06
ベッドの上に寝そべり、わらしがアイスを食べている。こうも暑いと、何かしらで涼を取りたくなるのはわかる。それはわかるが…。
「ん、んん……ちゅぱ、っふ……ちゅ、ん…っ」 「………」
何でいちいち艶めかしい声を出す必要があるんだ。手に持っているのは定番の棒アイス、ミルク味。 もう絶対誘ってるだろ、これ。
「ふぁ、ん……は、んっく…、」 「…わらし」 「ちゅ、ちゅ……ん、なーに、遊作?」 「…黙って食えないのか」 「え? だってこれ、凄く冷たいんだもん…」
言いながら、赤い舌先で白い塊をちろちろと舐める。 その姿は、あの情景を連想させるには十分だ。
「…っや、零れたぁ…、」
アイスの先端から、わらしの胸元に白い液体が垂れた。慌ててティッシュを取ろうとするが、それよりも早く筋を残して谷間へと流れていく。 わらしが困り顔で両胸を掴み上げる。 …完全に勃った。
「………」
俺は無言のままわらしからアイスを取り上げ、微かに香る胸元へと顔を寄せる。 汗と液体の入り交じる谷間をひと舐めすると、「ひゃ、」と驚いた声を上げた。
「甘い、な…」 「…遊作、ミルク飲みたいの? あげたいけど、まだ出ないよ…」 「…。飲みたいのはわらしの方だろ。あれだけこれ見よがしに舐めてたらわかる」 「えへへ、ばれちゃった?」
わらしは悪戯がバレた子供のように笑うが、頭の中は完全に変態思考だ。かくいう俺も、今日ばかりは完全に乗せられているが。きっと外が暑いせいだ。 頬を染めながら上目遣いで俺を見る。
「遊作のミルク、ちょーだい?」
わらしの口内はいつもよりひんやりしていた。
07
ブラウザの履歴から、わらしに俺がAVを観ていたことがバレた。今現在絶賛修羅場中。どうしたらいいんだ…。
「悪かった。わらしが嫌ならもう観ないから」 「…でも私以外の女の子の裸見て抜いたんでしょ?」 「……悪かった」 「最低! 遊作、女の子の裸なら誰でも良いんだ。しかもよりにもよって素人系とか…。だったらもう遊作とエッチしないから! 遊作なんてずっとAV観てれば良いよ!」 「それは困る」 「困る?」 「あ、いやだから…。あれは少し魔が差したんだ…。俺が好きで抱きたいと思うのは、わらしだけだ。許してくれないか…?」
必死に許しを乞えば、わらしは口を尖らせて不満を露にする。正直抱き締めたくなったが、ここで可愛いとか言ったら逆効果なのでやめておく。女神の機嫌をこれ以上損ねたくはない。
「…今回だけだからね」
渋々、本当に渋々わらしは許してくれた。
「ごめん。もう絶対に観ないから」 「うん。…ちゅーして、遊作?」
不器用に歩み寄りを見せてくれるわらしに応えてキスを落としながら、俺はあのAVに出てくる女優がわらしに雰囲気が似ていたことは、一生言わないでおこうと思った。 後日、ブラウザのお気に入りトップに「禁断の果実〜ゲイの部屋〜」が追加されていたが、黙認することにした。 多分これがわらしなりの罰なんだろう。変態でも、許してくれたのならそれで良い。
08
わらしに手を出そうとしたら、やんわりと拒否された。珍しいこともあるもんだな、と思っていたらどことなく顔色も良くない気がした。あぁそうか、これは。
「悪い。やめておくな」 「ううん、ごめんね…」 「謝らなくて良い。ゆっくりしてろ」
眠いのか、ソファの上で俺に寄り掛かるようにして目を瞑る。こういう日は甘えたくなるのだと、以前言っていたのを思い出す。 わらしの柔らかい髪を手で梳きながら、その日は二人でのんびりと過ごした。
「…遊作、お願い…抱いて?」
わらしが甘えながらそう言ってきたのは、あれから二日後のことだった。…二日後。早くないか?
