今日はクリスマス。
冬休みに入り、私は友達の家でクリスマスパーティーをした。
みんなでお菓子や飲み物を持ち寄って、昼過ぎからずっと。
夜になって解散する頃には、お腹はいっぱいだし、久しぶりにはっちゃけた感で満たされた。
それでも別れる時には少し寂しくて、火照った体を外気で冷ましながら歩く。
街にはカップルが溢れかえっていて、みんな凄く幸せそう。
私はそっと、コートの下にあるネックレスを握りしめた。
確かにそこに存在することを確認したくて。

(今朝、三郎さんが贈ってくれた…クリスマスだから、プレゼントだって)

クリスマスシーズンは、三郎さんもあちこちのパーティーにお呼ばれして、凄く忙しい。
だからしばらく連絡も取れないだろうと思って、私は三郎さんにクリスマスカードとベルトを贈った。
連絡はしていない。
でも、落ち着いたらきっと気付くだろうと思って、余計なことはしなかった。
三郎さんは一生懸命働いてるんだもん。
お嫁さんだったら、それくらいのことはわからないとね。

自宅に着くと、出迎えてくれる人は誰もいなくて、ああそっか、お父さんもお母さんもパーティーに行ってるんだと思い出した。
二人とも、今夜は帰ってこない。

私は疲れた体を癒すべく、さっさとお風呂に入り、テレビでも見ることにした。
今年はイルミネーションはほとんど見てないけど、テレビならきっと映るだろう。
それで、のんびりしよう。
散々食べた後だけど、アイスくらいはいいよね。
だって今日はクリスマスだもん。



うつらうつらとして、テレビの音で目が覚めた。
日付はまだ変わっていない。
画面の中は、まだまだ騒がしかった。


「…いいな」


たった1年だけど、されど1年。
あと4ヶ月の辛抱…春になったら、三郎さんは帰ってくる。
そう思っても、テレビの中のカップルが仲睦まじく映っているのを見ると、自分の状況がどうしようもなく悲しく思えた。
気付いた時には、三郎さんにメールを送っていた。


To 三郎さん
-------------
三郎さんは
幸せですか?


なんてバカな――意味のない文字の羅列だろう。
私は、そうまでして三郎さんの気を引きたかったのだろうか。

電源を落とそうとして、すぐに電話が来た。
三郎さんだった。
私は恐る恐る通話ボタンを押す。


「もしも…」
『梅雨、無事かっ!?』
「三郎さん…?」
『何があった?ストーカーにでも遭ったのか!?痴漢か!?それとも学校の男に…』
「三郎さん、大丈夫だよ。三郎さんが思っているようなことは全然ないから」
『そう…か、なら良かった…』


本気で安心する三郎さんがおかしくて、私はくすくすと笑ってしまった。
だって、ねぇ。
全部男の人に関わることで心配してるんだもん。
嬉しいけど、なんかおかしい。
すると気配が伝わったのか、今度はむっとした声が流れてきた。


『お、ま、え、は…何笑ってるんだよ』
「え?いや、別に何でも…」
『嘘付け、バレバレだっつーの。…はぁ、何かあったのかと思って電話したっつーのに』
「三郎さん」
『結局何でもないただの冷やかし?いたずら、か』
「ねぇ三郎さん」
『なぁ、……梅雨?』


気付いてよ。

私が今、泣きそうなくらい寂しいってことに。
単純な理由でも、何でもいいから声を聞きたかった…会いたくて仕方がなかった。
三郎さん、気付いて…


「………」
『………』
「………」
『……あー、悪かった』


落ち着いた声で、三郎さんはそう言った。


「何、が」


必死に声を絞り出す。
三郎さんの声は穏やかに、けれどしっかり耳に届いた。


『全部…梅雨が泣いてるのも、淋しがってるのに会いたくても会えないのも、全部俺のせいだから』
「そんなこと、ないよ…」
『だって梅雨、泣いてるだろ?』
「……まだ、」
『まだなんて関係ない。…あーくそ、悪い、ごめんな…』


三郎さんはさっきとは違った声色で私に言った。
何でだろう。
三郎さんに謝られると、気持ちが抑えられない。
今まで我慢していた気持ちが溢れ出す。


「三郎さん、会いたいよ…」
『梅雨…』
「電話じゃなくて、会って顔見て、それで抱きしめて欲しい。三郎さんに触れたい…」
『…ああ、』
「もっともっと、話したいことだって沢山あるのに…三郎さんはいつもいなくて、」
『ん、』
「ずっと、ずっと三郎さんが帰ってくるのを待ってるの」
『…うん、』
「三郎さん、大好き。会いたい、早く、早く…」
『俺も…会いたい』
「わかってるの、ごめんなさい。三郎さんはお仕事大変だって…だから普段はそんなに言わないけど、でも、でも…」
『我慢するな、』

「凄く…会いたくて会いたくて、仕方がないの」


三郎さんが恋しいよ、と、その言葉と同時に涙が零れ落ちた。
ひっく、と喉が鳴る。
止まらなかった。


『梅雨…ごめんな、愛してるよ』
「っう、三郎さん…」
『いつも寂しい思いをさせてごめんな…電話もメールも、仕事を理由にして出ない時もある』
「っ、うん…」
『それでも俺が世界で一番大切にしたいのは梅雨で、梅雨が待っててくれると思うから、俺も頑張れるんだ』
「私も…っ三郎さんに、相応しいお嫁さんになりたい…」
『ばか、お前はそのままでいいんだよ。今のままで十分だ…愛してるから。あんま頑張るな』
「でも…」

『なぁ、会いたいな』
「…うん」
『今日はクリスマスだっていうのに、梅雨に会えないって、どんな拷問だと思う』
「私だって…そうだよ。街に出てもテレビ付けても、カップルばっかりで…」
『だよな…。決めた、来年は絶対に梅雨と二人で過ごす』
「本当に?」
『あぁ』
「お仕事あったらどうするの?」
『行かない。休みをとるさ』
「でも…」
『…何、嬉しくないのか?』
「そんなことないよ!」
『はは、良かった…なら約束だな。来年のクリスマスは朝から晩まで一緒にいて、出掛けて、買い物したり映画観たり…腹がすいたら夜景の綺麗なレストランで食事するんだ』
「うん」
『そしたら、その後は家に帰ってゆっくりしてもいいし、ホテルに泊まってもいい。もちろんその場合はスイートな。で、朝までずっと抱き合ってる』
「眠らないの?」
『梅雨が寝たいなら寝てもいいよ。寝れたらの話だけど』
「三郎さん…」
『だから梅雨も、来年は友達と約束なんてするなよ。俺と一緒に過ごすって約束だからな』
「うん。…あのね、三郎さん」
『何だ?』

「大好きだよ…メリークリスマス」
『…メリークリスマス』



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