いつものように学園の入り口で、掃除をしながら人の出入りを見張る。
僕は忍術学園の事務員で、でも本当は忍者になりたくて、働きながらどこかの城に勤められるよう、仕事がない日には面接に行ったりして、毎日を過ごしていた。周りのみんなは僕は忍者どころか、事務員でさえ向いてないって言うけど、僕は諦めたくない。
だから僕は、僕ができる唯一の仕事に精を入れて、門番に立つ。いくら失敗ばかりするマニュアル小僧と言われる僕だけど、忍術学園に出入りする人だけは絶対に見逃さない。例えどこからやってこようと、見つけて、追いかける。もちろん、勝手に出ていく人もいるから、追いかけてサインをもらうんだ。
吉野先生にはよく怒られるけど、たまに褒めてくれることもある。ほんとにすごくたまーにだけどね。

そんな、事務員の仕事もダメダメな僕だけど、最近少し気になることができた。
それは同じく事務員として働いている、梅雨さんのことだ。梅雨さんは学園長先生の知り合いらしく、二カ月前に忍術学園にやってきて、すぐに事務員として採用された。話から、家は結構裕福だったことがわかったけど、梅雨さん自身は名字で呼ばれることを嫌っていて、彼女のことはみんな名前で呼んでいる。
梅雨さんはとても優しくて、初めて会った時僕が桶の水をぶちまけても、怒らなかった。少しだけ苦笑して、濡れた着物を手ぬぐいで拭いていた。そして僕が悪いのに、大丈夫ですか?と声をかけて、笑ってくれたのだ。

そんな優しい梅雨さんはみんなから凄く好かれている。僕だって、事務員として新米の彼女にもう何度も助けられて、いい人だなと思っている。だけど、ほんの少し、違う意味で気になることがあった。
彼女は誰にでも優しい。笑った顔は可愛い。でも、その笑顔にはどこか寂しさが隠れていた。



「小松田くん」
「梅雨さん、どうしたの?」
「吉野先生がね、小松田君のこと呼んでて。入門表は私が預かるから、行っておいでよ」
「そっか、ありがとう」


僕は入門表を梅雨さんに渡すと、すぐに吉野先生のところに向かうことにした。
今見た梅雨さんの顔は、薄く微笑んでいる。やっぱり綺麗だなと思う彼女の横顔には、初めて会った時の姿が思い出されて、事務員の制服はあまり似合っていないような気がした。


「小松田くん、どうかした?」


僕が足を止めて梅雨さんを見ていたから、梅雨さんは不思議そうな顔をして僕に問いかけた。
僕は何でもないよ、と言いかけて、口をつぐんだ。その代わり、ずっと気になっていたことを口にした。


「梅雨さんて、よく空をみてるよね。どうして?」
「やだ、見られてた?」
「なんとなく、寂しそうな顔をしてたから。気になってたんだ」


僕の言葉に、梅雨さんは困ったような笑みを浮かべた。
多分、言いたくないんだろう。言葉にはされないけど、それくらいのことは、さすがの僕でも察しがついた。


「ごめんね、変なこと聞いちゃって」
「ううん、私の方こそごめん。これからは、気を付けるわ」


くるりと踵を返して、吉野先生のところに向かう。
梅雨さんはその後も、空を見上げていた。



しい彼女は空を見て

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