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突然だがこの世で1番可愛くて愛くるしいのは猫だと思う。フワフワの毛並み、キラキラのお目目、プニプニの肉球。そのどれをとってもパーフェクトなボディに、メロメロにならない人間はいないと思う。




「ひっ、やめ…ぎゃっ!」




突然だがこの世で1番醜くて醜悪なのは人間だと思う。ボソボソの毛、がらんどうな頭、耳障りな声。そのどれをとっても微塵も愛着の湧かないボディに、殺意を抱かない人間はいないと思う。




「お前もそう思うだろ?」




汚れた手を拭きながら振り返って愛しいルッチに尋ねると、大きな猫の姿をした可愛い子はゆっくりと瞬きをした。




































「あー疲れた」




綺麗にシャワーで汚れを落として動きやすく尚且つダメにしても惜しくない服に着替えたらウキウキで寝室へ向かう。鼻歌を歌いながらドアを開けるとソファで待つよう命令していた俺最愛の動物に一目散に抱きついた。




「ルッチ〜戻ったぞ」




優雅にソファに横たわる可愛いカワイイでっかい猫の腹に顔を埋めてハァハァ吸う。俗に言う猫吸い。猫好きの中ではポピュラーな技だがもちろん猫が嫌がった場合はやめよう。
顔を腹に埋めながら空いた手でルッチの頭をワシワシ撫で、体中で猫をめいっぱい感じると溜まったストレスが浄化されていくのを感じた。癒される〜。




「ほんとにフワフワだなお前の体は…」




ほぅ…と溜息を吐きたくなるほどモフンモフンの体にこの毛を集めてカーペットを作りたいと思いながら肉球をプニプニすると嫌そうに前足を引っ込められた。あぁ、もうちょっと触らせてくれてもいいだろう。頼むよ。




「…やめろ」




しつこく肉球を触ろうとしたら低く嫌そうな声に制止されしょんぼりしながら前足を離す。仕方ない、猫は肉球を触られるのが基本嫌いだもんな。ルッチなんかもろそのタイプだし、無理強いよくない。
代わりにまた腹をもふもふ撫でながらスーハー息を吸って深く溜息を吐いた。




「疲れたよルッチ…あの愚図長官は殺しちゃいけないし仕事はつまんないし他の奴らは使えないし。いっそ俺もお前みたいに別の仕事に潜入したい。俺も大工になる」


「そう言って潜入した組織の人間に3日でバレて皆殺しにしたのを忘れたのか?」


「だってバレたものは仕方ないだろ」




声がくぐもってるのは腹に顔を埋めたままだからというのをお伝えしておこう。
そういえばそんな事もあったような気もするけどまぁ細かい事は気にするな!いざとなったら面倒なやつはみんな消してしまえばいいんだし気楽に行こうぜ!俺にはそれをする事が許されてるんだし、そう、お前もいつも言ってるだろ?




「闇の正義の名のもとに。多少の犠牲は仕方ない」


「…ふん」




鼻で笑ってそっぽ向かれた。う〜んでも猫の姿ならなんでもご褒美になっちゃうから不思議だよな!これが猫じゃないただの人間なら瞬きする暇もなく頭を吹き飛ばしてるとこだけど。だって俺先輩だし?歳だって上なんだしこーはいの教育は仕事のうちだって誰かが言ってた気がする!ルッチは猫だから許すけどね。
ニコニコしながらルッチの頭を撫でてると、外の廊下から人の気配がした。歩き方からメイドじゃない、ゆっくりと俺の部屋に向かってきている。




「…チッ」




俺が部屋にいる時は誰もこの階に上がってくるなって言ったの、忘れたのかよ。
はぁ〜と溜息を吐いてから疲れた体に鞭を打ってゆっくり立ち上がり、ルッチの頭をポンポン撫でてからドアに向かう。…途中、ルッチの柔らかい肉球がパシッと俺の手を叩いたがなんだそれ可愛いぃ!!!大丈夫すぐ済ますから!すぐ戻るから!




