今日は諒子の初授業日である。
諒子が担当している“東洋魔術”の授業は5年生以上が対象である。

その初授業は、5年生のレイブンクローとハッフルパフの授業だ。



「きゃーっ!きょーこちゃん!きょーこちゃん、いつ見てもお美しいっ!」

そう、レイブンクローの5年と言えば、先ほど諒子と強烈な出会いをした強烈な人物、ルクレツィア・アンドロシュがいたのである。



諒子は彼女を見つけ――まあ、大声あげているのだから見つからない方がおかしいが――内心戸惑いつつもいつもの無表情を崩さなかった。




「……教科書の4ページを開いてください」

「きょーこちゃんは照れ屋さんだなあ」

「ちょっと、会長!授業は静かに聞きましょう!梗子様の麗しい美声が聞こえないじゃないの!」

ブラウンヘアーの女生徒がルクレツィアのプラチナブロンドをびっと一束引っ張りつつ言った。

「う、副会長、りょーかいした!」

ルクレツィアは頭を押さえつつ、敬礼。
どうやらブラウンヘアーの彼女は副会長らしい。

講義室の最前列でこの会話が繰り広げられた後は生徒たちもまじめに授業を聞いていた。

この授業では実戦的なことはあまりやらず、陰陽術をはじめとする東洋での魔術形態を比較しつつ学んでいく、といった方針だ。

西洋魔術とは手法が違うものが大半であるため、ホグワーツの生徒、つまり魔法使い・魔女だからと言って陰陽術が使えるかといったらそうではない。
実戦などは殆ど無理であろう。


「……本日はここまでです」


授業終了後、続々と教室を後にする生徒たち……かと思いきや半数ほどが教室に残っている。

「きょーこちゃん!」


タタタッと足音を響かせ、教壇にバンッと勢いよく張り付くルクレツィア。

諒子は内心、その元気さに感心していたが飽く迄も無表情である。


「今から質問タイム!次の授業までに20分あるからその間にね!」

「質問……?」

「だって、きょーこちゃん謎が多いんだもん!」

ルクレツィアが、残っている生徒たちに、ね?と問いかければ、うんうん、と頷く。
その生徒たち、実はファンクラブ会員だったりする。



「梗子様!失礼ですが年齢をお聞きしても……?」


生徒その一が挙手しつつ恐る恐る聞いた。
これは、恐らくホグワーツ中の生徒が気になっていることであろう。

明らかに、他の教師と比べて若い。若すぎる。

諒子の方はどうしたものか、と思った。
別に年齢を聞かれるのが不愉快なわけではない。

しかし、生徒からして自分たちより年下の教師というのはどうなのだろうか。
諒子は現在13歳なのだから、本来ならここの3年生にあたる。


「……それなりです」


少々悩んだ後、諒子は結局いい加減にあいまいに答えた。
そう答えた瞬間、悲鳴やら爆笑が上がった。

諒子はこの後も状況に着いて行けないままに趣味、好きな食べ物等、まるで転校してきたかのように質問攻めにあったのだった。
ただし、大半がはっきりしない回答であり、謎の多い教師ということに変わりはなかった。



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