LINK VRAINS崩壊の危機から一カ月。LINK VRAINSは今なお閉鎖状態が続いているが、これはリニューアルオープンに向けて準備を進めているところである。第二のアナザー事件や乗っ取りを引き起こさない為にも、プログラムを心機一転させるらしい。 毎日ログインしていたユーザーからは苦情も寄せられているが、それ以上に期待する声が大きかった。新生LINK VRAINSのリリースまではまだ時間がかかるが、恐らく今まで以上にユーザーが増えることだろう。様々なイベントが催されることも告知されている。
そしてLINK VRAINSの危機から一カ月が経ったということは、同時に、わらしと遊作が付き合い始めて一カ月が経ったということである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
朝。いつもの時間に登校したわらしは、前を歩く遊作を見つけて声を掛けた。
「おはよう、遊作くん」 「おはよう」
二人は約束はしていないが、校門から校舎への道のりで会うことが多い。そんな偶然に毎日感謝しながら、わらしは持参した紙袋を遊作に渡す。
「これ、今日の分ね」 「…ありがとう」 「最近特に暑くなってきたから、保冷剤入れておいたよ。夏バテしないように、今日はスタミナ食目指してみました」 「いつも助かる」
紙袋に入った手作り弁当を受け取って、お礼を述べる。 わらしが遊作の食生活を気にかけ、こうして弁当を作ってくるようになったのは、付き合い始めて極初期の頃だ。何気なく「普段どんなもの食べてるの?」と尋ねたわらしに、遊作は「草薙さんのホットドックか、コンビニの弁当」と答えたものだから、わらしは衝撃を受けた。 「遊作くん、それはいけない」「?」「そのうち絶対体壊すよ! 味覚もおかしくなっちゃうし」「だが…」「そんな物ばっかり食べるくらいなら、私が遊作くんの弁当作るから! お願い、もっと自分の体を大事にして…?」「……わかった」 こうした押し問答があり、結局毎日わらしの手作り弁当をもらっている。 最初はわざわざ弁当を作ってきてもらうことに抵抗を感じた遊作だったが、わらしいわく「一人分作るのも二人分作るのも一緒」ということで、遠慮なく受け取ることにした。そして何より、できたばかりの大好きな彼女の、それも手作り弁当とあれば、嬉しくないはずがない。 そういう訳で、毎日こうしてバラエティ豊かな昼ご飯にありつけることになったのだ。ちなみに味については文句ない。
「もうすぐテストだね。遊作くんは勉強してる?」 「それなりに。他にすることもないしな」 「わ、えらい」 『わらしとは大違いだね』 「ラーイは黙ってて!」 「…また図星を突かれたのか?」 「ちょ、遊作くん、それはどういう意味?」 「いつものパターンだからな」
時折二人の会話にラーイが乱入して、遊作にはその声は聞こえないが、わらしの反応を見ていれば大体何を言われたのかは予想がつく。
「もう、二人して私のこと馬鹿にするんだから…」
ふくれっ面になるわらしを見て、そんな表情さえ可愛いと思う。あえて口には出さないが、遊作はわらしの色んな表情が好きだ。
「それより、テスト期間の弁当のことだが」 「あ、それね。もし遊作くんが迷惑じゃなかったら、お昼遊作くんの家まで作りに行ってもいいかな?」 「いいのか? わらしも勉強があるんじゃないのか?」 「まぁそうなんだけど。実際のところ、テスト期間にはもう準備はできてるからね。……テストが近づくと、精霊たち総出で私のこと見張るの。テスト期間より、テスト直前の方が酷いくらいだよ」
げんなりとした表情からは、精霊たちの束縛が相当なものなのだということが窺える。しかしそれに異を唱えたのはラーイだ。
『そんなこと言うけど、ボクたちがせっつかないと、わらし何にもしないでしょ』 「……それはそうかもしれないけど〜」
