「梅雨さん!」


僕が呼ぶと、梅雨さんは一瞬肩を揺らした後、ゆっくりとこちらに振り返った。


「小松田くん…」
「この間は、ごめんね。ずっと謝りたかったんだ」
「ううん…私の方こそごめん。突然、泣いたりして…」


梅雨さんは僕と目を合わせないまま、俯いた。
僕はあれ以来、ずっと梅雨さんに謝りたくて仕方がなかった。だけど、こんな時に限って吉野先生からは用事を言いつけられるし、梅雨さんは梅雨さんで必要最低限のことしか話をしてくれなくなった。だから僕は困っていたんだけど、門番をしている合間に、今日ようやく謝ることができた。
梅雨さんはまだ、僕を前にして戸惑っているようだけど、思ったよりは普通に接してくれて良かった。
僕は梅雨さんにあげようと思っていた花を渡して、梅雨さんに言った。


「小松田くん…?」
「これ、梅雨さんにあげます。綺麗な花だったから、梅雨さん喜ぶと思って」
「そんな、そこまで気を遣ってくれなくて良かったのに……だけど、ありがとう」


梅雨さんは照れ臭そうに笑った。その笑顔は、いつもの寂しさが混ざったものじゃなくて、凄く可愛かった。やっぱり、梅雨さんは泣いてるより笑ってる方がいい。もっともっと、笑って欲しいな。僕のために、梅雨さんに笑って欲しい。

そう思った時、僕はようやっと自分の気持ちに気付いた。
僕は梅雨さんが好きなんだ。
好きだから気になるし、寂しい笑顔はして欲しくない。優しくて明るい梅雨さんが、僕は凄く好きなんだ。


「梅雨さん、僕、梅雨さんのことが好きです」
「…えぇ!?」
「だから、これからもずっと笑ってて欲しいな。そのためだったら、僕、何でもするから」


驚く梅雨さんの前で、僕は自分の気持ちを告げた。

ねぇ、梅雨さん。嘘じゃないよ。
僕は梅雨さんの笑顔の為だったら、何でもしてあげたい。その気持ちに偽りはないから。
だからどうか、僕の気持ちに応えてください。



溶ける花


その後、僕を探していた吉野先生に呼ばれて、梅雨さんの返事を聞くことはできなかった。
吉野先生は、自分が栽培していた花が誰かに摘み取られてしまったと言ってカンカンに怒っていたけど、その時の僕は梅雨さんのことしか考えられなくて、そうなんですか、と曖昧な返事をしてしまった。そしたら後で、その犯人が僕だっていうことがわかって、もの凄く怒られた。
僕が吉野先生に怒られているのを、梅雨さんが心配そうに見てたけど、できれば、気にしないでって一言伝えたい。吉野先生には怒られちゃったけど、今の僕は梅雨さんに告白できたことで、凄くすがすがしい気持ちになっているから。梅雨さんは、悪くないんだよ。

吉野先生に怒られながら、僕はふと、そんな事を考えていた。


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