「もう終わったのか?」 「ううん、実はまだ…」 「え」 「でも、何だか凄くムラムラしちゃって…。遊作に、されたいの」
体をピッタリくっ付けながらそう言われれば、俺だってその気になる。だが乗りきれないのも本音だった。
「…いいのか? そういう時って、避けた方が良いんじゃ…」 「激しくしなければ大丈夫だよ。浴室なら気兼ねなくできるし」 「わらしがそう言うのなら…」
結局、本能には勝てず浴室ですることになった。 生理中のわらしの体はいつもより敏感で、ちょっと触っただけでも過剰な反応が返ってくるので、強く触れないよう気を付けながら先に進めた。生理中でもゴムは必須だということで、手早く装着する。 壁に手をつかせたわらしの後ろから、赤い液体が伝う入り口を広げて侵入した。弄らなくても濡れているのは都合が良かった。
「あっ、はぁ……ん、あぁぁ……、」 「キツくないか?」 「ん、ヘーキ……ねぇ、もっと…」
突き出した尻をグリグリと揺らしておねだりする。いつもよりさらに大胆だ。 生理中の女性が感じやすいというのは本当なのだろう。
「わらし、可愛いな」 「ひゃう……っ、」
赤くなった耳を軽く噛んで、俺はゆっくりと律動を開始した。
09
ソファに座ってスマホを弄っていたら、わらしがやってきて俺の足に跨がった。そのまま両手を突き出し、ソファに縫い止める。
「……何がしたいんだ」 「壁ドンならぬ、押し倒しドン?」
でも何か違うなぁ、と呟くわらしの無防備な胸が眼前に晒されて、釘付けになる。いや、十分に効果はあったぞ…。
「…押し倒す、というならこうじゃないのか?」 「え? ーーきゃっ、」
わらしの腕を外して体をソファに押し付ける。俺の両腕はわらしの頭の横に。 突然のことに驚いている顔を見下ろせば、次第に赤く染まっていった。
「どうだ?」 「う、凄いドキドキする…」 「満足したか」 「うん…。でも、できればもうちょっとドキドキしたいかも…」 「奇遇だな。俺もまだ足りない」
意見が一致したところで、可愛い唇にキスを落とす。啄むように柔らかい感触を何度も味わって、額をくっ付け合う。わらしの瞳はとろけきっていた。可愛い。 やっぱりわらしは俺の女神に違いない。
「わらし、好きだ」 「私も…遊作が好き」
幸せすぎて、たまらずにもう一度唇を落とした。
10
個人的にゴムは薄ければ薄いだけ良いと思っている。多分、世の中の男はみんなそうだろう。 最近のゴムは凄い。厚さ0.02mmとかで、付けている感覚がほとんどない。生挿入には負けるが。 だが、薄いということは当然耐久力に反比例している訳で。あまりにも運が悪いと、信じられないようなことが起こる。
「……破れてる」 「っん、ゆうさく? なんか…零れてる?」
先程まで交わっていた場所から白い体液が溢れ出す。AVなら興奮する場面だろうが、逆に血の気が引いた。 なんだこれ。前にも見たことがあるぞ。デジャヴュか。
「…わらし、ゴムが破れてた。病院に行こう」 「え? ……あ、中出し、しちゃったってこと?」 「あぁ」
未だ状況を理解できていないわらしに説明する。 まさか再びわらしを病院に連れて行くことになろうとは…。申し訳ない気持ちになる。つらいのはわらしの体だ。 しかし当のわらしは、指で俺が出した液を掬い取ると目の前で弄ってみせる。そして何を思ったのか、平然とした顔で「じゃぁもう1回しよ?」と言ったのだ。
「は…?」 「1回出しちゃったんなら、2回も3回も一緒でしょ? どうせ病院行くんだから」 「だが…」 「それに、薬もらったらしばらくできないし。…今日、まだ1回しかしてないよ?」 「………」
それはそうかもしれないが…。いや、駄目だろ。
「わらし、服を着ろ」 「やだぁ」 「やだじゃない」 「……してくれないと、病院にも行かないもん」
頬を膨らませて、ぷいっとそっぽを向く。可愛い。じゃなくて。
「わらし」 「…遊作は私としたくないの?」 「そういう問題じゃない」 「今なら好きなだけ中出しできるよ? 抜かずに連続でだって」 「………」
正直それはかなり魅力的な誘いだが。屈してしまってはいけないと理性を働かせる。 そんな俺を見て、あとひと押しだと思ったのか、体を起こしたわらしが抱きつきながら耳元で囁いた。
「ね、お願い。遊作のせーしで、種付けして…?」 「ーーーー、」
イッたばかりのそれを、柔らかい秘肉に押し付けられる。 結局。わらしの要望に応える形で、その後何度も繋がった。誘惑に負けたとも言う。 外出しを前提としていた前回と違って、最初から中に出せるのは気持ちの上でも興奮した。妙な背徳感がある。同時に心臓が痛くなったが。
「…あなたたち、また来たの」
医師と、何故か二人に増えていた付き添いの看護師に呆れられながら、俺は再び説教をされることになった。
2018.8.7脱稿
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