多趣味で買い物が大好きなわらしを机に向かわせるのは、至難の業である。 放課後に寄り道は当たり前、ウィンドーショッピングは満足するまで終わらない。ついでに最近は、Café Nagiで過ごす時間も増えた。精霊たちの悩みは尽きない。
「…まぁ、いいんじゃないのか? ただで家庭教師がついているようなものだし」
そんな状況を察して、遊作は適当に答えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
テスト期間に入った。毎日1、2科目程のテストが午前中に実施され、昼前には解散となる。 一日目の科目を終えたわらしは、いったん自宅に戻ると私服に着替え、スーパーに向かう。適当に食材を買い込んでから遊作の家に行き、そこで昼食を作る。一応、テスト期間なので長居はしないつもりだ。 遊作はほぼ毎日、わらしの手料理を食べているが、実は二人で食事をとることはほとんどない。学校では互いの教室で昼休みを過ごすし、休日はCafé Nagiにいることが多い。わらしの家で夕食を取ることもあるが、それも極々たまにである。 付き合っていても、二人でいる時間が短いせいか、今のところ二人の仲は学校ではほとんど認知されていない。例外は、わらしから報告を受けたももえとジュンコ。それと、やたらめったら絡んでくる、遊作のクラスメイトの島が疑っているくらいである。
(おかげで変に注目されることもないんだが…)
遊作としては、わらしが男子に人気があることが少しだけ気がかりだった。何せ(はた迷惑な)ファンクラブができるほどである。わらしが自分の彼女だと公言できれば良いのだが、そこは思春期特有の恥ずかしさや葛藤が邪魔をして、今一歩踏み出せない。 遊作はちょっとだけジレンマに陥っていた。
「親子丼で良いかな? 味噌汁も作るから、できれば今日中に飲んじゃってね。余ったら、冷蔵庫に入れて保存すれば良いから」
キッチンの上で材料を広げながら調理に取り掛かるわらしを見て、遊作は密かに新鮮な気分を味わっていた。 自分の家のキッチンにわらしが立っている。それだけでも十分気持ちが昂ぶりそうなのに、わらしの格好はTシャツにデニムのショートパンツと、随分と肌が露出している。普段の制服姿では見れない足の付け根も、ギリギリ拝める長さだ。極めつけに、遊作のエプロンを借りながら「ちょっと大きいね」と笑ったものだから、簡単にノックアウトされた。 平静を装い、手伝いを申し出たものの、座っててと返される。そんなわらしは珍しく髪をアップにしていて、うなじから汗が一筋、伝い落ちて。 遊作は、唐突にわらしに触れたくなった。
「……わらし」 「んー?」
玉ねぎの皮を剥くわらしを、後ろから抱きしめる。突然のことに驚き振り向いたところで、素早く顔を寄せて唇を重ねる。 ん、と漏れた声が可愛らしい。
「ゆ、さくく…」
一度唇を離せば、潤んだ瞳で遊作を見つめる。たまらずもう一度口づけた。 わらしは嫌がる素振りも見せず、それを受け入れて。 調子に乗った遊作が、舌で軽く唇を舐める。その刺激に緩く開いた隙間から、やや強引に舌を差し込み、口内を蹂躙した。びっくりして逃げ出しそうになるわらしの舌を追いかけて、背中に回した腕に力を入れれば、わらしも応えるように縋ってきた。
「ふっ、ぁ……、んん…っ」
気持ちいい。 初めての感覚に、遊作は夢中になる。もっと深く、わらしのことが知りたい。舌を絡ませ、互いの唾液を交換し、吸い付く。何度も、何度も。 しかし。 遊作の手がTシャツの隙間からわらしの腰に直に触れた時、それまで従順だったわらしが初めて抵抗を示した。
「ちょ、っと待って、遊作くん……っ」
ぐい、と胸を押される。 キスに夢中になっていた遊作は、唐突に訪れた終了の合図に、名残惜しそうに応じる。同時に、やり過ぎたかと、一瞬にして後悔の波が押し寄せた。
