兵助が拾ったという梅雨さんが学園に来て早二週間。
梅雨さんは、食堂のおばちゃんのお手伝いという仕事に就き、学園にいることを許された。

最初は間者かどうか疑われていたようだけど、学園長や他の先生方は梅雨さんの話を信じたようで、今では全校生徒にその顔を知られている。
彼女と私が同じ名前であると知ると、ほとんどの生徒は驚き、一歩下がるような素振りを見せるが、彼女が無害な存在であることがわかると、途端に近寄っていく。
なんとまぁ、私も嫌われたものだ(自覚がない訳じゃないけど)

梅雨さんは未来から来たんだと、先日話をした時に彼女は言った。
信じられないですよね、と表情を暗くした彼女に、私には難しい話はわからないけど、あたなが嘘を言っているとは思わないと言ったら、彼女は花のように顔を明るくしてありがとうございます!と言ったのだ。
それから、兵助がやってきて、委員会があった私は梅雨さんを兵助に任せ、その場を去った。

梅雨さんがこの時代で初めて会ったのが兵助だったから、兵助には他の生徒より懐いていた。
三郎がふざけて、兵助が梅雨替えしちゃうんじゃないか、と言った時には何言ってるのよ、と殴ったけれど、実は内心ではそうなるのではないか、という不安があった。

何故なら彼女は私と同じ‘蛙吹梅雨’でありながら、私とは正反対の、とても可愛らしい少女だったのだ。
綺麗で、華奢で、傷ひとつない。実習であちこち擦りむいている私とは違う。
忍務で男と寝ることもあれば、兵助以外に愛を囁くことだってある。彼女は、そんなことを知らないだろう。

同じ梅雨なのに、こんなにも違う。
私は兵助の心が、彼女に傾いて仕舞わないか不安で仕方なかった。

「でも、私じゃぁきっと兵助を引き止められない…」

だって、そうでしょう?
人は誰だって綺麗な方を好む。
私が黒の梅雨なら彼女は白の梅雨。汚れたところは一つもない。
白は好きな色に染まれるけど、黒になってしまったら、戻せないから。

私には、彼女に敵う気がしなかった。


白紙に千の色を足して

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