目を覚ますと、腕の中に蛙吹がいた。
平和そうな顔をしてすやすやと眠っている。
寝顔が可愛いなーと寝ぼけながらに思って、何でこんなことになってるんだ?と、頭を捻らせること数秒。
私はやっと事の次第を思い出した。
そして次に考える事は。

「っ、蛙吹起きろ!遅刻するぞ!?」
「ん……ふぇ?はちや、くん?」

目覚めたのは始業ギリギリだった。




「全くもう…あれだけ言ったのに、僕の言うことを聞かないんだから…」

雷蔵はそう言いながら、膨れっ面をした。
放課後、私は遅刻の罰で空き教室の掃除を言い渡されていた。
面倒な事この上ない雑用だ。
それを、雷蔵に頼んで手伝って貰っている。

「大体、僕は言ったよね?君が何かすると、僕にまで被害がくるって…」
「悪い」
「そう思ってるんなら、君が夜な夜などこに言ってるか、教えてくれてもいいんじゃない?」
「それは――」

さすがに言えない。
そう思った時、教室の戸が開いて蛙吹が現れた。

「あれ?鉢屋くんに、不破くん?」
「蛙吹さん…どうしたの?こんな場所に」
「あ、私今日寝坊しちゃった罰で、ここの掃除を言い付けられたんだけど…」

そう言った途端、雷蔵はへえ?と笑顔を浮かべたまま私を見た。
咄嗟に目をそらす。

「何だ。散々否定しといて、やっぱりそういうことだったんじゃないか」
「いや、雷蔵違う…これには深い事情があって…」
「蛙吹さんが来たんなら、僕が手伝う必要はないよね?後は二人で頑張って」

雷蔵はそれだけ言い残し、教室から出て行ってしまった。
誤解されたと落胆する私に、蛙吹は目をきょとんとさせている。

「何かあったの?不破くん行っちゃったけど…」
「うん。いや、いい。後でちゃんと話すから」
「うん?」
「それより早く、掃除しよう…」
「あ、やっぱり鉢屋くんもそうだったんだね!一人じゃなくて良かった!」




「で?」
「だから、蛙吹の部屋に行ってたのは事実だけど…別に何にもしてないし」

というのは嘘だけど。

「じゃぁ何の為に彼女の部屋に通ってるのさ」
「それは…あいつに、人には言えない相談事を持ち掛けられてて、」
「ふぅん…蛙吹さんはよっぽど三郎のことを信頼してるんだね。それか、好きとか」
「ら、雷蔵!?何を言ってるんだ!?」
「それに、三郎こそ蛙吹さんのこと満更でもないんだろ?」
「な、何で…」
「だって、いくら相談に乗ってるからって、好きでもない子の為に毎晩通ったりしないよ。特に昨日なんか、あんなにくたくただったのに」

雷蔵の言葉に返す言葉が見付からない。
私が蛙吹を好き?
そんなばかな…私はただ、蛙吹に指導してやっているだけで…
恋愛感情なんて、これっぽっちもない。
うん、ある訳がないんだ。

「全く、君も素直じゃないなぁ」

雷蔵の、笑っているが少し呆れたような声を、耳を塞いで拒絶してしまいたかった。

「昨日のことはもう許すけど…次はないからね?朝帰りするのはいいとしても、時間だけはちゃんと守ってよ?」
「…わかった」
「うん。じゃぁ、いってらっしゃい」

初めて雷蔵に見送られながら、私は蛙吹の部屋に向かった。
途中、雷蔵の言葉がぐるぐる頭を回る。
私が蛙吹を好きだと?
好きなら好きと、とっくに気付いて想いを伝えているはずだ。
私の場合。
しかし実際はそうでない。
だから、私が蛙吹に恋してるなんて言うのは、雷蔵の思い込み。
勘違い。
私は、蛙吹のことなど…――



「…鉢屋くん?」
「…、え、あ、何だ?」
「うん…何か心ここに在らずって感じだったから…」
「あぁ、悪かったな」
「ううん、無理してないならいいの」

蛙吹は私の一物を握ったまま、ふわっと微笑んだ。
畜生、なんか可愛い。
雷蔵に言われた日から、私は蛙吹に対して時折探るような視線を向けてしまう。
例えば、こいつに好きな男でもいるのかなとか。
私のをくわえていて、実際どんな気持ちなんだろうとか。
口淫するのも大分上手くなったな、とか。
蛙吹は唾液をたっぷり私のそれに垂らすと、口の中で丹念に舐め回す。
正直気持ちいい。

「ふ…ちゅ、んん…んっ…んっ…んっ……」
「――はぁ、あぁ、いい……良くなったじゃないか」
「んっ…んん……ぁふ、ん…ちゅう…っ」

顔を上下に動かす蛙吹の髪を耳にかけてやり、身を任せる。
初めは接吻一つで顔を真っ赤にしていた蛙吹が、今じゃ口淫しながら自分の体を濡らすことができる。
大きな進歩といえば進歩。
だけど私は何か寂しい。
蛙吹が上達するということは、私の指導も終わりに近付いているという訳で…
実際、そろそろその時が迫っているのだろう。
達する限界のところで顔を上げ、手で緩く扱きながら、蛙吹は私を見上げた。

