少しだけうとうとしてしまって、気付いたら体をしっかりと抱きしめられてしまっていた。 寝苦しいなんてことはなく、素肌同士の触れる感覚が気持ちいい。体を覆うシーツが波打って、こそばゆいような感触だった。 ふいに、そういえば下着はどこにいっただろうと思って、勘右衛門の腕から抜け出した。ごそごそと辺りに手を伸ばす。見付かったのは、どっちが使ってたかわからない、バスローブだけだった。 「あれぇ…おっかしいなぁ…」 私はもう一度自分の回りを探す。それから、ベッドに入ってショーツを脱ぐまでの過程を思い出した。 確か今日は、一人でシャワーを浴びて、ショーツとバスローブだけ身につけた私が戻ると、ベッドの上には先にシャワーを使った勘右衛門がテレビを見ながら待ってて、何気ない仕草で私もその横に座り込んだ。最初の内はまだ雰囲気ができあがっていなかったから、二人でテレビを見ながらしばらくくっつきあって、その内勘右衛門の手が肩に触れて、何度も深いキスをされた。そこからはなし崩し的に、勘右衛門は私を押し倒しながらテレビのスイッチを切り、そして、私たちは互いの熱に溺れてったはずだ。ショーツはその時に脱がされた。 …ということは絶対、どこかにあるはずなんだけどなぁ。後は勘右衛門の下敷きになってるとか。予備はあるけれど、あれ、お気に入りだから、履いて帰りたい。それとできればもう一回くらい、勘右衛門をドキッとさせたい。 「うーん…見つからない、」 やっぱり勘右衛門の下敷きになってるのかな。勘右衛門を起こして聞いてみようか。 そう思っていたら、ふいに剥き出しの背中を撫でられた。きゃっ、と変な声が出る。勘右衛門、何するの…。 「びっくりした。驚かせないでよ、もう…」 「何…してるの?」 「下着、探してるの。勘右衛門、知らない」 「知らない」 「勘右衛門の下敷きになってるかもしれないから、ちょっとだけ動いてくれない?」 「ん……」 まだ眠そうな勘右衛門がごろんと転がって、それもわざわざ余計に密着する方を選んだから、私は触れる肌にちょっとだけきゅんとした。勘右衛門の体温、あったかい。さっきまでこの腕に抱かれていたのだと考えると、どうしようもなく幸せな気持ちが溢れてきた。 「梅雨…あった?」 「ううん、ないー…どこいったんだろ」 「帰る前にもう一度探せばいいよ。絶対見つかるから」 「そうだね…そうする」 「ね。だから、今はまだ俺にくっついてて?」 「勘右衛門?」 「梅雨のお尻見てたら、欲情しちゃった」 シーツに頭を突っ込んでごそごそとしていた私のお尻が、勘右衛門の手で撫でられる。さっき、背中を触れられた時よりもびっくりして、私は慌てて身を起こした。 勘右衛門はそんな私をみてさらに笑う。いつの間にか、眠そうな顔は艶を含んだ色っぽいものになってるし、思わず後ずさりした体は、そのまま押し倒された。勘右衛門の向こうに、天井が見える。 「かん、えもん…!」 「梅雨、可愛い。やっぱ一回じゃ足りない」 「それは嬉しいけど…急すぎるよ。今、下着探してたのに…」 「見つかっても、必要ないだろ?どうせ脱がすんだから」 「!」 「梅雨は俺の指に感じてればいいの、」 そう言って勘右衛門の唇が降ってきて、女の部分を触られる。勘右衛門の指は好き。いつも、私が望んでいるところを触ってくれるから。勘右衛門の唇も好き。私は、勘右衛門のすべてが好きだった。 抜き差しされる指に、全身から熱が孕む。私は情けなくも恥ずかしい声を上げることしかできなくて、うっすらと開けた目が勘右衛門と合う度にそらしたくなる。とても恥ずかしい。 私を愛撫する傍らで、太ももに硬いものがあたっていた。