目が覚めたのは何時だったのだろう。外はまだ暗い。真夜中だ。
今日は寝たのが早かったから、自然と目が覚めちゃったのかな。少し体をよじったところで、右手が勘ちゃんと繋がったままでドキッとした。
勘ちゃんの体温、あったかい…幸せ。
少しだけその手をたぐりよせて、両手で包んだ。勘ちゃんは眠ってる。

「勘ちゃん…今日はごめんね。せっかく会いに来てくれたのに…」
「………」
「私が、口の中を火傷なんてするから」

「は?」

間抜けな声が聞こえた。視線を向ければ、それまで目を閉じて眠っていると思っていた勘ちゃんが、私を見てポカンとしていた。

「勘ちゃん…起きてたの?」
「あぁうん、あんまり熟睡はしないから……って、そうじゃなくて梅雨、今日俺を拒んだのって、口の中を火傷したから?」
「うん…だって、その、触れられると痛いし…」
「じゃぁ月のものとかじゃないんだね?」
「ち、違うよ!」
「あー、良かった…俺を拒むくせに血の匂いがしないから、てっきり嫌がってたのかと」

勘ちゃんは長い息をはいて、片手で自分の目を覆った。
そんな…いくら拒んだからって、嫌がってた訳じゃないのに…口の中が痛かったから、深い口付けはできないかなって思っただけで。私だって本当は勘ちゃんにもっともっと甘やかされたかった。

繋がった手を引っ張られたかと思ったら、私の体は勘ちゃんに抱きしめられ、組み敷かれていた。あっという間の出来事で、私は目を丸くする。

「か、勘ちゃん…?」
「痛いなら、口の中はあんまり触れないからさ。その代わり他は触っていいでしょ?」
「う……ん、」
「梅雨が、少しでも俺の気持ちを振り回したお仕置きもしないとね」
「え!?」

お仕置きって…

「やだ…痛いことしないで…怖いのも嫌…」

上にいるのがいつもの勘ちゃんじゃない気がして、私はやめて欲しいと懇願した。しかし勘ちゃんはくすりと笑うと、

「大丈夫だよ。梅雨が怖がることは一切しない」
「本当?」
「うん。それにどちらかというと…恥ずかしいこと、かな?」

勘ちゃんが笑った理由が、その時の私にはわからなかった。




互いの夜着を取り去り、私たちは生まれたままの姿で抱き合う。勘ちゃんは、いつも沢山する深い口付けの代わりに、全身に口付けて私を愛してくれた。

「ん…ぁ、かんちゃ…」

そのせいか。
体はいつもより余計に感じるようで、早くも私は勘ちゃんを欲しくなってしまった。だけど、そんなこと恥ずかしくて言えない…。

「勘ちゃ、そこ…や…」
「どうして?梅雨の体、凄く嬉しそうに揺れてるけど」
「だって、そこばっかり……わたし、もう…」

限界に達して、体のあちこちを触れていた勘ちゃんの頭を引っ張ると、口付けをねだった。少しだけ舌が入ってきて、ひりひりした。

「はふっ、勘ちゃん…」
「梅雨、可愛い。泣きそうな顔してるよ」
「それは勘ちゃんが…!」
「俺が、何?」

ふっと耳に息を吹き掛けられる。そんな艶っぽい声で囁いたりして…卑怯だ。背筋がぞわりと震えた。

「梅雨のここ、もうぐちゃぐちゃだね」

勘ちゃんの指が足の間を滑る。その言葉通り、私の足には付け根から溢れ出した液が伝っていた。
恥ずかしくて、勘ちゃんの首に顔を埋める。

「かん…ちゃ、あっ、あん、」
「ほら、もうこんなに音立ててる。聞こえるでしょ?」
「そんな…っ、知らな、んんっ!」
「素直じゃない梅雨には、まだ満足させてあげられないなー」

い、いじわる…!
勘ちゃんの手はふとももの上を滑りながら、足の付け根へと指を埋める。ゆっくりとじわじわした動き。それ自体はいつもと変わらないのに、今日の私はそれだけじゃ物足りなかった。

「あぁ…あん、かんちゃ…おねがい…っ、あっ」

勘ちゃんの首に抱き着いて、必死にお願いした。
もっと強い刺激が欲しい。勘ちゃんが欲しい。それよりも…

「勘ちゃんで、私のこと、めちゃくちゃにして…!」

我慢できなくて、ついそう叫んでいた。
ぽかんとした勘ちゃんの顔が見えたけど、すぐに笑って、四つん這いにさせられた。勘ちゃんは私の腰を掴んで高く持ち上げる。

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