「鉢屋くん、あのね」
「ん?」
「私…実習が決まったの」

ビクリ。
考えていたことが的中し、蛙吹の掌で一物が揺れた。

「そうか…そろそろだと思ってたが」
「私、上手くなったかなぁ?ちゃんとできると思う?」
「あぁ…蛙吹ならできるよ」

何せ私の指導のお墨付きだ。

「そっかぁ…良かった!鉢屋くんに言って貰えると、凄く自信がつくよ」

蛙吹は笑顔で喜んだ。
嬉しいか…だけどその反面、私は悲しくてたまらないけどな。
蛙吹は喜々として話を続けた。

「相手の忍たまは、同じ五年生の久々知くんでね…あ、本当はこれ言っちゃいけないんだけど、鉢屋くんだから、特別ね。内緒にしてね?」
「あぁ…」

しかもよりによって相手は私の友人か。

「仲の良いくのたまには、久々知くんなら大丈夫だよって言われて……彼、豆腐食べてるところしか記憶にないから、ちょっと想像できないんだけど、」
「あぁ…」
「鉢屋くんに教わった方法で、満足させられればいいなって思う…本番は私きっと、いっぱいいっぱいだろうから」

と、蛙吹は笑った。
その頬を撫でて、私は蛙吹の体を上に引き上げる。

「、鉢屋くん?」

蛙吹はきょとんとした顔で私を見ている。
体を布団に埋めて、赤く熟れた唇に吸い付いた。
少しだけ、抵抗される。

「んっ…ふ、や……ん…はぁ、ど…したの、急に、?」
「兵助を満足させる前に…私を満足させてくれないか?」
「え、?」
「大丈夫…最後まではしない。そこは守る」
「ちょ、鉢屋くん?ねぇ、本当にどうしたの――っ、!」
「私に身を任せて、感じてくれればいいから」

蛙吹に深い口付けを施しながら、手を乳房に這わす。
指導が入った手つきではない。
これは、男が女を抱く時のやり方だ。
反応を見ながら、乱れた姿をもっともっと見たくて、力加減を変える。
感じる場所を探る。
蛙吹は私が触る度に、甲高い声を上げた。

「あっ、はぁ…!は、ちやく、なんでこんな……んっ、いつもとちがうよぉ…っ」
「本番なら、そんな悠長に事は進まない。実習も決まったんなら、流れを覚える為にも、今はそのまま…」
「ん…はぁ、やぁ……ふ、んんっ…!」

快感に身を悶える蛙吹の体を愛撫しながら、隅々まで指を這わす。
蛙吹は泣いていた。
悲しみではなく、与えられる刺激に堪えて、涙を零していた。
それを見ると私は嬉しくなる。
一通り蛙吹の肌を堪能した後、両足を広げて陰部をあらわにする。
くぱぁ、と割れた間にそそり立つ男根を挟み、先端が肉芽に当たるように動かした。
そのまま蛙吹の足を閉じ、肉の間に私が収まる。
蛙吹は不思議そうな顔をして私を見つめた。

「素股っていう…本番にはならないが、似たようなものだよ」
「すまた…?」
「蛙吹が濡れてるから、そう悪くもない。一緒に気持ち良くなれる」

それだけ告げて、まだ理解できていない蛙吹を前に、腰を動かす。
途端に強い快感が走り、それは肉芽を擦られている蛙吹も同様だった。
泉から溢れ出た粘膜が手伝って、滑りを良くする。

「ひゃぁ!うん、あっ、はち…やくん、なに、これぇ!ひん、あん!」
「気持ちいいだろうっ…?本番は、これに似た事をするんだよ、」
「ふぁっ、あん…あっ…あっ…あっ…あぁ…っ!」

ぐちゅぐちゅと液体の擦れる音がする。
蛙吹は快感に我を忘れて声をあげ、突き上げる度に胸を揺らし、乳首を尖らせた。
そうしてると、まるで本当に蛙吹を犯しているようだ…
蛙吹と一つになっていると錯覚できる。
私の気持ちは、一つだった。
嗚呼、私は蛙吹が好きなんだ…
いつの間にか恋をしてしまった。
できれば実習なんて受けさせず、私が抱いてしまいたいと何度も思う。
突き動かした腰が止まらなかった。

「はぁ、蛙吹…っ」
「あぅ、はちやくん…あっ、あんっ、あっ、あ…!」
「っ、達しそうだ………梅雨…っ」

梅雨の足をしっかり掴んで、男根に擦り合わせる。
もう、限界だった。
乱れた梅雨の姿に、耳に届く声に、擦れる陰部に…
私のそれは、解放することを望んだ。
ぬちゅぬちゅと濡れた壁の中、私の出した先走りと混ざって、滑りは十分。
私は快感に打ちひしがれる梅雨の顔を見ながら、自分の欲望を吐き出した。

「っ―――!」
「ひぁん、あっ!あっ…あ…ぁぁ……っ」

私が達する直前、びくんと震えて、梅雨も絶頂にたどり着く。
互いに迎えた終着点で唇を貪り合い、見つめ合った。

「はちやくん…」
「三郎でいい。そう呼んでくれ…」
「三郎くん…」

切なそうに私の名前を呼んだ唇を、もう一度塞いだ。

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