「…悪い、強引過ぎた」
咄嗟に謝れば、わらしは恥ずかしそうに目をそらし、遊作の顔を見ようとしない。益々失敗した、と遊作は焦り体を離そうとするが、その服をわらしが掴む。
「…わらし?」 「……違うの、」 「?」 「その…、ちょっとびっくりしただけ…。嫌な訳じゃないから…」
わらしの言葉に、安堵する。
「でも、ね? 今はテスト期間中だし、ね…?」 「あぁ。これ以上はしない」 「うん…、だから、その」 「?」 「…テストが終わった後、遊作くんのうちに泊まりにきても良い?」
恥じらいながらも、精一杯伝えた。返事を聞くのが怖くて顔を上げられない。 わらしの言葉の意味を理解した遊作は、驚いて一瞬目を丸くしたが、すぐにまたわらしを抱きしめ、耳元で囁いた。
「…待ってる」 「! うん…、」
二人だけの約束をした。
それから、その日は昼食を共にしただけでわらしは帰り、翌日以降も昼食を作りに遊作の家を訪れた。その間、二人はいつものように振る舞っていたが、どこか緊張した空気が張り詰めていた。意識するなと言う方が無理である。会話ひとつにもぎこちなさが表れていた。 遊作は本当に大丈夫なのかと心配になるし、わらしは積極的過ぎたかと自分の発言を後悔していた。 だがあえて本題に触れることはせず、ついに迎えたテスト最終日。 お泊りセットを持って、わらしが遊作の家にやってきた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ちょっとした大荷物を抱えて遊作の家に入ったわらしは、今まで通り、まずは昼食作りに取り掛かることにした。
「今日はバターチキンカレー作ろうと思って、昨日のうちに鶏肉漬けておいたんだ。そんなに時間かからないと思うから、適当に座っててね」
いつものように、調理中は一人で集中する。 遊作はどこかそわそわしながらも、頷いて飲み物などを用意している。一時間もしないうちに、カレーは出来上がった。 二人で料理を囲みながら、世間話が始まる。
「まずは、テストお疲れ様。やっと夏休みが始まるね」 「そうだな」 「あ。そういえば遊作くんって、期末は初めてだっけ。どうだった?」 「それなりにはできてると思うが…。まぁ大丈夫だろう。わらしの方は……相変わらずだったんだな」
心なしか遠い目をしているわらしを見て、精霊たちのスパルタぶりを想像する。
「えぇ、そりゃまぁ、おかげさまで今回もわからないところはなかったよ…」
その代わり、何か大事なものを無くしてしまった気がするが。
「なら、とりあえず二人とも補習は無しの方向だな」 「そりゃもちろん。…あ、夏休みにね、行けたらどこか行かない?」 「どこか?」 「うーんと、例えば遊園地とか水族館とか? 普段行けないようなところに…、もし遊作くんが嫌じゃなかったらだけど」
控えめに、それとなく希望を伝えてみれば、遊作も頷いて応える。
「そうだな。夏休みだし」 「! 嬉しい、」
わらしは本当に幸せそうに笑った。そんなわらしを見て、遊作はそういえば今までデートらしいデートもしてこなかったことに気付く。 社交的なわらしは、きっと出かけるのが好きなのだろうが、それを遊作に押し付けることはなかった。本当に楽しみにしているのだろう。 夏休みを機に、これからわらしと過ごす時間を増やしていきたいと遊作は思った。
食事を終えると、片付けようとするわらしを制して遊作が立ち上がる。
「俺がやる」 「でも」 「いつも作ってくれるお礼だ。わらしは座っててくれ」
言われた通り、わらしはラグの上に座ったまま、ローテーブルの上が片付けられていく様子を眺めていた。カチャカチャとシンクで食器が洗われていく音をBGMに、ネットニュースを徘徊する。会話がなくなると、緊張して何かしていないといられなくなった。 そのうち、片付けが終わった遊作がわらしの隣に座って、互いに無言になる。
