話ボタンを押してしまった。一体何を…。
「こんにちは、草薙さん。はい、わらしです。ごめんなさい、遊作はちょっと手が離せなかったみたいで、私が代わりに出ました。え? そうじゃないですよ、ただちょっと横になっていたので…。でも大丈夫みたいなんで、すぐに代わりますね」
俺と繋がっていながら、平然と草薙さんと会話をしてみせるわらし。 信じられない。何故そんな真似ができる…。 戸惑う俺に構わず、笑顔でスマホを渡してくる。受け取れば、いつもの陽気な声が耳に飛び込んできた。
『悪い、寝てたんだって? 起こしたか』 「…眠ってはいないから大丈夫だ」 『そうか。なら良いんだが』
…嘘ではない。眠ってはいなかった。
『実は、LINK VRAINSについて少し気になることがわかったんだ。これから、こっちに来れるか?』 「あぁ。少し後になるが、問題な…っ、」 『どうした?』 「な、なんでもない、!」 『?』
つい叫ぶように言ってしまい、俺は上に跨がるわらしを睨み付けるように見た。 わらしは、俺が草薙さんと電話をしているというこの状況下で、突然律動を再開した。先程までの快感が再び俺を襲う。
『遊作?』 「だ、大丈夫だ……っ、」 『それなら良いが…』 「とにかく、もうしばらくしたら……そっちに……っ……向かう」 『わかった。急がなくて良いからな』
そう言って通話は切れた。と同時に俺はスマホを放り出し、わらしの腕を掴んだ。
「わらし、電話中に動くな…っ」 「ん、だって……ゆーさく、どんな顔するかなって、興味惹かれたから…あっ、」 「草薙さんにバレたら、どうするんだ……、」 「…ふふ、必死な遊作、んっ、かわ、いい……あっ、はっ……んん、ぁ…っ、!」
可愛いのはいつだってわらしの方だ…。 俺の上で腰を跳ねさせながら、中をきゅっと締め付ける。感じながら乱れる姿はまさに絶景と評するのが相応しいだろう。 結んだ手を柔らかな胸に導き、荒い呼気で触ってとねだる。その通りにしてやれば、中の締め付けは一層強くなった。
「あっ、や…っ……きも…ちいぃ、んんっ、あっ、あん…っ…あ、」 「っ、……は、くっ…」 「んぁ、だめ…っ、もう、もう……イクぅ…っ!」
激しい律動の後、わらしは背を弓のようにしならせてイッた。熟れた乳首がピクピクと震えてそそりたつ。中は離すまいと食らいつく。 数秒の後、すっかり脱力した腰を支えて、俺も登り詰める為に容赦なく打ち付けた。既に限界だった為にそれはすぐに訪れる。快楽に染まったわらしの体を見上げながら、薄いゴム越しに大量の欲望を吐き出した。
「あぁ、遊作。早かったな。電話じゃもう少しかかりそうだと思ったんだが」 「いや…」 「疲れてるとこほんと悪いな。これ終わったら、またゆっくり休んでくれ。何なら、わらしちゃんに添い寝でも頼んでみたらどうだ?」 「…草薙さん。それはいけない。余計休まらなくなる」 「え?」
意味がわからずにきょとんとしている草薙さんに、俺は何でもないと答えた。
22
久しぶりに幼き日々の夢を見て夜中に目が覚めた。ふと横を向けば、隣で眠っているわらしの姿が目に入り、安堵すると共に愛しさが込み上げた。 大切な彼女。いつだって安心させてくれる存在だ。わらしなしには生きていけない。 問題は、俺の部屋の合鍵をわらしには渡していないということだ。さて、説明してもらおうか…。
「わらし、起きろ。一体どうやってここに浸入した」 「ん〜……」
良く眠っているところを起こすのは忍びなかったが、見付けてしまったからには放置できない。何度か声を掛けて揺さぶれば、わらしはまだ眠そうな目で俺のことを見上げた。
「わらし、説明を…」 「ゆーさく…ぎゅー……」 「……人の話を、」 「ぎゅー……」 「…………」
手を伸ばしてくるわらしに覆い被さり、その柔らかい体を抱き締める。何でだ。そんな可愛い顔でねだられたら応じない訳にいかない。クソッ、確信犯か?
