情事の後は酷く眠い。
それは相手だって同じことだと思うのに、先に眠ってしまうのはいつも私だった。そして、目が覚めるのも。

重たい瞼を押し上げ、まどろみから覚醒した。ぼんやりと見えてくる景色に、そこが自分の部屋だと知って、安心する。安心するのと同時に、体によりかかった重い腕を押しのけた。

ハチは私より図体がでかいくせに、遠慮なく腕をまわしてくるから、目覚めた時に息苦しさを感じる。やめろと何度言ったって変わらない。
愛されていると感じるのは嫌じゃないけど、現実と理想は少なからず溝があるもので。
私はどちらかというと、現実的な考えを持つ方だった。少なくともハチよりは。リアリスト、という訳ではないけれど。

「うーん…」

どかした腕から逃げ、シーツから出ようとすれば再び戻される体。

「ちょっと、ハチ。寝ぼけたまま抱きつくのやめてよ…」

背後に貼りついたハチに向かってそう言えば、ハチはうっすらと目を開けた。

「ん…どこいくんだ…」
「シャワー浴びに行くの。午後から講義あるし」
「や…だ」
「何が」
「行かないで…一緒に寝てよーぜ…」
「………」

寝ていたいのは、あんたでしょ。

喉元まで出かかった声を抑えて、ため息を吐いた。こうなってしまえば私の意見など通りはしない。
改めて体に回された腕に自分のそれを重ねて、力を抜く。
すぐに寝息は聞こえてきた。相変わらず寝付きの良い奴。

天気の良い日の朝、たまにはいいか…と思って目を閉じた。

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