「…………」 「…………」
先ほどまでは、普通に話していたのに。 何かないかと、会話の糸口を探そうとするが、考えれば考えるほど何も思いつかなくて、わらしの頭の中がグルグルと混乱してきた頃。そっと遊作の手がわらしの手に触れた。
「!」
躊躇いがちに、遊作の方を見る。遊作も緊張して、わらしの顔は見れずにいた。 繋いだ手に、少しだけ力がこめられる。その手は汗ばんでいた。
「……、シャワー、浴びるか?」
前触れもなく、これ以上ない直球だったけれど。わらしは頷いた。
「タオル、ここに置いておくから」 「うん…」 「何かあったら呼んでくれ」 「うん……」
浴室に案内され、洗面所にこもったわらしは、緊張する気持ちを抑えて準備をする。今日の為に色々調べてきた。覚悟も決めてきたはずだ。 あとは、実際にその時を迎えるだけ… 浴室に入ってシャワーのレバーをひねる。首から下の汗を念入りに流し、足の間も丁寧に洗う。そこにアンダーヘアはない。というのも、海外暮らしが長かったわらしは、ボディケアに関しては海外準拠であった為、とっくに処理済みなのである。 今回、遊作と一線を越えることを前提としてネットで色々と調べた結果、この国ではそれが一般的ではないと知って、動揺してしまった。 遊作に引かれないか心配だが、今さらどうにもできないことなので、諦めて腹をくくることにした。電話で相談したセレブのお姉様方も、大丈夫と言っていたし。と、わらしは一人納得して。 濡れた体をタオルで拭きながら、これから遊作に抱かれるのだと思うと、嬉しい反面、未知なる恐怖が入り交じり、不思議な気持ちになった。 軽くメイクを整え、髪をおろす。 バスタオル一枚で部屋に戻ると、緊張気味の遊作と目が合った。
「……、あの、上がった、よ」 「……あぁ」
部屋の入り口で立ちすくむわらしの元へ遊作が歩いて行く。少し髪の湿ったわらしは今までにない色香を放っていて、遊作は今すぐにでも押し倒したくなった。 何とか我慢して、すれ違いざまに触れるだけのキスを落とす。後でな、と呟いて浴室へと消えた。 残されたわらしはゆっくりとベッドの縁に腰掛け、時が来るのを待った。今まで何度も遊作の家に来たことはあるが、ベッドの上に座るのは初めてである。そこは一線を引いていたから。
(どうしよう…、ちゃんとできるかな)
不安は尽きない。 でも、ここまできて引き返すことはしたくない。
わらしが緊張しながら待っていると、やがて腰にタオルを巻いた遊作が戻ってきた。 初めて見る異性の、それも恋人の肌を目にして、わらしが頬を染める。
「遊作くん……なんかすごい」
(男の人の体って、あんなに色気があるんだ…)
恥じらうように目をそらすと、遊作も少し緊張を隠せない声で、「凄いのはわらしだ…」と言った。 え?と聞き返した時には、遊作はわらしの隣にきていて、触れた肩と肩にどきんとする。
「遊作くん…、緊張、してる?」 「……わらしはしてないのか?」 「ううん、私はもう、さっきから緊張しすぎてて…実は、ちょっと限界。なんだろね、凄いドキドキする…」
まだ始まってもいないのに、と誤魔化すように笑ったわらしの肩を抱き寄せて、遊作は触れるだけのキスをした。優しく丁寧に。その緊張を解きほぐすように、何度も。
「ん……、ぁ、ふ……っ」
そのうち、わらしの体はベッドに押し付けられ、遊作の後ろには天井が映った。 優しくついばむようなキスが繰り返され、時折それが深くなり、先日のような容赦ない快楽が与えられる。たまらず遊作の首に腕を回せば、応えるように激しくなる。 遊作の指が首筋を辿り、タオルの上から胸に触れた。 途端、わらしの体は緊張して跳ねる。 だがそんな反応すら楽しむように、遊作の手はわらしの体を這う。たった一枚の布は、すぐにはがされた。
「あ…、やだ、恥ずかしい……」
