「色々考えたんだけどさ…俺、梅雨に俺の子供を産んで欲しい。俺が子供好きだからとか、それだけじゃなくて……俺、梅雨のことが好きなんだ」
「!?」
「いつもこの町に帰ってきてホッとする。あの店に行って、梅雨の顔を見ると凄く安心して…やっぱり俺の帰る場所はここなんだなって、無意識に思ってた。あいつには悪いけど、自分の家に帰っても、同じ気持ちにはなれなかった。梅雨に会った時のような気持ちには…」
「竹谷…さ…」

竹谷さんは私を自分の胸に押し付けて、ぐっと何かに堪えている様子だった。こんな時、私は何と声をかけていいのかわからない。仮に夫婦仲が冷めていたのだとしても、竹谷さんは全力で愛する人にぶつかっていく人だから、離縁したことが悲しくないはずがない。裏切られて苦しくないはずがない。
私にできるのは、そっと竹谷さんの背中に私の腕を回すくらいだ。
大丈夫ですよ、と安心させるように。何度も何度も撫でた。

ようやく体の力が抜けた頃、竹谷さんは私の顔を覗き込んで言った。

「なぁ梅雨、俺のこと好きか?抱かれる以上のことをされても、許してくれる?」

私は頷く。

「なら……俺の子を産んでくれねぇか」

それで、梅雨さえよければ夫婦になろう。
俺は梅雨のいる場所に帰ってくるよ。

囁いてくれた竹谷さんに、私は「その言葉が聞きたかったんです」と涙を零して強く抱き着いた。

「そっか…なら随分と待たせたな」
「いいんです。叶うはずがないと思っていた願いですから…」
「必ず梅雨の元に帰ってくると約束する」
「えぇ、信じてます」

だから、これからは望んでいいのだろう。我慢もしなくていいのだろう。堂々と二人で歩いていたとしても、後ろ指をさされることはない。そりゃ、事情を知っている人が私たちを見たなら、いい気はしないだろうけど。
私はずっと竹谷さんを好きでいていいんだ。その事実がどうしようもなく安心させ、幸せで、涙が止まらなかった。夢ならずっと覚めなくていいと思う。

「竹谷さん…好きです、もっと愛して下さい…」
「姫君のお望みとあらば」

なんて、茶化すように笑って。竹谷さんは口付けた。何度も何度も、互いを確かめるように…
多少なら、声が抑え切れなくてもいいかと思った。雨の音が、全てを掻き消してくれる気がしたから。


雨の降る町

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