前々から気になっていた睫毛を触らせてもらう。
長くて、まるで女の子みたいなそれ。
だけど女の子でも早々いないと思う。この長さは。

「梅雨、まだ?」
「もー少し」

兵助は、私に睫毛を触られていることがどうやらご不満のようで、さっきから「まだ?」「もう少し」を繰り返している。
減るもんじゃないんだからいいじゃないか。
そう思う私の腰に腕を回している兵助が、少しだけ目を伏せた。
わっ、やっぱり長い。

「なぁ…こんなこと、いつまで続ける気だ?」
「なに、兵助は私に触られるの嫌?」
「嫌とかそうじゃなくて…」

これだけ顔が近ければ、接吻したくなるだろう。
と、普段は色にも興味なさそうな優等生が言った。
接吻…そうか、兵助はそれを我慢してたのか。

ふいと横を向いて私をみない兵助のおでこに自分のおでこをくっつけて、私は囁くように言った。

「我慢、しなくていいのに」
「そしたら限りがないだろ」
「そんなに私のこと想っていてくれてるの?嬉しいなぁ」

本音を零せば、腰にあてられていた腕がいつの間にか頭の後ろに回り、ぐっと引き寄せられる。
ようやく重なった唇。

兵助は一度唇を離したあともう一度口付けて、ボソリと言った。

「…そうだよ。いつだって俺は梅雨のことを考えてる。寝る間も惜しむくらい、」
「そんな兵助くんに、私から贈り物があります」
「何?」
「これから思う存分、口付けていいよ」
「えっ?」
「心ゆくまで睫毛を触らせてくれたお礼」

恋人同士でこんな贈り物、あっても意味ないんだろうけど。
私が微笑むと、兵助は緩く口元に弧をえがき、嬉しそうに私のあごを持ち上げた。

「好きなだけ、いいんだな」
「好きなだけ、どうぞ」

むしろ私こそ望んでいますよ、と心の中で付けたし、ゆっくり近付いてきた兵助の顔に目を閉じる。
最後に見えた兵助の顔。
やっぱり睫毛が長い。

そんな、恋人たちのひと時。


好きなだけ


柚姫ちゃんお誕生日おめでとう!
つたない文章でごめんね;
これからも仲良くしてね☆

みどりーぬ
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