思わず手で隠そうとするわらし。それを制して、遊作は首筋に口づける。
「綺麗だ…。全部見せてくれ」 「ん、で、でも……っ、あっ」
緩く、わらしの肌に指を滑らせる。直に胸に触れば、可愛らしい矯声を上げて反応する。想像以上に豊かな胸は遊作の手に余り、零れ落ちんばかりだった。強弱をつけて揉みしだくと面白いようにかたちを変える。 力が強くないか心配だったが、ちらりと窺った顔は先ほどよりも感じているようだったので、気にせずに揉み続ける。 そのまま先端まで舌を移動させると、一層甘い声が響いた。優しく吸い付いて舐めまわす。遊作の下半身は既に臨戦態勢に入っていた。
「あっ、やぁん、…っは、あっ、ふぁ…っ、」 「ちゅ…、ん、ふ……」
弄れば弄るほど、わらしの体が揺れる。 初めて与えられる感覚に耐えきれず、遊作の頭に手を伸ばした。押しのけたいのか引き留めたいのかわからないまま、ただ震える指で遊作の頭を抱え込む。そんな仕草もまた愛おしい。 遊作は二つの果実を寄せて両方を口に含む。
「はぁん…! や、ぁ…っ、あっ、それ、だめぇ…っ」
ふるふると頭を振ってわらしは快感にもだえる。当然、止めはしない。好きなだけ蹂躙する。 左右一通りにたっぷり愛撫を施し終えると、さらに体を下にずらしていく。震えるお腹にキスを落とし、両足を掴んで。遊作はその奥を覗き込んだ。
「! やっ、そこは…!」
わらしが抵抗する。しかし既に足には力が入らない。 秘密の花園を前にして、遊作は興奮するのを抑えられなかった。
「わらし…、」 「うぅ…、そんな、見ないで……」 「どうしてだ? 凄く綺麗だ」
なだらかな肌が続くその先に、女性器が見える。小さな豆と、愛液に濡れて光るひだ。神聖な入口はピッタリと閉じているが、熟れた匂いがした。
「指、入れてもいいか?」
了承を得る前に、遊作は自分の唾液で湿らせた中指を秘所に突き立てた。中は狭いが濡れているおかげで滑りは良い。 遊作は嬉しくなって、さらに指を増やそうとしたが、その時わらしが小さな悲鳴を上げた。驚いてその顔を見る。わらしは快感よりも、むしろ苦痛を感じている表情だった。 そこから、遊作は一つの仮説を立てる。
「まさか……初めてなのか?」 「…………」
わらしは答えなかった。けれど、遊作にはそれで十分伝わった。
「…ごめん、もっと優しくする、」
わらしの蜜壺から指を抜き、優しくいたわるように太腿を撫でる。指が抜かれたことでホッとしたわらしは、再び与えられる愛撫に身を任せる。少しだけ不安を感じているわらしに、目で大丈夫だと伝える。 遊作はわらしの体に熱を取り戻そうとして、先ほどまで触れていた女の園に顔を近づけた。気付いたわらしが声を上げる。
「や、だめ、きたな…っ!」
わらしの制止も聞かず、遊作は十分に湿った舌でそこを愛撫した。
「ふぁっ……や……っ………ん、……っぁあ、」
敏感な陰核に優しく吸い付き、音を立ててねっとりと攻め立てる。強すぎず、弱すぎず。時折熱い吐息をかけて焦らし、体の奥から快感を引き出させる。たまらずわらしの腰が揺れる。
「あ、やぁ……ん、ゆ、さくく……っぁ、あっ…」
しばらくそこで遊んでいると、次第に蜜壺からよだれが溢れ出した。
「んん、あ…っ……ぁん、あ……あっ……」 「ちゅ……ぱ、っふ…」
零れ落ちた愛液を掬い取り、蜜壺の中に舌を差し入れる。中は温かく、尚もじわじわと溢れ出てくる。
「や……ん、あ、……あっ、っは……あぁん…っ、」
浅く緩く抜き差しをしていると、わらしの限界がきた。遊作の髪に指を差し込み、濡れた瞳でそれ以上はと訴える。 できれば最後まで続けたいところだが、散々甘い声を聞かされている遊作も限界だった。体を起こすと、用意してあった避妊具を取りだして素早く装着する。前日の夜に練習しておいて良かった。 ちらりと覗き見をしたわらしが顔を真っ青にしたのに気付かない振りをして、再びわらしの足を大きく広げる。不安な表情で遊作を見上げているわらしを見つめて、挿れるぞ、と告げた。