勘右衛門も、きっと我慢しているのだろう。そろそろ中に大きな刺激が欲しくて、私は勘右衛門を求めた。 「ね…早く、ちょうだい……あっ、かん、……もん…っ」 ぐちゅぐちゅと音を立てる入り口。私は早く勘右衛門と一つになりたくて、首に手をまわした。勘右衛門は唇に優しいキスを一つ落とすと、私の腕をふりほどいてそっぽを向く。 どうして、すぐに挿れてくれないのだろうと思ったら…勘右衛門は慣れた様子で、素早く避妊具を付けていた。意外。私がお願いすれば、勘右衛門はすぐに挿れてくれると思ったのに。 「何、そんなに挿れるとこ見たいの?」 「そうじゃなくて…ゴム、付けるんだって思って…」 「は?何だよそれ、今さら。付けないはずがないだろ?」 「そうなんだけど…」 勘右衛門は準備ができると改めて私を押し倒し、足を開かせて、じっくりと挿入する。私は、入ってくる感覚に、あ、あ、あ、と短い声を漏らして勘右衛門を感じる。奥までゆっくりと届いた勘右衛門は、ふわりと私の頬撫でて梅雨、と呼ぶ。私も勘右衛門の名前を呼んだ。 キスの後に視線が交わると、無言でうなずいて、動き出した。 私はただ、快楽に身を任せる。 情事が済んだ後、後始末をしながら勘右衛門は聞いた。 「梅雨、何でさっきあんなことを聞いたんだ?」 「あんなこと…?」 「俺がゴム付けてたら、なんかびっくりしてた」 「あぁ…だって、もう付けないかなって思ったから」 私がピルを飲んでいることを、今日一回目の情事の後、勘右衛門に伝えた。それは元々避妊が目的じゃなくて、勘右衛門と付き合う前から、生理痛を緩和するために処方してもらっていたのだ。 とはいえ、ピルはピル。ちゃんと服用している間の妊娠率は、もの凄く低い。 だから、ピルを飲んでいるって言えば、勘右衛門はもう避妊しないと思っていたの。中だしは後処理に色々と困るけど、それ以上に私は勘右衛門のことが好きだったから、それでもいっか、と思ってのことだった。 なのに、勘右衛門はゴムを付けてた。 「生でしたいって思わなかった?」 私が聞けば、勘右衛門はちょっと戸惑った後に、否定はしなかったけど、そういう問題じゃないと言った。 「確かに、生でした方が気持ちいいんだろうけど…俺は梅雨がピルを飲んでることを知ったからって、ゴムを付けない理由にはならないよ」 「どういうこと?」 「エチケットと言ったらいいのか…ちょっと違う気がするけど、似たようなものだ。俺は、梅雨を大切にしたいから、自分の快楽を優先して都合の良いようにはしたくない」 「勘右衛門…」 「生でしたい気持ちがないと言ったら嘘になる。でも、それは…もっとずっと後だな」 後…とは? 「…本当に、俺が梅雨の全てを守れるようになって、責任をとれる関係になるまでは、俺が避妊しないなんてことは絶対にしない。梅雨と…ちゃんと一緒になるまでは、な」 「それって…」 「だから、梅雨もあんまり俺のこと煽るなよ。さっきとか、結構ヤバかったんだから」 勘右衛門は笑って、勘右衛門を見上げる私の頭を撫でた。 嗚呼、やっぱり勘右衛門は勘右衛門だ。私の好きな勘右衛門。そうやって凄く大切にされていることが分かるから、私も勘右衛門に何でもしたいと思えるようになる。 勘右衛門、好き。と囁いたら、俺も、と返ってきて、私は笑い返した。 ねぇ、本当に本当に好きよ、勘右衛門。 ふたり遊び 勘右衛門の鞄から私のショーツが出てきた時にはどうしようかと思ったけど、許してあげる。 その代わり、いつかは、私にあなたの子を宿らせて、責任をとってね? こんなにあなたの虜にした私を、最後まで愛してくれなきゃ、やーよ! |