一応、だが…こんなことを言っている私は久々知兵助の彼女である。
…さっき、豆腐に負けちゃったけどね。私、かわいいなんて言われたこと、ないしね。


はあ、とため息をつく。

そうすると、兵助がまた「かわいい」なんて呟いた。
私は豆腐を愛でている彼が好きだ。…というか、私は兵助が好きだから。
豆腐をいとおしそうに見つめる彼の瞳はキラキラ輝いてる。
でも最近は…、複雑だったりする。ちょっとした嫉妬だ。
彼の方を見る気がおこらない。

私は彼のキラキラした瞳を思い出しながら、…そんな瞳で自分が愛されたい、とひそかに想った。

この状況を見ればわかると思うけれど、そもそも告白したのは、私からだった。
あっさりフラれると思っていた私は、お付き合いを兵助に了承されて、私は幸せな気分に浸った。

彼を見ているだけで、一緒の時間を共有するだけで幸せなのは今もかわりない。
尾浜との世間話も楽しいし、兵助も楽しそうだから良いと思ってる。
私は、なんだか最近ある複雑な心境が、心のなかでしんみりとした気持ちにまとまった。こんな恋愛も良いなあ、なんて思う。
むしろ、贅沢すぎるかもしれないな、私。

口付けも身体を重ねたこともないけど、兵助が私と傍に居て笑ってくれてるのは、私と居て落ち着いてるんだ、と思えるから。

でも今は夜で、もうお月さまもてっぺんに昇り始めている。
かわいい、なんて呟いた新たな兵助の一面を知ることが出来たし、さすがに部屋に帰ろうかな、なんて思う。尾浜は帰ってこないけど、また明日話すれば良いし。

「兵助、私…」


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