11
デッキ調整をしていたら、暇そうにしていたわらしが話し掛けてきた。
「遊作、なんかしよ? 構って?」 「後にしろ」 「さっきもそう言って相手してくれなかったじゃん…。ねぇ、それまだかかるの?」 「………」
返事もしないで黙々とカードテキストを読む。可愛いわらしを放置しておくのは忍びないが、こっちも中途半端にはできない。 きっと不貞腐れるだろうから、後でたっぷり甘やかそう。そう思って、カードを一枚一枚確認していたのだが…。
「…近い」 「やっとこっち見てくれた」
目の前に顔を近付けられたら、嫌でも目に入る。 ニコニコと上機嫌なわらしとは対照的に、俺は呆れた声を出した。
「悪いが、今は手が離せないとさっきから言ってるだろ」 「うん、わかってる。だからね、いっこだけゲームしよ?」 「ゲーム?」 「遊作が勝ったら、遊作がいいって言うまで大人しくしてるから。その代わり、私が勝ったらそれやめて、構ってね?」 「………わかった」
本当はゲームに付き合う気もなかったが。これ以上邪魔されるのも嫌だったので、わらしのゲームに付き合うことにした。
「時間がかかるのは駄目だぞ」 「大丈夫、すぐ終わるから」
そう言って飴玉を取り出した。
「ルールは簡単、私からこの飴を奪えれば遊作の勝ち。ただし手は使っちゃだめだよ」 「…まさか、」 「じゃ、はじめー」
俺がゲームの内容に気付いた瞬間、わらしは飴玉を口の中に放り込んだ。相変わらずニコニコと俺のことを見ている。 …やられた。 これはどっちが勝っても、わらしの都合の良いようにしかならない。 だからと言って、棄権することは許されないだろう…。
「ゆーさく、早くしないと飴玉溶けちゃうよ?」
覚悟を決めた俺は、嬉しそうに口をモゴモゴさせるわらしの体を抱き寄せて、強引に口付けた。
12
わらしからLINK VRAINSで会いたいと言われた。
「俺が出て行ったら面倒なことになるだけだ」 『別アカ作ればいいじゃん。私も新しいの作ったから』 「何故LINK VRAINSで会う必要があるんだ? リアルでいつでも会えるだろ」 『いいから。あ、アバターはなるべく遊作に似せてね。私もすぐわかると思う。じゃ、待ってるからね』
一方的に通話を切られ、俺は仕方なく新しいアカウントを取得した。 LINK VRAINSにログインし、指定の場所に行く。アバターを見て、すぐにわらしだとわかった。
「一体何がしたいんだ」 「あ、やっときてくれた」 「質問に答えろ」 「ん? ふふふ、実はねー…VR SEXっていうのをしたかったの!」 「………は?」
頭が痛くなった。
「あのね、VR世界でも感覚は繋がってるでしょ? デュエルの衝撃なんかも感じるし、強いダメージを受けると身体にも影響するって。ということは、VRでするSEXはいわば肉体の繋がりを必要としない究極のSEXとも言え「帰る」
来たのが間違いだった。ログアウトしよう。
「待って!」
わらしが慌ててすがってきた。
「離せ。俺はそんなものに興味はない」 「むー。…遊作がしてくれないなら、私他の人と試しちゃうよ? それでもいいの?」 「何?」 「所詮はヴァーチャルだからね。肉体的には浮気にならないし」 「待て、それは」 「もしVR SEXが現実のSEXより良かったら、すっごいハマっちゃうんだろうなー。遊作とのSEXも必要なくなっちゃうかもしれない」 「……わかった。するから」
頼むから、他の奴とするなんて言わないでくれ。俺はわらしの要求を飲むことにした。ただし一回だけだ。
「…プライベートデュエル用にロックかけるぞ」
LINK VRAINSのサービスの一つを選択して起動する。これでこの空間には俺とわらし以外入れない。当然管理者には監視されるが、LINK VRAINSには大量のアカウントが存在する。リアルタイムで監視はできないだろ…。 体(アバター)に触れてくるわらしを見て、俺は諦めに近い境地で身を委ねた。
>>12.5
13
フェラをしていたわらしが、何を思ったのかおもむろにそれを自分の胸に挟んで扱き始めた。パイズリというやつだ。 してもらうのは意外にも初めてだが、いいな。視覚的にも感触的にも…。想像以上に興奮する。 ところがそんな俺の心境をぶち壊すような一言が、この後わらしの口から発せられた。
「見て見て、遊作。ホットドッグならぬ遊作ドッグ〜。いただきまーす、んっ」 「………」
変態なわらしの思考は俺には理解できないと改めて思った瞬間だった。
14
