梅雨の体を抱きしめた時、なんてか弱いのだろうと思った。
かつての恋人に押し倒されて震える彼女の愛する恋人は、小さな嫉妬で出て行ったばっかり。
短い付き合いじゃないから、素直じゃない彼が、すぐに戻ってこれないことなんか、承知の上さ。

ねぇ、だから三郎。
僕はチャンスをあげたのに…それを捨てたのは、君なんだよ。


「っふぐ、や…さぶ、ろう…!」

僕の下にいる梅雨は、涙でぐちゃぐちゃになった顔で、三郎の名を呼んだ。
僕のことは一切見ないし、名前も呼ばない。
卑怯な手を使ってるから、それは仕方ないとわかってるけど…

それでも、やっぱり僕のことを見て欲しいじゃない?

「梅雨、こっち向いて」
「っ…」
「言うこと聞いて避妊されるのと、聞かないで避妊されないの、どっちがいい?」
「…!」

言った途端、梅雨は目をカッと見開いて、信じられないというような表情で僕を見上げた。

以前、僕は梅雨とセックスした時、避妊をしなかったことがある。
あの時はたまたまコンドームを切らしていたんだけど、別に付けなくてもいいか、と結論付けた。
孕んだら、堕ろせばいいし、梅雨が産みたいって言えば、そうしても構わないと思ったから。
僕は知らないけど。

「三郎には、避妊を徹底させてたみたいだけど、僕はどっちでもいいんだよね」

一度他の奴の手に回ってから、再び取り戻すまでどれだけかかったかわかってる?
もう待つのは嫌だから、この際方法は何でもいいよ。
何なら、さっさと妊娠して、僕から離れられないようになればいい。

あの頃の僕と違って、今の僕なら少し、余裕があるし焦ってもいるんだ。
引き止めるものがあれば、梅雨は僕から離れられない。
その為の手段が子供でも、今は受け入れるよ。

梅雨の足を思いっきり開かせた後、膜を被せていない僕自身を差し込もうとしたら、梅雨がいやいやと頭を振った。

「やだ!やめて、雷蔵…やだよ、やだやだ!」
「暴れないで。思わず力が入ったら、梅雨が痛いんだよ?」
「やだ!やだよぅ、三郎…!」

この期に及んで三郎の名前を呼ぶんだ。

何となく不愉快だった僕は、嫌がる梅雨の中に、無理矢理自身を捩込んだ。
ひぅ!という梅雨の叫び声が漏れる。
一気に奥まで貫いたから、結構痛かっただろうね。
でも、僕にとってはとても居心地がいい。

「はぁ…梅雨の中、あったかいよ。まだ濡れてないけど、気持ちいい」
「うぁ…や、だ、抜いてよ、雷蔵…」
「何言ってるの?僕と梅雨は、これから子作りをするんだよ」

抜くのは、それが終わってからね。

と、僕は梅雨の中で抜き差しを繰り返した。
その度に梅雨の口からは馬鹿みたいに三郎、三郎って声が漏れて…
まるで壊れた機械だ。

ねぇ、梅雨。
僕の名前は三郎じゃないよ?

「ひぐ、やっ、さぶろ…三郎ぉ!!」

涙を零す梅雨の顔すら、僕は愛しいと思った。


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