「ゆーさく、好き…」
俺の腕の中で呟きながら、わらしは再び微睡みの中へ吸い込まれていった。
ちなみに次に目が覚めた時、体勢は逆転し、俺はわらしの胸に顔を埋めていた。朝から幸せすぎる…。 そのお陰かどうかは知らないが、あの後悪夢を見なかったので、合鍵に関しては不問にすることにした。俺はとことんわらしに甘い。
23
ある日わらしが深刻な顔をして言ってきた。
「実は昨日警察から電話があって、私が最近近所で捕まった下着ドロの被害者の一人だって言うの…」 「何だって? 今まで気付かなかったのか?」 「…確かに、今までお気に入りの下着が何着か無くなってたことはあるんだけど…。突然そんなこと言われても、私、どうして良いかわからなくて…」
言いながら表情がどんどん暗くなる。俺は慌ててわらしの体を抱き締めた。優しく背中を擦ってやれば、ゆっくりと落ち着きを取り戻していく。 突然そんなことを聞かされて怖かっただろうな。大丈夫だ俺がついている。 俺の女神をこんなに怯えさせるなんて、絶対に許さない。犯人には、後で俺と草薙さんで裏から色々手を回して今後社会的に生きていけないようにしてやる。
「落ち着いたか? 安心しろ。わらしのことは俺が守る」 「うん…ありがとう遊作…」 「とりあえず、洗濯物は家の中で干すしかないな」 「そうする。……あの、ごめんね?」 「謝らなくていい」 「ううん、そうじゃなくて…」 「?」
わらしは何やら言いにくそうにして、俺の腕の中で視線を反らす。何のことだ? こちらの目を見ないまま、わらしは答えた。
「私、下着を盗んだの、実は遊作だと思ってたの……」 「…………は?」 「盗まれた下着、全部遊作が可愛いって褒めてくれたやつだったから、つい欲しくなっちゃったのかなって…」 「…いや、ちょっと待て。その理論は色々とおかしい…」
いくら可愛いからといって、俺が彼女の下着を盗んだりするはずがない。大事なのは中身であって、ラッピングではない。いやラッピングも確かに重要かもしれないが、飽くまでおまけ要素だろ。
「本当にごめんね」 「、」
わらしの中では、知らないうちに俺が犯人扱いをされていた…。
24
自宅で一人寛いでいる時、Aiが俺に話し掛けてきた。
『なぁなぁ、遊作? 遊作とわらしちゃんってさ、いっつもあんな感じなの?』 「…主旨がわからない。何が言いたい」 『いやぁ、そのぉ〜……だからアレだよ、ア・レ!』 「?」
俺の質問にも関わらず、何やらやたら言葉を濁してくる。AIのくせに、面倒くさいやつだな…。
「お前の話では要領を得ない。はっきり言ったらどうだ」 『う〜〜〜〜〜……。だから、アレだよ! 夜に、二人でベッドに潜って〜なア・レ!』
ビシィッ!と俺に指を突き付け、恥ずかしがっている表情をしている。相変わらず無駄に多才だな。じゃなくて。
「………お前には関係ないだろ。黙って『あーるぅー!! 関係大アリなんですぅー!!』
俺の言葉を遮ってAiがデュエルディスクの上で暴れだす。
『昨日! 遊作、デュエルディスクの電源オフにしないで行っちゃっただろ!? お陰で夜中ず〜〜っと二人のイチャイチャする声を聞かされて、俺寝不足なのー!!』 「!」 『「遊作ぅ、好き……」「俺もわらしが好きだ…」って言いながら、何回も何回も…一体どれだけすれば気が済むんだよぉ!』 「お前、聞いてたのか…」
ご丁寧に声真似までして。
『聞きたくなくても聞こえちゃうんだってばー!』
もー!とAiは耳を塞ぐ仕草をしてわめいた。コイツに聞かれるとは、迂闊だった…。 とりあえず。
「…AIは寝不足にならないだろ」
俺は平静を装いながら、それだけ言っておいた。
25
目が覚めたら俺とわらしの体の中身が入れ替わっていた。 一体何がどうなったのかまるで理解できないが、ひとつ言えることは俺はこの状況に未だ対応できず混乱しているというのに、わらしの方はまるで動揺していない。それどころか楽しんですらいる様子だ。 ベッドの上で俺が俺を見下ろしている…。
「わらし、退け」 「んー、いや新鮮な眺めだなって思って」
上機嫌にニコニコと笑う。
「…頼むから俺の体でそんな顔をしないでくれ」 「たまには表情筋動かすのも良いんじゃない? 遊作って笑うこと少ないし。というか、不思議だね。目の前に私がいるけど、中身は遊作だなんて」 「原因を早急に突き止める必要がある。とりあえず、草薙さんに連絡して…」
言いかけた俺をわらしが遮る。
「それより、少しはこの状況を楽しもうよ」 「何を呑気に…」 「例えばさ、今の私は遊作なんだよね? ということは、私の体を押さえ付けて無理矢理中出しSEXに持ち込むことも可能だよね」 「……、まさか、いや、落ち着け、ちょっと待、」
嫌な予感しかしなかった俺は慌てて押し退けようとしたが、わらしの体じゃ力不足だった。簡単に両腕を頭上でまとめられて、抵抗する力を封じられてしまう。
「わらし、落ち着け。目の前にいるのは中身は俺だが、体は自分のものだ」 「そうだね。遊作がいつも好きにしている私の体だね」 「…。この体で、する気か…?」 「もちろん。滅多にない体験ができると思うよ、私も遊作も」
そりゃ普通じゃ体験できないことだろうが…。俺は自分の体に犯されるのはごめんだ。何より、中出しなんてさせる訳にはいかない。 せめてもの抵抗をしてみせるが、快感に弱いわらしの体はあっさりと攻略されてしまった。開発したのは俺だから、自業自得と言えなくもないが…。
「わらし、頼むからゴムを付けてくれ…」
俺の必死の懇願にも関わらず、わらしは俺の体で自分の体を蹂躙した。本来なら絶対に体験することのなかった女の悦びを知る。 嗚呼、未知の扉を開いてしまった…。 その後一眠りの後元に戻った俺達は、二人で例の婦人科へと足を運んだ。
「お願いです、こいつにピルを処方してやってください」
例になく頭を下げて頼み込んだ俺に、医師は無言で薬を出してくれた。本当に今更だが。こうまでしてあの手この手で中出しさせようとするわらしには、そろそろ俺も対処できそうにない。 薬を使うリスクがある為今までは避けてきたが、これからは毎日徹底して服用させなければ。
「いいか、絶対に飲み忘れるなよ。そうでないと中に出さないからな」 「んー、遊作がそう言うならちゃんとするよ」
本当に大丈夫かと心配になった一日だった。
2018.8.18脱稿
|