わらしのスマホが置きっぱなしだったので、何気なく待受を見てみたら俺の幼少期の写真だった。一体どこから手に入れた…。
「わらし、そこに座れ」 「え? どうしたの?」 「スマホの待受画像…どこで手に入れた」 「え? あ、やだ、…見ちゃったの?」
恥ずかしそうに頬を染める。可愛いが、だからといって許す訳にはいかない。
「画像の出所は?」 「それは…草薙さんに頼んで…」 「人の写真を勝手に使うのは、プライバシーの問題に関わる。即刻消せ」 「え! それは…ちょっと…。待受にするのはやめるから、とっておいてもいい?」
とても残念そうに言うので、仕方なく了承することにした。
「絶対に他の奴には見られるなよ」 「うん、わかった。ロックしとくよ」 「それならいい」
そう言うと、わらしは表情をほころばせた。 俺の子供の頃の写真がそんなに嬉しいのか…。そういえば、わらしが子供の時の写真は見たことがないな。
「…わらしが子供の頃の写真が見たいんだが」 「え? いいよ、今度アルバム持ってくるね」
簡単にOKを出し、ニッコリと微笑む。きっと子供の頃から可愛いんだろうな。 後日、改めてわらしのスマホを確認したら、新しい待受は全裸で眠っている俺の写真だった…。
15
前戯で身も心も十分昂らせたころでいざ挿入、という段階になって、避妊具を取り出した俺をわらしが止めた。
「遊作、きて…?」 「生ではしないぞ」 「ううん。大丈夫だから…」
ね?と恥じらいながら俺を見上げるわらし。その表情はどこか余裕がある。 そこで俺はあぁそうか、なんて呑気に思い当たった。一体いつから、と思いつつも厚意を無駄にしないよう、腰を抱え上げて宛てがう。粘膜同士が触れあって、いやらしい音がした。
「凄い濡れてるな…外までびちゃびちゃだ」 「っん、ねぇ…焦らさないで、早くぅ……」 「もう少し我慢しろ。こっちでも感じさせてやる」
亀頭で小さな粒をグリグリと刺激する。たまらずわらしの腰が揺れて、豊かな乳房が官能的に震える。乱れた姿も可愛らしい。
「やだぁ、お願い…、早くいれてぇ…っ」
このままだと自分から押し付けてきそうだったので、焦らすのはやめて中に挿れた。ただし、いつもより時間をかけて、ゆっくりと。
「んんん……あ……あぁぁぁ……っ」
緩い刺激に物足りないのか、くねくねと腰を踊らせる。ようやく奥まで収めた時には、涙目で訴えた。
「遊作…もっと、激しくして…、」 「たまにはこういうのもいいだろう?」 「ぁ、あん…や……ん………あ……、」
キスを落としながら、中をじわりと攻める。抜き差しするのではなく、円を描くように腰を動かして。その度にきゅっと締まる膣に、快感を覚える。 正直、いつものペースで突いたらすぐにイッてしまいそうだった。
「ゆぅさく、ゆうさくぅ……っ」 「っは、もうイキそうになってるじゃないか、」 「んぁ、だ……ってぇ……、!」
いやいやと頭を振るわらしの足を肩にかけて、唐突にピストンを始めてやれば、あっという間に絶頂を迎えた。
「ひぁ、あ…あ…あぁぁぁぁ……っ」 「っ、」
蠢く膣の最奥に欲望を吐き出し、亀頭を子宮口に押し付ける。まるで孕ませようとするかのごとく、中へ中へと。 しばらくして繋がりを解けば、精液が溢れる入口を弄りながら、わらしが
「ふぁ…、遊作のあかちゃん、できちゃうよぉ…」
と呟いた。 …ちょっと待て。とてつもなく、嫌な予感がする。
「わらし、今、ピル飲んでるんだよな?」 「ふぇ? 飲んでないよ…? なんで?」 「!?」
何でって、聞きたいのはこっちだ!
「お前さっき、大丈夫だって言っただろ。あれは嘘だったのか?」 「んー…だってそう言わないと、遊作中に出してくれないと思ったんだもん」 「なんでそんな真似を…」 「んーっとね、中に出されるの、クセになっちゃったみたい」
凄く幸せな気分になれるんだよ、と微笑むわらしを何とか説得して。病院に連れて行った。 その後のことはもうお決まりだ。
「あなたたち、もうピル始めた方が良いんじゃない?」
呆れ顔の医師の言葉に同意したくなった。そして看護師の軽蔑するような眼差しが忘れられない。何故か三人に増えてるし。 なんだあれ、もう看護師三人でデコード・トーカーでもリンク召喚しろっていうのか?
「ねぇ、遊作は…中出しするのイヤ?」 「……嫌いではない」
責任が取れないというだけで。嫌いなはずがない。 二人で帰路につきながら、もう二度とわらしの「大丈夫」には騙されないと俺は誓った。
2018.8.8脱稿
>>16-20 |