ある時兵助が一人の女の子を拾ってきた。
その女の子は蛙吹梅雨さんといい、偶然にも私と同姓同名だったことに、私は酷く驚いた。
今まで、同じ名前や同じ名字の人に会ったことはあるけれど、名字も名前も一緒の人は初めてである。

彼女は突然空から降ってきたんだ、という兵助の話を聞きながら、私は兵助の影に隠れるようにしてそこにいる梅雨さん(何か変な感じ)を観察した。
着ているものは、私たちとは大分違う、南蛮のもののようだ。髪の色も、私と違う明るい茶に染まっていて、体はほっそりとしていて、手だって綺麗。顔も、そこらにいる女の子より全然可愛くて。
同じ名前なのに、やっぱり外見は違うなぁと、私はそんな感想を抱いていた。

それにしても、兵助はよくこんな(と言っては失礼かもしれないけど、)素性の知れない女の子を連れてきたものだ。

「だって、名前を聞いたら梅雨って言うから…何となく、放っておけなかったんだよ。それだけ」
「ねぇ、それって私、自惚れてもいいのかな」
「…勝手にしろ」

ぷい、と横を向いてしまった兵助を見て、私はくすくすと笑った。
普段は冷静な兵助が、私のことになると、こうも気持ちを表してくれるだなんて。
嬉しくて、頬が緩みそうだった。

「ねぇ、私もあなたと同じ‘蛙吹梅雨’って言うの。よろしくね」

梅雨さんはびっくりした顔のまま、こくこくと首を振り、兵助の装束をきゅっと掴んだ。
その表情が女の私からしてみても可愛らしく、庇護欲を誘った。
くのたまである私には、もはやできない種類の笑顔である。

悪い予感は、この時既にあったのかもしれない。


登場人物は二人だけ

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