「多分、痛みがあると思うが…」 「……大丈夫、大丈夫……きっと…」 「……。ゆっくり挿れるから、痛かったら言ってくれ」
こくん、と小さく頷いたのを確認して、遊作は入り口に自身を宛てがった。わらしは予想以上の大きさを感じ取って、きゅ、と眉を寄せる。触れた熱は温かかったが、それ以上に不安が心を支配する。再度大丈夫と念じながら、無理やり全身の力を抜いた。 遊作が少しずつ腰を落とすと、案の定中は狭く、全力で押し戻そうとする。先ほどまでの快感が嘘のようである。
「んっ……、ぁ………ぅ、」
わらしの表情が苦痛に満ちる。遊作も表情を硬くしながら呟いた。
「ごめん、痛むよな…」 「…っ、ん、痛い…けど、いいの、そのまま……っ」 「っ、もう少し、我慢してくれ…」
わらしの横に両腕をついて、遊作はゆっくりと腰を押し進める。逃げる腰を押さえつけ、体重をかけて穴を広げる。苦しんでいるわらしとは対照的に、進めば進むほど全身に快感が走った。
「…、ん……」
半分ほど入ったところで、既に限界は近かった。遊作はごめん、と呟いて痛みに耐えるわらしの中に自身を押し込んだ。
「いっ…! あ、ぅ……んん…、っは……」 「っ、はぁ、……っ」
悲鳴にも似た声が響く。最後まで入りきると、わらしは痛みで泣きそうになった。嬉しい気持ちもあるが、なんせ心に余裕がない。必死に遊作の首に縋りつき、耐えようとする。
「う……ぁ…っ、…んっ………は、ぁ…っ…」
短い呼吸が繰り返される。
「……っ、は……まず、い…」
一方の遊作は、温かいわらしの蜜壺に包まれて、今にも達しそうなくらいに感じていた。わらしの体を考えて、すぐに動くことは避けようとしている。しかし中が自然と締まるので、何もしていなくても射精を促される。 せめて少しでも腰を打ち付けようと、わらしの状態を顧みず律動を開始した直後。
「…っ、……!」
呆気なく達してしまった。
「…初めてだったんだよな。痛い思いをさせた。ごめん」
後処理を終えた遊作が、わらしの横に寝ころびながら、その背中を撫でる。
「ううん…私は遊作くんが初めてで、嬉しかったよ」
ぴったりと遊作の胸に顔を押し付け、幸せそうに呟く。その顔にはもう涙はない。
「でも、その……、何で私が初めてじゃないと思ったの?」
わらしが尋ねると、遊作はバツが悪そうな顔をして言った。
「それは…。わらしは美人だし、今までにそういう相手がいなかったとは思わなかったから…」 「そんなことないよ。キスだって、遊作くんが初めてだったのに」 「…あれか」 「うん」
二人のファースト・キスを思い出して、ふふ、と笑った。 わらしの髪を梳きながら、遊作が聞く。
「俺も聞いていいか? わらしのここは…どうしたんだ?」
遊作が手を伸ばし、わらしの下腹部に触れる。本来なら茂みがあるはずのそこは、他の箇所同様なだらかな肌が続いていた。 わらしはちょっと答えづらそうに、恥じらう。
「それ、聞いちゃう…?」 「あぁ、聞きたい」 「………」
わらしは仕方ないな、と思って話すことにした。
「私が、高校に入るまではエドと一緒に暮らしてたのは話したよね」 「あぁ」 「エドはあれで結構有名なプロデュエリストだから、周りの人も有名人ばっかりでね。いわゆるセレブって呼ばれてる人たちも沢山いたの。私はエドの娘……というか、妹みたいな立場だって認識されてて。年齢が低かったこともあって、みんなから随分可愛がってもらったんだ。特にセレブのお姉様方には、着せ替え人形にされたり、料理を教わったりして…」
自分を可愛がってくれた面々を思い出しながら、わらしは語った。
「エドは良い後見人だったけど、その、いわゆる女の子の事情とかそういうのは相談できないから…そういうのは全部、エドの代わりに、お姉様方にしてたの」 「…、エドが相談されても困っただろうな」 「でしょ?」
