そこへ、諒子にいつも厄介ごとを押し付けてくる人物、基、校長が入ってきたものだから事態はさらに複雑となった。

「ダンブルドア先生、シリウス・ブラックは――」

ハリー・ポッターは医務室の主、マダム・ポンフリーに先ほど押し込まれた口いっぱいのチョコレートをやっとのことで飲み込むと、すかさず主張し始めた。

「何てことでしょう!病棟を一体なんだと思っているんですか?校長先生、失礼ですがどうか――」

「済まないね、ポピー。だが、わしはミスター・ポッターとミス・グレンジャーに話があるんじゃ」


癇癪を起こしたマダム・ポンフリーに、校長は言った。


「たった今、シリウス・ブラックと話をしてきたばかりじゃよ――」

「さぞかし、ポッターに吹き込んだと同じお伽噺をお聞かせしたことでしょうな?」


スネイプ教授は吐き捨てるように言った。


「ネズミがなんだとか、ペティグリューが生きているとか――」

「さよう、ブラックの話はまさにそれじゃ」


校長は半月眼鏡の奥から、魔法薬学教授を観察していた。



「我輩の証言は何の重みもないということで?ピーター・ペティグリューは『叫びの屋敷』にはいませんでしたぞ。校庭でも影も形もありませんでした」

「それは先生がノックアウト状態だったからです!先生は後から来たので、お聞きになっていない――」

「Ms.グレンジャー、口出しするな!」


反論したハーマイオニー・グレンジャーに、魔法薬学教授は不快感を露わにしていた。

ぼーっと会話を聞いていた諒子であったが、叫びだされてはさすがに不愉快だった。


「まあ、まあ、スネイプ。このお嬢さんは気が動転しているのだから、それを考慮してあげないと――」

「わしは、ハリーとハーマイオニーと3人だけで話したいのじゃが」


魔法大臣がスネイプ教授を宥めていると、校長が突然そう言った。


「校長先生、この子たちは治療が必要なんです。休息が必要で――」

マダム・ポンフリーが慌てたが、校長はどうしても、と言って譲らなかった。


その時、魔法大臣の方は懐中時計を見てディメンダーが着くころだから、と病室から出ようとした。

諒子はそれを聞いて自分も出口へ向かった。



その後、納得いかない様子の魔法薬学教授が一言二言余計なことを言ったものの、部屋には2人の生徒と校長だけが残されてドアが閉められた。


正直、諒子は何でもいいから早く帰らせてほしい、そう思っていた。



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