【尾浜勘右衛門の場合】

携帯を開いたら、既にメールが届いていた。
「今日はどっちで会う?」と送ってきたのは、恋人にして幼馴染の勘右衛門である。
私はリダイヤルで、最近かけた番号の中から勘右衛門の名前を引っ張り出して、通話ボタンを押した。
すぐに繋がる。

『もしもし、どうした?』
「あ、勘右衛門悪いんだけど私調子悪くってさぁ…今日パスにしてくんない?」
『はぁ?何かあったのか?』
「何か…てか生理痛が酷い」
『なっ…!』
「ついでに言うとナプキンの予備がもうないんだわ。だから今日は家から出られない。もし優しい勘右衛門がうちに来てくれるのなら、コンビニで羽根付き買ってきてくれると嬉しいなーなんて思うんだ、け、ど…」
『あほ!女の子がそんなこと口にするなよ!!』
「…あー、やっぱり怒った」
『当たり前だろう!!』

勘右衛門とは生まれた時からの付き合いのせいか、昔っから私のすることには何かと口を出してくる。
遠慮ない物言いはまさにオカン。
という訳で私は今日も怒られた。
さてさて、純情な幼馴染が私のお願いをどうやって聞いてくれるのかしら…

「梅雨!」

バン!と遠慮なく部屋のドアを開けた勘右衛門の顔は、誰がどう見ても真っ赤だった。

「勘ちゃん来てくれたのねー嬉しいわー」
「その棒読みやめろって!」
「はいはい。で、優しい勘右衛門は私の為にナプキン買ってきてくれたの?何かやたら早かったけど」
「〜〜〜っ、持ってきたぞ!ほら!!」

え、と思ったらズイッと目の前に差し出されるそれ。
袋の中には私の知らないメーカーのナプキンが、数個入っていた。
パッケージはなし。

「え…まさか勘右衛門、残りは勘右衛門が使っ」
「違うから!お前がないって言うから、焦って…妹に貰ってきたんだよ!!」
「は」
「あぁぁもう全部お前のせいだからな!!」

びっくりする私の前で、勘右衛門は真っ赤になって叫んだ。
ちょっと待って…妹に頼んだって、それ、相手が私だってバレてんじゃん!

「ちょ、何考えてんのよ!コンビニ行ってくれば済むことなのに!」
「男の俺が買える訳ないだろ!?下手に近所の人に見られたら、俺の立場がなくなる!」
「そこを上手くやってくれるのが彼氏の役割だって言うのに…!」
「お前彼氏の意味絶対間違えてるから!俺は召し使いじゃないって!!」

私の部屋でギャーギャーと言い合う。
ちなみに窓が開けっ放しだということは後で気付いた。

勘右衛門はやっぱり、彼氏というよりオカンみたいだなぁと思った一日だった。
しかし勘右衛門の妹はどうしよう…しばらく顔合わせにくいけど、お礼は言わなきゃね。
あーもう、全部勘右衛門のせいだ!


結論:尾浜は純情で外で買うなんてことはできない。だから妹を頼るが、それもこれも恋人の為に必死になって、何とかしなきゃと思うからである。

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