軽く体を揺すられる気配で目を覚ました。重い瞼を押し上げれば、着替えを済ませた八左ヱ門の姿が目に映る。

「もう行っちゃうの…?」
「あぁ」
「でも、もう少しだけここにいて…三分でいいから」

八左ヱ門が隣にいたという余韻に浸らせて欲しい。私がそう言うと、八左ヱ門は黙って私の頭を撫でた。

八左ヱ門と仲直りした日から、八左ヱ門は生物の世話に行く前に私を起こしてくれるようになった。最初は寝てるのに悪いから、という理由で渋っていたが、私が一人で目を覚ますのが嫌だと言ったらやっと首を縦に振ってくれたのだ。
八左ヱ門が起きる時間は私よりずっと早い。でも、生物の世話に行かなきゃいけない中で、目覚めの三分だけは私にくれるようになった。私はその八左ヱ門に甘え、寝ぼけながらも大きな手に頬を擦り寄せて八左ヱ門を感じる。時間はたった三分しかないけれど、十分だった。


そろそろ行くな、と立ち上がった八左ヱ門の背中を見送り、私は一人布団の中でまどろむ。
本当はこの時間さえも八左ヱ門といたいけれど、それは無理だとわかっているから、わがままは言わない。毎朝三分しか構ってもらえない寂しさよりも、今は三分だけでも私の為に時間を割いてくれる八左ヱ門が何よりも愛しい。だから私はこれからも、毎朝三分という時間を大切にするのだろう。

再び落ちていく意識の中で、私はふと、そんなことを思って、幸せな気持ちになれた。


あと三分待って!






企画「時計の針が止まらない」に提出させていただきました。
初めての企画参加でしたが、とても楽しみながら書くことができました。
特に主催のいさ様には、色々とご配慮していただいて本当に感謝しています。
この場を借りてお礼申し上げます。
また機会があれば、何らかの形でお付き合いできればいいな、と思っています。

それでは、こちらをご覧の皆様も、機会があればまたお会いしましょう。
最後までご拝読ありがとうございました!

みどりーぬ
2010.06.23

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