「…失礼しギャッ!!」




ドアをノックされた瞬間蹴り開けてやると何かが壁に吹っ飛んだ。どうでもいいのでそのままドアを閉めようとするとなんということでしょう、ドアが無いではありませんか。どうも強く蹴りすぎたようだドアまで一緒に吹っ飛んでる。仕方ない、メイドに電伝虫で修理を頼もう。




「ぐ……○○、さん…」




ドアと一緒に吹っ飛んだ何かがよろよろと立ち上がったがなんだ、使えない後輩の内の1人じゃないか。使えないやつは何をしてもダメなんだからせめて言いつけぐらい守れよな。しかもこいつ、俺の可愛い猫と違って毛並みも手触りもボサボサで最悪な犬だし…そうだ、言いつけの守れない犬は処分してしまおうか。




「ジャブラ」




部屋の奥から聞こえた声に上げかけていた手を止めて振り向くとルッチが優雅にゆったり俺の横に並んだ。か、かわいいぃ!!ルッチは体高があるから横に並んでもいい大きさだし最高だ。さすが俺の猫。




「何をしに来たジャブラ」




ルッチが喋るのもお構い無しにしゃがまなくても撫でられる頭をよしよししてひたすら可愛がる。あぁ、今最高の気分だとても平和。幸せ、ラブアンドピースだわこれ。




「ちょ、長官が○○…さんを呼んでこいって、」


「あのアホなんで電伝虫使わねーの?」


「煩わしいと捨てたのはアンタだろう」




あれ、そういやそうだっけ?まぁいっか今気分良いし、無視するとあのグズうるさいからさっさと済まそ。




「あー俺の愛しい猫、本当は1秒も離れたくないけどちょっと行ってくるからいい子に待ってろよ」




座るルッチの目線に合うよう屈んでギュッと抱きしめるとほんのちょっとだけゴロゴロ聞こえた。あぁ可愛い!戻ってきたらたくさん撫でてやるからな!































長官のいる部屋へ歩いていく後ろ姿を見送ってから人の姿へ戻るとジャブラが崩れた壁の瓦礫の上によろよろと座りこんだ。理由は明白、先程の一撃のダメージがそれほど重かったのだ。




「死んでいたな、あの時」


「…くそ」




血を拭い悪態をつくその姿に覇気はない。先程のあの時、○○がジャブラに向けてゆっくりと伸ばした手は間違いなく飛ぶ指銃を撃つ気だった。もとより自分以外の人間の事などいないも同然として扱っている男だ、俺が声をかけ気を逸らさなければ何も考えず殺す気だったんだろう。




「なんだ、助けたつもりか?」


「馬鹿言え、任務のためだ。わかったならさっさと失せろ」




今度こそ殺される前にな、と言えばジャブラは悪態をつきながらも大人しく姿を消した。それを見届けてから部屋に戻り先程と同じようにソファに寝そべる。
○○、あの男は自らの意思でCP9に降った元CP0の諜報員。なんでも顔を隠すための変装がダサくて逆に目立つからまだマシなこちらに来たと言っていたが、まぁそれも本当かわからない。しかしその実力は本物、なんの悪魔の実の能力者でもないが俺より強い。
…地べたに這いつくばって見上げた時の零度の視線を思い出して、少し体が震えた。




「ただいまルッチ!俺がいなくて寂しかったか?」




気配もなく部屋に戻ってきたことに内心驚いたが、そんな事おくびにも出さずしっぽをパタリと揺らす。そうかそうかと勝手に勘違いして上機嫌で俺の横に座る男を知らない奴が見れば人殺しなどとは想像もつかないであろう。




「長官がさ〜、CP0に戻れって言うんだよ。だから俺ちょっとだけ怒っちゃってさー」




しょげた顔で俺の頭を撫でる手からにおう血の匂いで何があったのか大体の想像はつく。長官もつくづく馬鹿だと思ったがアレが間抜けなのは元からか。馬鹿は最後まで救えない。この手の男が権力如きで自分の思い通りになるわけないと何故理解できないのか理解できない。




「でも俺悪くないよな。な、ルッチ」




無邪気に人をいたぶる手で俺を撫で同意を求める声にふんと応えてやると、そうだよな!とまた勝手に都合良く勘違いをし○○は俺を抱えるように隣に寝転がった。普段は絶対に人に見せない姿を俺にだけ、無防備に急所を晒して。




「おやすみルッチ、愛してるぞ…」




優しく撫でる手も耳元で囁かれた甘言も、鼻先に落とされたキスも。全て俺がネコネコの実の能力者だからという事はわかってる。こいつが愛してるのは俺じゃない。




「…グル」




だからスヤスヤ呑気に寝息をたてはじめた○○の顔を見て喉が鳴ったのも、全ては確実な任務遂行のために必要なこいつをここに留めておくためのサービスに過ぎない。断じて、絆されてなどいない。




End