入学式の翌朝、いつものように喪服のような真っ黒い着物で大広間の自分に与えられた席へ。

諒子あてに郵便物が届いた。
フクロウ便の時間ではあったが、実際に運んできたのは普段から怜宮本家で使っている式神であった。

卒業した大学のほうから書物が一般郵便からの転送で来ていた。
中身は最近の研究の論文集だった。


「おーっ!きょーこちゃん!」

郵便物を確認していると、間延びはしていたが、自分の名前が呼ばれた。その方向を見遣ると、全く面識のない女生徒がいた。


「おっはよー、きょーこちゃん!」

「……おはようございます……」

「うーん、今日も超絶絶世美人だねえっ!」

そう言って、テーブルに腰かけ、ニコニコとこっちを見つめるレイブンクロー生。


「……失礼ですが、どちら様でしょう?」

「あ、そうか。レイブンクローの5年、ルクレツィア・アンドロシュ!ルクレツィアって呼んで!きょーこちゃん」

「……」

とてもニコニコしているレイブンクロー生に対し、諒子は内心顔が引きつりそうであった。
しかし、そこは諒子クオリティー、何が何でも無表情である。

「ははは、無表情で驚いていらっしゃる。器用だ。そんな君も大好きだ、ははは」

「……」

「きょーこちゃんのファンクラブができたのでご報告に!ちなみにあたし、会長!」

「……御冗談を」

「ほほほほ、謙遜するな、君は世界一、否、宇宙一の美人さんだ!ははははは!」

「……」

豪快に笑うルクレツィア正直諒子はついて行けなかった。

「って、君、その本、何?」


ルクレツィアは諒子の持っている論文集を指差していった。


「ああ、大学の論文集です。卒業生には定期的に送られるようで」

「大学?卒業生?」


ルクレツィアが目を輝かせている。どうやら諒子は余計なことを言ったようだ。



「……一応」

「え、ほんとに?ちなみに理系?文系?」

「……理系ですが……」

「凄い!ってゆーか、教えてっ!」

ルクレツィアは目を輝かせて諒子の手を握っている。


「いやー。だってさ、魔法魔法って。なんかバカらしくってさ。ここ卒業したらどっか大学受けたいなーと。だってさ、算数もできないような奴が結構偉い地位に居たりするんだよ?あり得ない、そんなバカがいていいはずない」


きっぱりと言うルクレツィアに、隣の魔法薬学教授の雰囲気が険悪なものとなったのが分かった。
魔法を貶せばそうなるに決まっている。



「やっぱ理系かな。よろしく!もう、きょーこちゃん、頭もよくて美少女で、最高!」

「……」



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