一つ言い訳すると、私には今の恋人と付き合う前、他に付き合っていた人がいた。
それなりに男女の仲はいいはずである。
高校の時から何度か告白されていれば、そういうことだってある。
まぁ今の恋人は、私から告白したんだけども。

とにかくその時、お互いの恋愛歴というか今までに恋人がいたかとかそういう話になって、私は三郎が初めてではないよと伝えた。
三郎だって、女を取っ替え引っ替えすることで有名だったから、私より経験があっただろう(そう思うと私はかなり酷い相手に惚れたものだ)
話を聞いて、特に気にした様子もなく、ただこれからのことに対してよろしく、と一言告げた三郎は、あっさりと私の恋人になった。

周りからはすぐにまた三郎が飽きて終わるんじゃないかとか囁かれたが、その付き合いが今日までで実に一年半も続いていると、そんな噂は冗談でも聞かなくなった。
もちろんその間、互いの浮気とかそういう話は一切なし。
私たちはいつの間にか、学園一のおしどりカップルとなっていたのである(いやその言い方は何かおかしいか。普通のカップル、だ)

自分で言うのも何だが、私と三郎は相性がいいのかもしれない。
必要以上に相手に干渉しないから、嫌なことも見聞きせず、ストレスを感じることもない。

そんな感じで、今日は私の部屋でデートをしていた。
ゲームをするのにも飽きたころ、そういう雰囲気になって、ベッドに潜り込む。
その時三郎があ、と声を漏らした。

「どしたの?」
「ゴム持ってくんの忘れた…」
「あ、私多分あるよ。ちょっと待って」

と、三郎の体を退かして引き出しを開けた私は、しばらく封印してあったそれを引っ張り出し、三郎に渡す。
しかし避妊具を目の前に差し出された三郎は、憮然とした顔で私を見下ろしていたので、思わず固まってしまった。

「ど、したの…?」
「何で…持ってんだよ。しかも使いかけのやつ」
「これ、昔の余りだよ。三郎だって知ってるでしょ?私、三郎と付き合う前に何人かと付き合ったことあるし…」
「だからって、今更それを俺に渡すことないだろ!?別れたんなら、捨てろよ!」
「だ――って、勿体ないじゃない!今だって、これがなかったら三郎できないのに…」
「そういう問題じゃない!」

三郎は珍しく私の前で怒鳴って、顔を背けた。
脱ぎかけだった服を改めて着直し、半裸の私を置いて部屋を出ていこうとする。
私は焦って、その服を掴んだ。

「どこいくの?」
「他の女のとこ」
「…え、」
「お前以外でも、相手してくれる女はいるんだよ」

萎えた、と言い残して、三郎は行ってしまった。
私は閉まったドアを呆然と眺め、何もできない。
しばらくして頬に涙が伝ったのがわかり、嗚呼、終わってしまったのかと思う。

随分と呆気ない…けれど三郎はいつだってこの機会を窺っていたのかもしれない。
私なんて、三郎に抱かれる女の一人でしかなかったみたいだから…
溢れ出る涙を拭い、私はぐしぐしと乱れる髪を梳いた。


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