遊作は自分がエドの立場だったら、絶対に女の子特有の相談は受けられないと思った。
「まぁ、それで、色々教わってるうちに……そういうのも、レディの嗜みだからって言われて」 「あぁ」 「その時滞在してたのがちょうど海辺のリゾート地だったこともあって、その、お姉様方だけじゃなく、地元の子たちもそうだったし、もうそうすることが当たり前だったって感じだったから…」 「なるほど」 「今思うと、ちょっと早まったかもって気がするんだけどね」
照れ臭そうに言うわらしに、遊作はそんなことないと返す。初めて見たときは驚いたが、むしろ好都合だと思ったのだ。おかげでじっくりわらしの秘所を観察できた。これを言うと恥ずかしさのあまり、もう見せてくれなくなると困るので、口には出さないが。 遊作はわらしの背中を撫でながら、ゆっくりとその下の肌に指を滑らせる。ぴくん、とわらしの体が揺れた。
「わらし…、もう一度、いいか?」
初めての体に二回目は負担かもしれない。けれど、愛おしい恋人がこんな風に裸でぴったりと肌を寄せていて、我慢できるはずもなく。遊作は何とか同意を得ようとする。 問われたわらしは、すぐに了承した。まだ体に痛みが残るものの、遊作と繋がりたいという気持ちは同じなのだ。 すぐにまた体の位置が入れ替わり、心地よい重さがのしかかる。
「遊作くん、好き」 「…俺も、好きだ」
愛撫の合間に愛を語れば、必ず返ってくる。 こんな幸せな時間が、いつまでも続けば良いと思った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結局、わらしは週末の間をずっと遊作の家で過ごした。 二人でのんびり過ごしながら、わらしが作ったカレーを食べ、テレビを見て、買い物に行き、二人でキッチンに立ったりして。それ以外の時間も常にくっついて過ごしていた。おかげで、遊作が用意した避妊具は全て使い果たすことになったのだが。 一つ分かったのは、遊作は最初は割とすぐにイキやすいが、二回目、三回目となれば普通に持続するらしい。わらしは身をもって体験した。
そして月曜日。 いつもより大分早くに家を出た二人はわらしの家に向かい、荷物を置いて、そこでわらしは制服に着替える。準備が出来たところで、二人揃って登校した。その手は、しっかりと恋人繋ぎがされていて。それを目撃した生徒達により、わらしと遊作が付き合っているという噂は、高速でデンシティ・ハイスクールを駆け巡った。
「ちょっとちょっと、聞いたわよ〜」 「お二人でラブラブ登校してきたんですって? 羨ましいですわ〜」 「あはは。話がいくの早いなー」
おかげでわらしはももえとジュンコにからかわれることになった。 遊作も早朝から島に絡まれ、「やっぱり付き合ってるんじゃないかよー!!」と叫ばれることになった。それに対して遊作が「否定はしない」と堂々と返したところ、それを聞いていたファンクラブのメンバーからは野太い叫び声が上がり、教室は一時阿鼻叫喚と化した。相当悲しかったらしい。 しかし実はこの結果に、遊作は内心満足している。ここまで噂が飛び交っていれば、わらしを狙う男も減るだろう。夏休みに入る前に公表できて良かったと思う。
「遊作くん、一緒に帰ろう」
午前授業が終わって、わらしが遊作を迎えにきた。
「ね、この後草薙さんのとこ寄ってこ?」 「そうだな。最近会ってなかったし」 「じゃ、お昼は久しぶりに草薙さんとこのホットドックだね」
再び手を繋いで帰る二人を見送って、男たちの泣き叫ぶ声が止むことはなかった。
夏休みは、目の前である。
END
2018.8.1脱稿
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