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個性が発現したのは3歳の夜。生まれつき、どこにも異常がないのに足が動かなかった俺を風呂に入れてくれていた父親が発見した。というかいきなり下半身が魚になったのを見て驚いて大絶叫したらしい。お父さんのあんな絶叫聞いたの初めてよと母はよく言う。
兎にも角にもどうやら濡れたら下半身魚になるらしいぞと理解した俺の両親はとりあえず俺が自分で物事を判断出来るようになるまでプールとか温泉を禁止して、家以外の場所では個性が出ないようにしてくれた。そして足が動かないのは個性の影響では?訓練したら動くんでは?と俺を大きな病院に連れていき、そこそこしんどい訓練をして今に至る。正直両親には感謝しかない。父さん母さんありがとう。




「ヒーローを目指したりしなかったんですか?」


「ヒーローになりたいとは思わなかったなー。そりゃ憧れはしたけど足が動かないんじゃ誰も助けれないだろ」




どっちかって言うと災害が起きたら真っ先に助けてもらう側だし?なんとかここまで歩けるようにはなったけどまだまだ訓練中、目指せ二足歩行。




「でも水の中じゃあんなにすごいのに、勿体ないですよ!」


「はは、ありがとう麗日さん。でも俺はいいんだよ」




服を搾って万が一の時のために持ってたタオルでゴシゴシ体を拭く。むん、まだダメか。




「でも、水中じゃ誰よりも活躍できますよね!」


「梅雨ちゃんみたいやね!」




緑谷くんと麗日さんがニコニコしながらそう言ってくれて俺もつられて嬉しくなる。ほとんど人に見せたことなかったし気味悪がられると思ってたからなぁ、そんなに褒めてもらえると嬉しい。梅雨ちゃんって誰だかわからないけど。




「ね、すごいよね飯田くん!」




麗日さんがパッと振り向いた飯田くんは…てんてんてんまる。キッチリ3秒置いてからハッとした顔をした。すごいなこの子、ロボみたい。




「あ、あぁそうだな!俺もそう思うぞ!!」


「飯田くん大丈夫?さっきから変だけど…」


「やっぱり風邪引かせちゃったかな…ごめんな、俺のせいで」




川に落ちた眼鏡は無事救出したが本体に風邪を引かせてしまっては元も子もない。季節はまだ少し肌寒い5月、この子達は未来あるヒーローの卵だし1年生って言ってたから入学早々風邪で学校を休むのは痛手だろう。




「というか3人とも帰っていいんだよ?こんな河川敷にいたら風邪引くし、飯田くんなんか濡れてるんだし早く帰った方が…」


「いいえ!!俺は大丈夫です!!!」


「わビックリした」




タオルで拭いたとはいえずぶ濡れの飯田くんの突然の大声。やっぱりなんか変じゃない?顔赤いし調子悪いんじゃないの?俺は大丈夫だよ乾いて足が戻ったら歩いて帰るから。




「○○さんの足が戻るまでここにいます!緑谷くん麗日くん、ここは俺に任せたまえ!!」


「いや別にそんな気を使わなくても…俺の自業自得だから」


「僕も待つよ!でも興味深い個性だなある条件下で発動するのはわかるけどここまで見た目が変わる個性なんて聞いたことないし珍しいのかあるいは…」


「デクくんブツブツしとるし私も待ちます!1人だとまた危ないかもしれんし!」




キラキラ笑顔とブツブツ声の入り交じったしかし眩しい3人に思わず目を覆いそうになる。ま、まぶしぃー…いい子すぎてまぶしぃー…
しかしこの様子じゃ本当に帰りそうにないなと把握した俺は濡れた鞄の中から財布を取り出す。中は…よしセーフ、濡れてない!それをそのまま飯田くんに渡す。飯田くん、なんで俺見ると一瞬固まるの?




「とりあえずそこのコンビニで温かいジュースでも買っておいで」




あ、俺は温いココアでお願いします。
お詫びがてら頼んだお使いで確かに温かいジュースって言ったけど、飯田くんがオレンジジュースをレンチンして持って帰ってくるとは思わなかった。やっぱり熱あるのかな?




End