梅雨が俺の知らない男と使っていたゴムを持っていた。
それだけでも許せないのに、あろうことかあいつは、平気な顔をして俺にそれを渡してきた。
バカじゃねーの!?と叫びたくなった。

何で俺が、俺の知らない男が残してった避妊具を使って、好きな女を抱かなきゃいけないんだ。
胸糞悪い以外にあるか。
だけどそれ以上にムカついたのは、梅雨がそれに気付いてないってことだ。

俺は梅雨に告白されて付き合った。
梅雨は他の煩い女達と違って、あっさりしてたし我が儘もたいして言わなかったから、俺は気分を害することなく梅雨の側にいられた。
周りからはドライな関係と思われているが、ヤることはヤるし、休日だって会っていることが多い。
つまり、それなりに上手くいってる、仲のいい恋人のはずだ。
みんなそんな俺達を知らないから、そう思っているだけで、事実、俺にとって梅雨は誰よりも好いている女だし、心から愛する存在だ。

そんな女に、昔の男を匂わされて、冷静でいられるかっての。
梅雨は煩くないし我が儘も言わないけれど、時々びっくりするくらい無頓着だ。
ドライだと思われている原因の半分は、確実にあいつにもあるのだろう。

自分の部屋に戻ってきた俺は、溜息を吐いてベッドに寝そべった。
ホントなら今頃、この腕に柔らかい梅雨を抱きしめていたんだろうな。
あんなことを言って出て来てしまった手前、今更顔を合わせることなんてできないけど。

梅雨が好きなのに、他の女なんて抱けねーよ。
梅雨は勘違いしてるかもしれないが、俺はそこまで器用でもないのだ。
梅雨と付き合うようになってからは、他の女とは一切関係を持っていない。
それをあいつは、理解してるのか。

マナーにしていた携帯がサイドテーブルの上で震える。
誰だよこんな時に。
嫌々手にとって見れば、ディスプレイに映っているのは、雷蔵の番号だった。
俺は小さく舌打ちをして、電源ボタンを押す。
そのまま長押しして、ブラックアウトさせた。

「このタイミングで雷蔵が電話してくる理由なんて、一つしかないだろ…」

どうせなら、自分からかけてこい。
そうしたら、話を聞いてやらないこともないのに。

子供じみた事を考えながら、俺は寝返りを打った。





「…繋がらないね」
「………」
「少し、時間を置いてみようか。大丈夫だよ、三郎は梅雨と別れる気なんてないから」
「雷蔵…」
「さ、涙を拭いて。可愛い顔が台なしになっちゃうよ」
「うん…ありがと」

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